第4章 - 影の守護者
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第4章 - 影の守護者
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俺は全員のステータスを鑑定した。
【名前:ルーク / 年齢:25歳 / レベル:65→72】
【職業:冒険者 / 魔力:1580→1850 / 体力:1020→1180 / 筋力:920→1050 / 敏捷:980→1120】
【新規スキル習得:竜殺しLv1、指揮官Lv6、魔力暴走制御Lv4】
「レベル72...もう上級冒険者の域だな」
【エドワード:レベル58→65】
【魔力:850→1120 / 新規スキル:三属性魔法Lv4、魔法連射Lv5】
「古龍戦で新しい技術を習得できた!」
エドワードが興奮している。
【リーナ:レベル50→60】
【魔力:920→1280 / 新規スキル:氷結領域Lv3、魔力感知Lv6】
「十レベルも...! 魔力も大幅に上がった!」
リーナが驚愕の表情だ。
【セラ:レベル66→73】
【体力:680→840 / 筋力:620→780 / 敏捷:740→920】
【新規スキル:竜骨突きLv5、急所看破Lv7】
「敏捷が900超えた...これならSランク魔物の動きにも対応できる」
セラが満足そうに頷く。
グランとバルドも戦闘には参加していないが、俺たちの成長に合わせてレベルが上がっていた。
【グラン:レベル65→68】
【新規スキル:竜鱗加工Lv8】
【バルド:レベル38→42】
【新規スキル:竜肉調理Lv6】
「チーム全体が底上げされている」
俺は満足げに頷いた。
「このペースなら、すぐに全員レベル70を超える。そうなれば、Sランク魔物も狩れる」
「もう俺たち、一流だな」
エドワードが笑った。
「いや、まだ道半ばだ。もっと強くなる」
俺たちの成長は、まだ止まらない。
「拠点候補地を探す」
俺は目を閉じ、遠隔視の魔法を発動した。
「リモート・ビューイング」
意識が体を離れ、鳥のように森の上空を飛ぶ。広範囲を見渡し、人里離れた場所を探す。
数分後、理想的な場所を見つけた。
「見つけた。街から半日ほど離れた森の奥に、廃墟がある」
俺たちはその場所へと向かった。
到着すると、セラが前方を指差した。
「あそこに廃墟がある」
崖に囲まれた小さな谷に、石造りの建物が残っていた。かつては砦だったらしい。
「誰も住んでいないな」
エドワードが魔力探知で確認する。
「念のため、この場所の過去を確認する。ポストコグニション」
俺は廃墟の壁に手を当て、過去視の魔法を発動した。
脳裏に映像が流れ込む。数十年前、ここは山賊の砦だった。だが、王国軍に滅ぼされ、以来誰も近づいていない。
「問題なさそうだ。呪いや怨念もない」
さらにサイコメトリーで壁の石に残った記憶を読む。
「この石材は質がいい。グランなら修繕できるはずだ」
「ここなら人目につかない。しかも天然の要塞だ」
俺は周囲を見渡した。崖に囲まれ、入口は一つ。防衛しやすい。
「ここを拠点にする。グラン、修繕は可能か?」
グランが建物を調べた。
「石壁は頑丈だ。屋根と床を直せば住める。二週間あれば完成するぜ」
「バルドは?」
「厨房が作れそうだ。井戸もある。ただ、水が少し濁っているな」
「なら、俺が浄化しよう。ピュリフィケーション」
井戸水に魔力を注ぎ込む。汚れや不純物が光とともに消えていく。
「完璧だ。これで飲める。水には困らない」
「よし、ここに決めた」
俺たちは街から資材を運び、拠点の改修を始めた。
