第3章 - Aランクへの道
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第3章 - Aランクへの道
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「これだけあれば、しばらく生活に困らない」
エドワードが涙目になっている。
「次はもっと上を目指す。Sランク魔物だ」
セラが驚いた顔をした。
「Sランク...? それは無茶じゃないか?」
「いや、いける。俺たちなら」
仲間たちの顔に、自信が宿り始めていた。
このチーム、確実に強くなっている。
「お前たちにも、俺の魔法を教える」
翌日、俺は全員を訓練場に集めた。
「超能力系魔法は、既存の魔法とは発想が違う。物理法則に直接介入するイメージだ」
まずはエドワードとリーナに教える。
「サイコキネシス。物を動かす魔法だ。魔力を対象に纏わせ、意思で操る」
エドワードが石を見つめて集中する。
「動け...」
石がわずかに震えた。
「いい感じだ。続けろ」
リーナは既に石を浮かせていた。
「さすが天才...習得が早い」
次はセラだ。
「お前には戦闘向けの魔法を教える。テレキネシス。対象の体を直接ひねる魔法だ」
セラは木の枝を手に取り、集中した。
「...ッ!」
枝がねじれて折れた。
「できた! これなら敵の関節を破壊できる」
「そうだ。近接戦闘での補助に使える」
エドワードには別の魔法も教えた。
「グラビティ。重力を操る魔法。火魔法と組み合わせれば、敵を地面に押さえつけながら燃やせる」
「なるほど...魔法の組み合わせが重要なんだな」
リーナにはレビテーションを教えた。
「空中浮揚。これで高所から魔法を撃てる」
「すごい...視界が広がる!」
一週間の特訓で、全員が基礎的な超能力系魔法を習得した。
そして、新しい魔法の習得により、全員のレベルも上昇していた。
【ルーク:レベル50→52】
【エドワード:レベル44→46】
【リーナ:レベル31→34】
【セラ:レベル53→55】
「これで戦闘力が格段に上がった。次の狩りが楽しみだな」
仲間たちの目に、強い光が宿っていた。
チームは進化している。
修行の成果を試すため、俺たちは再び森へ向かった。
「今日の標的はオウルベア。熊と梟を合わせたような魔物で、知能が高い」
セラが前方を指差した。
「いた。三体の群れだ」
俺は仲間全員にテレパシーで指示を送った。
『テレパシー。音を出すな。心で聞け』
『聞こえる...!』リーナが驚く。
『これなら敵に気づかれずに連携できる』
三体のオウルベアが木の下で休んでいる。体長三メートル、鋭い爪と嘴を持つ凶暴な魔物。
「全員、新しい魔法を使ってみろ」
リーナが空中に浮かび上がった。
「レビテーション...成功!」
上空から氷の槍を放つ。オウルベアの一体に命中し、動きが止まる。
エドワードが手を伸ばした。
「グラビティ!」
残り二体が地面に押さえつけられる。そこへ火球が連続で叩き込まれた。
「完璧だ!」
セラが疾走し、最後の一体に接近する。
「テレキネシス!」
魔力で敵の前足をひねり、関節を破壊する。オウルベアが悲鳴を上げて倒れた。
「まだ動く...クエイク!」
俺はオウルベアの頭部に魔力を集中させ、脳を揺さぶった。内部からの攻撃に、オウルベアが完全に動きを止める。
「止めだ!」
短剣が喉を貫いた。
戦闘時間、わずか三十秒。
「...早すぎる」
エドワードが驚愕している。
「超能力系魔法の組み合わせで、戦闘効率が何倍にもなった」
俺は三体の死体を収納した。
「この調子なら、一日で十体以上狩れる。金が貯まるぞ」
リーナが興奮した顔で言った。
「私たち、もしかして最強のパーティになってない?」
「まだまだだ。上には上がいる。だが、確実に強くなっている」
俺たちは次の獲物を探して、森の奥へと進んだ。
