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スケッチブック

 そんな訳で、手持ちの予算を見せるべく、レオンを離れまで連れてきた。玄関先で貯金箱を開いて見せると、少し難しい顔をされた。


「んー。この予算なら、少し妥協しなきゃだな。

赤ちゃん用品一式揃えておむつの質は無難なものに下げるか。おむつの質は良いもので赤ちゃん用品は削るか…とにかく、質の良いおむつを〝大量に〟が難しいかもな」


(最近絵を数個売ったばかりだからなぁ…やっぱこれだけじゃダメかー)


 赤ちゃんの様子を見ていると、衣服は適当な布で包むだけでも気にしていないが、おむつは気になるようで、少し元気がなくなる…様な気がする。

 

(優先順位はおむつ一択よね)


「………じゃあ、なるべく良い素材のおむつでお願い」


(枚数は少なくても、フェレ助の技でまわせばなんとか。いや、フェレ助が可哀想かな…?)


「…それか、何か売れそうな物と取り替えても良い」

「売れそうなもの?あ!わかった、ちょっと待ってて!!」


 ミルクの時のことを思い出して、エミリアは部屋に引っ込んでいった。

 赤ちゃんがぐちゃぐちゃにしなかったスケッチブックを持って来て、レオンに差し出す。


「これ、少しくらい売れるかしら?」


 レオンはスケッチブックを受け取って中身を真剣な表情でパラパラとめくり見る。


「これ、お嬢さんが書いたのか?」


 エミリアに視線をやり、問いかけた。


「そう。一応、商店街で数枚ほど絵を描いて売れたこともあるし、先日もミルクと取り替えて貰えたわ」


 レオンはすっと目を細めて、無言でスケッチブックに視線を戻す。緊張がながれ、どのくらい時間が経ったのかわからないが、一つ一つ丁寧に見てくれているようだった。


(今は抽象画が流行りみたいだし、鉛筆で書く人なんていないから、ちゃんとしたお客さん相手にしてる商人からすると難しいかなぁ…)


 どきどきしながら返事を待っていると、レオンは査定を終えたのかスケッチブックを閉じた。


「ん!よし、じゃあこれを買い付けた金額と貯金を合わせた金額で、品を揃えよう。それで良いか?」

 

 エミリアは、自分の描いた絵が商人から見ても値打ちがあると言って貰えたことが嬉しいこともあり、ぱぁっと明るい表情を浮かべ、レオンの右手を両手で握った。


「うん!ありがとう!よろしくね!!」

「…っ。こ、これが俺の仕事なんだよ。お礼を言われることじゃない」


 レオンは頬を赤らめて、表情を見えなくする為に左手で被っていた帽子を深く被り直す。


「ううん、本当にありがとう!

えーと、貴方のお名前は…因みに私はエミリアって言うの!」


 手を離したエミリアに、レオンはひとつ咳払いをして気を取り直した。


「俺はレオンって言うんだ。


じゃあ、まだ残りの仕事があるからもう行くけど、明日届けに来るな!」


 にっと笑いながらそう言うと、片腕にスケッチブックを持ち、元来た場所へと戻っていった。




♢♢♢

レオンside



 やっぱり、あの離れに住んでるなら、小伯爵様の言っていた令嬢はあの子だよな…?


 いまいち身なりと手を見ると確信が持て無かったし、小伯爵様からは秘密と言われてるから彼女に確認することも出来なかったがーーでも、顔立ちや雰囲気にどことなく品があったしな…


(いや、今は顔は関係ないな、とにかくーー)


  金は小伯爵様に請求して、貯金を含めて絵を売ったお金はそのまま渡すか。 




ーー親戚の没落令嬢でも、匿っているのか?しかも赤ちゃん連れだから周りに冷遇されてるとか…何にせよ俺単独の初仕事だ、期待に応えないとな。


(掘り出し物も見つけたしな)


 

 エミリアから預かったスケッチブックを抱える手に、力を込めた。


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