グランが屋根を修理し、セラとリーナが壁を補強する。エドワードは魔法で瓦礫を片付け、バルドは厨房を整えた。
俺はアイテムボックスで大量の資材を運搬した。
二週間後、拠点が完成した。
居住棟、訓練場、倉庫、厨房、工房。全てが揃っている。
「これで俺たちの城ができた」
リーナが嬉しそうに笑った。
「誰にも邪魔されない、自分たちだけの場所」
エドワードが感慨深げに呟く。
「ここから本格的に活動する。街には週に一度だけ顔を出す。それ以外はここで暮らす」
全員が頷いた。
「自由な拠点、最高だな」
セラが満足そうに腕を組んだ。
俺たちの本当の冒険が、ここから始まる。
拠点での生活が始まった。
朝、バルドが作る料理で目が覚める。魔物の肉を使った栄養満点の朝食だ。
「今日の予定は?」
「午前中は訓練。午後から森の奥で狩りだ」
訓練場で、全員が超能力系魔法の練習をする。リーナは既に五つの物体を同時に浮かせられるようになった。
「サイコキネシスのレベルが上がってる」
エドワードはグラビティと火魔法の複合技を開発していた。
「重力で敵を地面に押さえつけながら、上空から火球を落とす。逃げ場がない」
セラはテレキネシスで木の丸太をひねり、一瞬で破壊した。
「関節技が完璧になってきた」
午後、俺たちは森でヘルハウンドの群れを発見した。
「十体か。一気に片付ける」
戦闘時間は五分。全員が超能力系魔法を駆使し、効率よく倒していく。
夕方、拠点に戻ると、グランが新しい武器を完成させていた。
「古龍の骨で作った剣だ。魔力を通しやすい」
試しに魔力を流すと、刀身が青白く光った。
「完璧だ」
夜、全員で食卓を囲む。バルドの料理を食べながら、今日の成果を報告し合う。
「今日の稼ぎは金貨八枚だ」
「一日でこれだけ...最高だな」
リーナが笑顔で言った。
「ここでの生活、すごく楽しい」
「ああ。誰にも邪魔されない。自分たちのペースで生きられる」
俺は仲間たちの笑顔を見て、心から満足した。
これが、俺たちの理想の生活だ。
一ヶ月が経った。
拠点は完全に俺たちの城となり、金も順調に貯まっていた。
「今月の稼ぎを集計した」
エドワードが帳簿を見せる。
「金貨二百四十枚...!」
リーナが目を丸くした。
「一ヶ月でこれだけか。半年もあれば大金持ちだな」
バルドが笑った。
だが、俺は少し物足りなさを感じていた。
「強くはなった。だが、まだ上がある」
「Sランク魔物か?」
セラが尋ねた。
「ああ。そろそろ挑戦してもいい頃だ」
その時、拠点の入口に人影が現れた。
「誰だ!」
セラが短剣を構える。
現れたのは、黒いローブを着た女だった。顔は見えないが、強い魔力を感じる。
「失礼。噂を聞いて訪ねてきました」
女は落ち着いた声で言った。
「古龍を倒したAランクパーティがいると。しかも目立たず、独自に活動していると」
「何の用だ?」
俺は警戒を解かない。
「依頼です。ただし、他言無用の特別な依頼。報酬は金貨五百枚」
全員が息を呑んだ。
「五百枚...? どんな依頼だ」
女はローブのフードを外した。
美しい顔立ちの女性。だが、その目には深い疲労と覚悟が宿っていた。
「国の闇を暴いてほしいのです。王宮に巣食う、真の敵を」
空気が凍りついた。
これは、ただの依頼じゃない。
「国の闇...? 怪しい話だな」
俺は警戒を強めた。
女は静かに続けた。
「私はエリザベート。元王宮魔術師です。三ヶ月前、王宮の地下で禁忌の儀式が行われているのを発見しました」
「禁忌の儀式?」
「人を生贄に、魔物を召喚する儀式です。主導しているのは宮廷魔術師長、ヴォルフガング」
エドワードが息を呑んだ。
「ヴォルフガング...あの男が」