一日でオウルベア十二体、グリフォン三体を狩った後、最後にキマイラと遭遇した。
「三つの頭を持つ魔獣...厄介だぞ」
キマイラが咆哮を上げる。獅子、山羊、蛇の頭が同時に攻撃してくる。
「アースクエイク!」
俺は地面を大きく揺らした。キマイラがバランスを崩して倒れる。
「今だ! 全員攻撃!」
魔法と剣が一斉にキマイラを襲う。
数分後、キマイラは動かなくなった。
街に戻ると、俺たちの噂が広がっていた。
「あのチーム、一日でどれだけ稼いでるんだ?」
「Bランク魔物を次々と倒してるらしいぞ」
酒場で休んでいると、ギルドの職員が駆け込んできた。
「ルークさん! ギルドマスターがお呼びです!」
俺たちは冒険者ギルドの最上階へ通された。
ギルドマスターは白髭の老人だった。鋭い目が俺たちを値踏みする。
「君たちの活躍、耳に入っているよ。一週間でワイバーン、キマイラ、グリフォン...驚異的だ」
「当然の結果です」
「そこで提案がある。Aランクへの昇格試験を受けないか?」
全員が息を呑んだ。
「Aランク...?」
エドワードが驚いた声を上げる。通常、何年もかかる昇格だ。
「君たちの実力なら問題ない。それに、Aランクになれば高額依頼を受けられる。国からの依頼もな」
「報酬は?」
「通常の三倍以上だ。それに、Aランク冒険者には特権がある。貴族との謁見権、国の施設の利用権...」
俺は仲間を見た。全員が頷いている。
「受けます」
「よろしい。試験は三日後だ。竜の谷で古龍を討伐してもらう」
古龍。Sランクに匹敵する最強クラスの魔物。
「...面白い」
俺は笑みを浮かべた。
「必ず成功させます」
新しい挑戦が、目の前に現れた。
そういえば...」
俺はステータスを確認した。これだけ魔物を倒せば、当然レベルが上がっているはずだ。
【名前:ルーク / 年齢:25歳 / レベル:52→58】
【職業:冒険者 / 魔力:1200→1580 / 体力:850→1020 / 筋力:780→920 / 敏捷:820→980】
【新規スキル習得:魔力制御Lv7、戦術指揮Lv5】
「レベル6上がった...!」
仲間たちも確認する。
【エドワード:レベル46→52 / 新規スキル:複合魔法Lv3】
「複合魔法が使えるようになった!」
【リーナ:レベル34→42 / 新規スキル:魔力増幅Lv4、高速詠唱Lv5】
「私、八レベルも...!」
【セラ:レベル55→60 / 新規スキル:連続攻撃Lv6、回避Lv8】
「Bランクの経験があるから上がりにくいが、それでも五レベル上がった」
俺は全員を見渡した。
「一週間でこの成長速度...異常だな」
エドワードが頷く。
「通常、中級冒険者が一年かけて上がるレベルを、俺たちは一週間で達成している」
「それだけ危険な魔物を倒しているからだ。経験値の高い敵を効率よく狩れば、成長も早い」
リーナが拳を握った。
「このままいけば、古龍戦までにもっと強くなれる!」
「ああ。三日後の試験までに、さらにレベルを上げる。休んでいる暇はない」
俺たちは再び森へと向かった。
成長の実感が、モチベーションを高めていく。
三日間、俺たちは休むことなく狩りを続けた。
森の最深部に生息するベヒモス、死の沼地に棲むヒドラ、山岳地帯のロック鳥。どれもAランク級の魔物だ。
超能力系魔法と基本魔法の組み合わせで、次々と倒していく。
グランが作った新しい装備も届いた。
「ワイバーンの鱗で作った鎧だ。軽くて頑丈だぞ」
リーナとエドワードが魔法使い用のローブを受け取る。魔力を増幅する効果がある。
セラには竜骨製の短剣。
「...すごい切れ味」
セラが目を輝かせた。
俺にはオウルベアの爪を加工した篭手。
「殴打力が上がるように作ったぜ」
試しに岩を殴ると、簡単に砕けた。
「完璧だ、グラン」
バルドの料理も進化していた。
「魔物の肉を使ったステーキだ。一時的に筋力が上がる効果がある」
食べると、体に力が漲る。