「知っているのか?」
「元同僚だ。野心家で、権力に取り憑かれていた」
エリザベートは頷いた。
「彼は国を裏から支配しようとしています。私は証拠を掴みましたが、追われる身となった。だから、外部の力が必要なんです」
「なぜ俺たちを?」
「あなた方は権力に媚びない。それに、古龍を倒す実力がある。信頼できると判断しました」
俺は仲間を見た。全員が険しい顔をしている。
「報酬は確かに魅力的だが...国の闇に首を突っ込むのは危険だ」
セラが言った。
「しかも、目立ちたくないという方針に反する」
「だが」
リーナが口を開いた。
「放っておけば、無実の人が犠牲になる」
エドワードも頷いた。
「俺たちには力がある。使うべきじゃないか?」
俺は深く息を吐いた。
「...条件がある。俺たちの名は絶対に表に出さない。全て裏方で動く」
エリザベートが微笑んだ。
「もちろんです」
「分かった。受ける」
「もう一つ条件がある」
俺はエリザベートを真っ直ぐ見た。
「この依頼はこれっきりだ。今後、二度と俺たちに頼るな」
エリザベートが目を見開いた。
「それは...」
「俺たちは便利屋じゃない。一度助ければ、また頼られる。そうやって都合よく使われるのは御免だ」
エドワードが補足した。
「国の闇を暴いた後、『次はこれを』『あれも頼む』と際限なく依頼が来る。それを防ぐためだ」
エリザベートは黙って考え込んだ。
「...分かりました。この依頼限りです。二度とあなた方を頼りません」
「約束だぞ。破ったら、俺たちは消える」
「誓います」
エリザベートが深く頭を下げた。
セラが俺に囁いた。
「厳しいな」
「当然だ。正義の味方を演じるつもりはない。これは一回限りの仕事。それ以上でも以下でもない」
リーナが苦笑した。
「でも、受けたってことは...ルークも放っておけないんでしょ?」
「...うるさい」
俺は顔を背けた。
「とにかく、条件は二つ。名前を出さない、これっきり。守れるか?」
「はい」
エリザベートが力強く頷いた。
「では、詳細を聞かせてもらおう。ヴォルフガングの計画とやらを」
俺たちは、国の闇と向き合う覚悟を決めた。
一度きりの、特別な依頼として。
エリザベートは地図を広げた。
「王宮の地下三層に、秘密の儀式場があります。月に一度、満月の夜に儀式が行われる」
「次の満月は?」
「五日後です」
セラが地図を見つめた。
「警備は?」
「地下への入口は三箇所。それぞれに近衛兵が配置されています。ただし、彼らは儀式のことを知りません」
「つまり、警備を倒さずに潜入する必要があるな」
俺は考えた。
「テレポーテーションで直接侵入できるか?」
「無理です。王宮全体に転移防止の結界が張られています」
エドワードが尋ねた。
「ヴォルフガングの実力は?」
「レベルは80を超えています。宮廷魔術師長の座は伊達ではありません。配下の魔術師も十名ほど」
「厄介だな」
リーナが不安そうな顔をした。
「私たち、勝てるの?」
「数では不利だ。だが、奇襲なら勝機がある」
俺は作戦を練り始めた。
「プレコグニションで敵の配置を予測する。クレヤボヤンスで壁越しに索敵。侵入経路を確保したら、儀式の最中に急襲する」
「儀式中なら、敵も油断している」
セラが頷いた。
「証拠は?」
「儀式の現場を押さえ、召喚された魔物を倒す。それを王に報告すれば、ヴォルフガングは終わりです」
エリザベートが真剣な顔で言った。
「五日後、俺たちは王宮に潜入する」
準備期間は短い。だが、やるしかない。
五日間、俺たちは集中的に訓練した。
「王宮潜入に必要な魔法を磨く」
まず、音を消す魔法。足音や衣擦れの音を完全に消去する。
「サイレンス」
リーナが唱えると、周囲の音が消えた。
「完璧だ。これなら警備に気づかれない」
次は透視魔法の精度を上げる。
「クレヤボヤンス」
壁の向こうにいるエドワードの姿がぼんやり見えた。
「まだ不十分だ。もっとはっきり見えるようにする」
三日目には、壁越しに人数と配置まで分かるようになった。
エリザベートが王宮の見取り図を持ってきた。
「警備の交代時間は深夜二時。そのタイミングで侵入します」
「地下への入口は東側の厨房裏が最も警備が薄い」
セラが地図に印をつけた。
「ここから侵入し、階段を下りる。途中の警備は...」
「俺がテレキネシスで眠らせる。殺さずに無力化する」
「儀式場に到着したら、全員で一斉攻撃。速攻で終わらせる」
エドワードが魔法の準備を整えた。
「俺とリーナで結界を破る。その間、ルークとセラが前衛を務めろ」
「了解」
五日目の夜、全員の準備が整った。
「装備は軽装。音が出ないものだけ。アイテムボックスに予備の武器と回復薬」
俺は最終確認をした。
「目的は証拠を押さえること。戦闘は最小限に。全員、生きて帰る」
「おう!」
仲間たちの目に決意が宿った。
深夜、俺たちは王宮へ向かった。
深夜二時、王宮の外壁の影に身を潜めた。
「魔力探知」
エドワードが周囲を探る。
「警備兵が三名。交代で今、持ち場を離れた」
「今だ」
俺たちは塀を越え、厨房裏に侵入した。サイレンスで音を消しているため、足音は一切しない。
「クレヤボヤンス」
壁越しに廊下を透視する。警備兵が二名、遠くを向いている。
「セラ、先導を頼む」
「任せて」
セラが先頭に立ち、影から影へと移動する。俺たちも後に続いた。
地下への階段が見えた。だが、入口に警備兵が一名立っている。
「俺がやる。テレキネシス」
魔力で警備兵の首を軽く締める。意識を失い、静かに倒れた。
「急げ」
階段を下りる。地下一層、二層と進み、最深部の地下三層に到達した。
奥から、不気味な詠唱が聞こえる。
「儀式が始まっている」
エリザベートが囁いた。
巨大な扉の向こうに、赤い光が漏れている。
「プレコグニション」
未来を視る。扉を開けた瞬間、敵が反応する映像が見えた。
「敵は十二名。中央にヴォルフガング。魔法陣の中心に召喚が始まっている」
「いつ突入する?」
セラが尋ねた。
「召喚が完了する直前。敵が最も集中している瞬間だ」
俺は扉に手をかけた。
「全員、準備はいいか?」
仲間たちが頷く。
「行くぞ」
扉を蹴破り、儀式場に突入した。
扉が開いた瞬間、赤い光が目に飛び込んできた。
広い石造りの部屋。床には血で描かれた魔法陣。その中心に、異形の魔物が姿を現しつつあった。
周囲に立つヴォルフガングと配下の魔術師たちが、驚愕の表情で振り返る。
「誰だ!」
ヴォルフガングが叫んだ。
「グラビティ!」
俺は即座に魔法を放つ。魔術師の半数が膝をつく。
「ファイアストーム!」
エドワードの炎が敵を包んだ。
「フリーズ・ランス!」
リーナの氷の槍が、立ち上がろうとする魔術師を貫く。
セラが疾走し、二名の魔術師を瞬時に無力化した。
「貴様ら...!」
ヴォルフガングが杖を掲げる。
「雷帝の槍!」
雷の魔法が俺に向かって放たれた。
「プレコグニション!」
未来視で軌道を読み、横に跳んで回避する。
「サイコキネシス!」
石柱を念力で持ち上げ、ヴォルフガングに投げつけた。
「ぐっ!」
ヴォルフガングが防御魔法を展開するが、衝撃で体勢が崩れる。
その隙に、エリザベートが魔法陣に飛び込んだ。
「浄化! ピュリファイ!」
召喚途中の魔物が光に包まれ、消滅する。
「馬鹿な...儀式が!」