「これは...バフ効果か」
「ああ。料理でも戦力を底上げできる」
三日目の夜、全員のステータスを確認した。
【ルーク:レベル58→65】
【エドワード:レベル49→54】
【リーナ:レベル38→46】
【セラ:レベル56→60】
「全員、大幅に成長した」
俺は仲間を見渡した。
「明日は古龍戦だ。今までの集大成を見せる。必ず勝つぞ」
「おう!」
全員の士気は最高潮に達していた。
準備は整った。あとは戦うだけだ。
翌朝、竜の谷へ向かう馬車の中で、俺たちは最終確認をしていた。
「古龍の特徴を確認する」
エドワードが資料を読み上げた。
「全長二十メートル。炎、氷、雷の三属性ブレスを使い分ける。鱗は通常の武器を弾き、飛行速度も速い。知能も高く、罠を見抜く」
「厄介だな」
セラが腕を組む。
「だが、弱点もある。プレコグニションで動きを先読みし、グラビティで飛行能力を奪う。地上に落としてから、集中攻撃だ」
俺は作戦を説明した。
「リーナは空中から氷魔法で翼を凍らせる。エドワードは炎魔法で目を狙え。セラは俺と一緒に急所を攻撃する」
「了解」
全員が頷いた。
竜の谷に到着すると、ギルドマスターが待っていた。
「準備はいいか?」
「はい」
「では、谷の奥に進め。古龍は洞窟に棲んでいる」
俺たちは険しい崖道を登った。硫黄の匂いが漂う。
洞窟の入り口に差し掛かったとき、地響きがした。
「来るぞ...」
洞窟から、巨大な影が現れた。
黒い鱗に覆われた古龍。金色の瞳が俺たちを見下ろす。
「ガアアアアァァァ!」
咆哮が谷に響き渡った。
「散開!」
古龍戦、開始だ。
俺は魔力を全開にし、仲間と共に戦いに挑んだ。
古龍が翼を広げ、炎のブレスを吐いた。
「プレコグニション!」
未来視で攻撃を予測し、全員に指示を出す。
「右に散開!」
炎が俺たちがいた場所を焼き尽くす。
「リーナ、上空から!」
「レビテーション!」
リーナが空中に浮かび上がり、氷の槍を連射する。
「フリーズ・ランス、連続発動!」
古龍の翼に氷が張りつき、動きが鈍る。
「今だ、グラビティ!」
俺は全魔力を込めて重力魔法を放つ。古龍の巨体が地面に引き寄せられた。
「効いてる! エドワード!」
「ファイアストーム!」
炎の渦が古龍の顔面を包む。目を狙った攻撃だ。
古龍が怯んだ。
「セラ、行くぞ!」
「了解!」
俺とセラが同時に跳躍する。竜骨製の短剣と、俺の剣が古龍の首の鱗の隙間を狙う。
「テレキネシス!」
セラが魔力で古龍の首をひねり、隙間を広げた。
「そこだ!」
二人の刃が同時に急所を貫いた。
「ガアァァァ...」
古龍の咆哮が弱まり、巨体が地面に崩れ落ちる。
沈黙。
「...倒した」
エドワードが呆然と呟いた。
だが、戦いの代償は大きかった。エドワードの腕から血が流れ、リーナも肩を押さえている。セラは足を引きずっていた。
「全員、動くな。ヒーリング」
俺は仲間一人一人に治癒魔法をかけた。傷が光に包まれ、みるみるうちに癒えていく。
「すごい...痛みが消えた」
「これがヒーリングか。便利だな」
全員の傷が完全に治った。
「やった! 私たち、古龍を倒したんだ!」
リーナが歓声を上げる。
遠くで見ていたギルドマスターが拍手していた。
「見事だ。君たちは今日からAランク冒険者だ」
古龍討伐の経験値が、俺たちの力を大きく引き上げた。
【ルーク:レベル58→65】
【エドワード:レベル52→58】
【リーナ:レベル42→50】
【セラ:レベル60→66】
俺は剣を鞘に納め、仲間を見渡した。
「これで、俺たちは本物の上級冒険者になった」
新しいステージが、ここから始まる。
ギルドに戻ると、Aランクの証である銀色の紋章を受け取った。
「おめでとう。これで高額依頼を受けられる」
ギルドマスターが祝福の言葉をかけるが、俺は複雑な心境だった。
宿に戻り、仲間を集めた。
「正直に言う。俺は目立ちたくない」
全員が驚いた顔をした。