ヴォルフガングが絶望の表情を浮かべた。
配下の魔術師は全員倒れ、儀式は失敗。
「終わりだ、ヴォルフガング」
俺は剣をヴォルフガングの喉元に突きつけた。
「証拠は十分に揃った」
ヴォルフガングは剣を突きつけられながらも、不敵に笑った。
「貴様ら...何者だ。こんな実力者がいたとは」
「黙れ。エリザベート、証拠は?」
エリザベートが血で描かれた魔法陣と、倒れた配下の魔術師たちを指差した。
「これで十分です。召喚の痕跡も残っています」
「セラ、この場を記録しろ」
セラがソートグラフィーの魔法を使い、儀式場全体を映像化した。
「完璧だ」
その時、足音が聞こえた。
「誰か来る!」
「近衛騎士団だ。騒ぎを聞きつけたんでしょう」
エリザベートが慌てた。
「俺たちは消える。お前が全部やったことにしろ」
「え?」
「約束だろ。俺たちの名は出さない」
俺は仲間に合図した。
「テレポーテーション!」
全員が光に包まれ、その場から消える。
数秒後、近衛騎士たちが駆け込んできた。
「何事だ!」
「宮廷魔術師長が禁忌の儀式を...!」
エリザベートが状況を説明する。俺たちのことは一切触れない。
俺たちは王宮から数キロ離れた森に転移していた。
「上手くいったな」
エドワードが安堵の息を吐いた。
「ああ。エリザベートが約束を守るかどうかだ」
翌日、街で噂が広がった。
「元王宮魔術師エリザベートが、宮廷魔術師長の陰謀を暴いた!」
「彼女は英雄だ!」
俺たちの名前は一切出ていない。
「約束、守ったな」
セラが笑った。
数日後、拠点にエリザベートが訪れた。
金貨五百枚を置いて、深く頭を下げた。
「ありがとうございました。二度とお会いすることはないでしょう」
「ああ。達者でな」
エリザベートは去って行った。
「これで終わりだ。俺たちは元の生活に戻る」
仲間たちが頷いた。
目立たず、自由に。
それが俺たちのやり方だ。
金貨五百枚を前に、俺たちは今後の方針を話し合った。
「これで資金に余裕ができた。何に使う?」
エドワードが尋ねた。
「装備の強化と、拠点の拡張だ」
俺は地図を広げた。
「この拠点は完璧だが、もっと機能を増やせる。訓練場を拡大し、グランの工房も大きくする。それと、魔法の研究施設も作りたい」
リーナが目を輝かせた。
「研究施設! 新しい魔法を開発できる!」
「ああ。超能力系魔法はまだまだ発展の余地がある」
セラが腕を組んだ。
「あと、情報網も必要じゃないか? 危険な依頼を避けるためにも、街の情報は把握しておきたい」
「それもそうだな。バルド、酒場に顔を出して情報を集められるか?」
「任せろ。料理人は情報屋にもなれる」
グランが笑った。
「俺も商人ギルドに顔を出す。武器の売買で情報も手に入る」
「よし。資金は金貨三百枚を拠点強化に、残り二百枚を装備と運営費に回す」
全員が頷いた。
翌日から、拠点の拡張工事が始まった。訓練場は二倍の広さになり、研究棟も新設された。
「これでもっと強くなれる」
リーナが新しい研究室を嬉しそうに見回した。
「目立たず、強く、自由に。俺たちの理想が実現していく」
俺は満足げに拠点を見渡した。
成り上がりの道は、まだ続く。
拠点の拡張が完了し、一ヶ月が経った。
俺たちの生活は完全に確立されていた。朝の訓練、午後の狩り、夜の研究。
リーナとエドワードは研究棟で新しい魔法の開発に没頭していた。
「ルーク、見て! サイコキネシスとグラビティを融合させたの」
リーナが実演する。物体を浮かせながら、重さを自在に変える。
「攻撃に使えば、軽くして高速で飛ばし、着弾直前に重くして破壊力を増す」
「素晴らしい。実戦で試してみよう」
セラは訓練場で新しい戦闘技術を磨いていた。
「テレキネシスを使った連続攻撃。敵の関節を次々と破壊できる」
「お前の成長速度は異常だな」
グランの工房からは、金槌の音が絶えず響いていた。
「新作の剣だ。魔力伝導率を五割増しにした」
試し斬りをすると、魔力が刃に完璧に乗る。
「最高の仕上がりだ」
バルドは街から戻ってきた。
「気になる情報がある」
全員が集まった。
「北の山脈に、未確認のSランク魔物が出現したらしい。既に冒険者が三つのパーティが全滅している」
空気が張り詰めた。
「Sランク...」
「報酬は金貨千枚だと」
エドワードが目を見開いた。
「千枚...!」
「興味あるか?」
俺が問うと、全員が頷いた。
「俺たちの実力を試す、いい機会だ」
「よし。明日、北の山脈へ向かう」
新たな挑戦が、俺たちを待っていた。
翌朝、出発前に全員のステータスを確認した。
【ルーク:レベル72→78】
【魔力:1850→2080 / 体力:1180→1320】
「レベル78...もう一般の冒険者では到達できない領域だ」
【エドワード:レベル61→68】
【リーナ:レベル56→65】
【セラ:レベル67→73】
「全員、着実に成長している」
装備を整え、北の山脈へ向かった。
道中、生き残った冒険者に話を聞いた。
「あれは...悪夢だった」
傷だらけの戦士が震えながら語る。
「黒い霧の中から現れる。形が定まらない。物理攻撃が効かない。魔法も吸収される」
「姿が見えないのか?」
「見える。だが、攻撃が当たらない。仲間が次々と霧に飲まれて...」
セラが眉をひそめた。
「実体がない魔物か」
「いや、違う。何かトリックがある」
エドワードが考え込んだ。
「クレヤボヤンスで透視してみるか?」
「それもいいが、まずは現場を見る」
山脈に到着すると、確かに黒い霧が立ち込めていた。
「プレコグニション」
未来視で探る。だが、映像がぼやけて見えない。
「妨害されている...厄介だな」
「魔力探知」
エドワードが集中する。
「...いる。霧の奥に、強大な魔力反応」
リーナが緊張した顔をした。
「どうする?」
「慎重に進む。サイレンスで音を消し、クレヤボヤンスで索敵しながらだ」
俺たちは霧の中へと踏み込んだ。
視界が悪い。だが、引き返すつもりはない。
Sランク魔物、必ず倒す。
霧の中を慎重に進む。
「クレヤボヤンス」
透視魔法で前方を探るが、霧が魔法を妨害している。
「視界が悪すぎる。十メートル先も見えない」
セラが警戒しながら先導する。
その時、霧の中から声が聞こえた。
「よく来たな...人間よ」
全員が武器を構えた。
霧が渦を巻き、巨大な影が現れた。
黒い外骨格に覆われた、昆虫と竜を混ぜたような異形の魔物。六本の足、四枚の翼、無数の目。
【名前:ミストドレイク / レベル:95 / Sランク魔物】
「レベル95...!」
エドワードが絶句した。
「逃げるか?」
セラが尋ねる。
「いや、戦う。ただし、全力でだ」
俺は魔力を解放した。
ミストドレイクが口を開く。
「貴様らも...餌だ」
黒い霧が一斉に襲いかかってきた。
「散開!」
霧が俺たちがいた場所を飲み込む。地面が溶けた。
「腐食性の霧か!」
「エドワード、風魔法で霧を吹き飛ばせ!」
「ストームブラスト!」
強風が霧を払う。一瞬、視界が開けた。
「今だ! グラビティ!」
ミストドレイクに重力をかける。だが、効果が薄い。
「レベル差が大きすぎる...」
「ならば、数で勝負だ。全員、同時攻撃!」
リーナとエドワードが魔法を放ち、セラが急所を狙う。
俺もサイコキネシスで岩を連続で叩きつけた。
ミストドレイクが苦痛の咆哮を上げた。