「なぜ? Aランクになったんだぞ」
エドワードが問う。
「目立てば面倒が増える。貴族が擦り寄ってくる、他の冒険者が嫉妬する、依頼が殺到する。政治に巻き込まれる可能性もある」
セラが頷いた。
「確かに...Aランクになると、権力者が利用しようとする」
「俺たちの目的は金を稼ぐことだ。名声じゃない。静かに、効率よく稼ぎ続けたい」
リーナが考え込んだ。
「でも、どうやって?」
「依頼は選ぶ。派手な仕事は避け、確実に稼げる依頼だけを受ける。街での活動も控えめにする」
バルドが笑った。
「なるほど、地味に大金を稼ぐってわけか」
「その通りだ。俺たちは裏方に徹する。表舞台には出ない」
グランが頷いた。
「賢明だな。目立ちすぎると、敵も増える」
「これからも今まで通り、チームで堅実に稼いでいく。派手な活動は控える」
全員が同意した。
「地味に、確実に、大金を稼ぐ。それが俺たちのやり方だ」
Aランク冒険者になったが、俺たちの方針は変わらない。
静かに、着実に、成り上がっていく。
「もう一つ理由がある」
俺は真剣な顔で続けた。
「上手に使われるのは嫌だ」
エドワードが眉をひそめた。
「使われる?」
「ああ。Aランクになれば、貴族や国が近づいてくる。『この魔物を倒してくれ』『あの任務を引き受けてくれ』と、都合よく使われる。断れば圧力をかけられる」
前世の記憶が蘇る。会社で都合よく使われ、評価されず、使い潰されかけた日々。
「俺は前世で...いや、昔、似たような経験をした。自分の意思ではなく、他人の都合で動かされる。それが一番嫌なんだ」
セラが理解したように頷いた。
「冒険者ギルドも同じだった。強い冒険者ほど、危険な依頼を押し付けられる。断れば『仲間を見捨てるのか』と責められる」
「そうだ。俺たちは誰の駒でもない。自分たちの意思で動く」
リーナが拳を握った。
「私も貴族の家で、ずっと親の都合で生きてきた。もう二度と、誰かの思い通りには動きたくない」
エドワードも暗い顔をした。
「俺も魔法学院で、権力者の道具として育てられた。逆らったから追放された」
「だから、俺たちは独立する。依頼は自分たちで選ぶ。金になるもの、理にかなったものだけ受ける。権力者の都合には付き合わない」
グランが笑った。
「いいねぇ。職人気質だ」
「これからも、誰にも縛られずに生きる。それが俺たちのやり方だ」
全員が強く頷いた。
自由こそが、俺たちの価値だ。
翌日、予想通りギルドに呼び出された。
応接室には、豪華な服を着た中年男が座っていた。貴族だ。
「君がルークか。私はバロン家のエドガーだ。単刀直入に言おう。私の領地に魔物が出る。退治してほしい」
「報酬は?」
「金貨五枚だ」
俺は即座に答えた。
「断ります」
エドガーの顔が歪んだ。
「断る? 私はバロン家の...」
「貴族だからなんですか? 俺たちは自由業です。受けたくない依頼は断る」
「君は自分の立場を分かっていない! Aランク冒険者なら、国の要請に...」
「義務はありません。契約は自由です」
俺はさっさと部屋を出た。
廊下でギルドマスターが待っていた。
「断ったか」
「ええ。気分が悪い依頼でした」
「そうか...まあ、無理強いはしない。だが、これから似たような話が増えるぞ」
「全部断ります」
ギルドマスターは苦笑した。
「お前らしいな。だが、気をつけろ。権力者は面子を潰されると厄介だ」
「分かってます」
宿に戻り、仲間に報告した。
「やはり来たか」
エドワードが溜息をついた。
「これから毎日こうなるぞ」
「だから、俺たちは別の拠点を作る。この街から少し離れた場所に、自分たちの拠点を構える」
セラが目を輝かせた。
「それなら、誰にも邪魔されない」
「ああ。自由に、自分たちのペースで稼ぐ。それが一番だ」
俺たちは新しい拠点探しを始めることにした。
誰にも縛られない、本当の自由を手に入れるために。
「古龍を倒したんだ。レベルを確認しておこう」