「効いている! 諦めるな!」
本当の戦いが、今始まった。
ミストドレイクが翼を広げ、黒い霧を大量に放出した。
「全員、レビテーション! 上空へ!」
俺たちは空中に浮かび上がり、霧を回避する。
「リーナ、氷で霧を凍らせろ!」
「フリーズ・エリア!」
広範囲の氷結魔法。霧が凍りつき、地面に落ちる。
「今のうちに攻撃! パイロキネシス!」
俺は発火能力でミストドレイクの翼を燃やす。
「ギィィィ!」
ミストドレイクが激しく暴れた。
「テレキネシス!」
セラが魔力で敵の関節をひねる。だが、外骨格が硬すぎて効果が薄い。
「クソ...硬い!」
エドワードが叫んだ。
「複合魔法! ファイア・サンダーストーム!」
炎と雷の融合魔法。ミストドレイクの背中に直撃し、外骨格が砕けた。
「そこだ! 弱点が見えた!」
俺は全魔力を剣に込め、砕けた背中の隙間に飛び込んだ。
「サイコキネシス! サイズ拡大!」
剣を巨大化させ、内部から突き刺す。
「ギアアアアァァ!」
ミストドレイクの絶叫。
「止めだ! 全員、全力で!」
四人が同時に最大出力の魔法を放った。
炎、氷、雷、そして念力。
全てがミストドレイクの弱点に集中する。
巨体が崩れ落ちた。
「...倒した」
全員が地面に降り立つ。息が荒い。魔力もほぼ空だ。
「Sランク魔物...こんなに強いのか」
リーナが膝をついた。
「だが、勝った。俺たちの勝利だ」
俺は全員を鑑定した。
【ルーク:レベル78→85】
【魔力:2080→2450 / 体力:1320→1520 / 筋力:1050→1240 / 敏捷:1120→1310】
【新規スキル:竜殺し→魔物殺しLv5】
「レベル85...一気に七も上がった」
【エドワード:レベル68→76】
【魔力:1120→1480 / 新規スキル:複合魔法Lv6】
「レベル76! 俺、もう上級魔法使いの域だ!」
【リーナ:レベル65→74】
【魔力:1280→1680 / 新規スキル:魔力制御マスターLv8】
「十レベル近く...! すごい!」
【セラ:レベル73→80】
【体力:840→1020 / 筋力:780→950 / 敏捷:920→1150】
【新規スキル:超速斬撃Lv7】
「レベル80...ついにここまで来た」
全員が疲労困憊だったが、成長の実感が疲れを吹き飛ばした。
ミストドレイクの死体から魔石を取り出す。
「これは...特大サイズだ」
拳ほどもある漆黒の魔石。
「これだけで金貨五百枚は下らないぞ」
外骨格、翼、爪、牙。全てが高級素材だ。
「全部で金貨千五百枚相当...報酬と合わせて金貨二千五百枚だ」
エドワードが震える声で言った。
「二千五百枚...一生遊んで暮らせる額だ」
「いや、まだまだ稼ぐ。これは通過点だ」
俺は仲間を見渡した。
「次はもっと上を目指す」
全員の目に、強い光が宿っていた。
俺たちの成り上がりは、止まらない。
街に戻り、ギルドで報酬を受け取った。ギルドマスターが驚愕の表情でこちらを見ている。
「本当にミストドレイクを...」
「証拠はここに」
魔石を見せた瞬間、周囲の冒険者たちがざわめいた。
「あれが...Sランク魔物の魔石」
俺たちの名は、確実に広がっていく。
報酬の金貨千枚を受け取り、俺たちは急いでギルドを後にした。
「やばい。注目されすぎだ」
セラが後ろを振り返る。冒険者たちの視線が痛い。
「拠点に戻るぞ。しばらく街には来ない」
宿で荷物をまとめ、拠点へ向かった。
数日後、予想通り拠点に来客があった。
「また貴族か」
見張りをしていたエドワードが報告する。
豪華な馬車が三台。護衛の騎士が十名以上。
「無視するぞ。誰も対応するな」
俺は仲間に指示を出した。
貴族たちは拠点の入口で叫び続けたが、俺たちは一切反応しなかった。
三時間後、諦めて帰っていった。
「これから毎日来るぞ」
エドワードが溜息をついた。
「なら、完全に姿を消すか」
「どういうことだ?」
「この拠点も放棄する。もっと人里離れた場所に、新しい拠点を作る」
リーナが驚いた。
「せっかく作ったのに?」
「目立ちすぎた。ここは既に知られている。完全に消えるには、場所を変えるしかない」
セラが頷いた。
「確かに、今のままじゃ追いかけられる」
「新拠点の候補地は?」
「西の大森林の奥。人が立ち入らない、魔境と呼ばれる場所だ」
全員が顔を見合わせた。
「また一から作り直しか...」
「だが、それが自由を保つ代償だ」
俺は決意を固めた。
「三日後、この拠点を捨てる。新天地へ移る」
目立たず、自由に。
そのためなら、何度でも拠点を変える。
三日間で拠点の撤収作業を終えた。
重要な物資や装備は全てアイテムボックスに収納。建物は放置する。
「痕跡は残すな。誰が住んでいたか分からないように」
魔法で生活の痕跡を消去し、俺たちは西の大森林へ向かった。
馬車で三日。人の気配が完全に消えた。
「ここからが魔境だ」
森の奥に進むと、巨木が空を覆い、昼でも薄暗い。
魔力探知で周囲を確認すると、強力な魔物の気配が無数にある。
「Aランク級の魔物がうじゃうじゃいるぞ」
エドワードが青ざめた。
「だから誰も来ない。最高の隠れ家だ」
さらに奥へ進むと、巨大な滝と湖が現れた。
「ここだ」
滝の裏側に、天然の洞窟があった。広さは十分。水も豊富。
「ここを拠点にする。グラン、工事は可能か?」
「ああ。石も木材もある。一ヶ月あれば立派な拠点が作れる」
「よし。全員で作業だ」
一ヶ月後、新拠点が完成した。
滝の裏に隠された要塞。外からは全く見えない。
居住区、訓練場、工房、研究棟。前の拠点より大規模だ。
「完璧だ。ここなら誰にも見つからない」
リーナが満足そうに笑った。
「そして、周囲は強力な魔物だらけ。狩り放題だ」
セラが武器を磨きながら言った。
「ここから本当の修行が始まる。レベル100を目指す」
俺は新拠点の入口に立ち、深い森を見渡した。
俺たちの新しい生活が、ここから始まる。
新拠点での生活が始まった。
周囲の魔物は予想以上に強力だった。
「今日はワイバーン三体とマンティコア二体を倒した」
セラが報告する。
「普通のAランクパーティなら全滅してる数だな」
エドワードが苦笑した。
だが、俺たちには余裕があった。超能力系魔法の組み合わせで、効率よく倒せる。
リーナは研究棟で新魔法の開発に没頭していた。
「テレポーテーションとサイコキネシスを組み合わせたの。物体を瞬間移動させて敵に叩きつける」
「実戦向きだな」
エドワードも負けじと新技術を開発した。
「グラビティとパイロキネシスの融合。敵を地面に押さえつけながら、上空から火柱を落とす」
「破壊力が凄まじい」
グランは魔境の素材で新装備を作っていた。
「この森の魔物の素材は最高級だ。ミスリル鉱脈も見つけた」
バルドの料理も進化していた。
「Aランク魔物の肉を使った料理。体力と魔力が同時に回復する」
一ヶ月後、全員のレベルを確認した。
【ルーク:レベル85→92】
【エドワード:レベル76→83】
【リーナ:レベル74→82】
【セラ:レベル80→88】
「全員、レベル80超えた」
「この調子なら、半年でレベル100に到達する」
俺は満足げに頷いた。
「目標は明確だ。最強の冒険者パーティになる。ただし、誰にも知られずに」
仲間たちが笑った。
「地味に最強...最高だな」




