93.卒業レセプションはホワイトパレスで 前編
その日、オーブリー侯爵は悩んでいた。今年度の卒業式はオーブリー侯爵家と関係ない。だが娘や友人たちは卒業生を送り出す在校生側として卒業レセプションに参加する。
そして娘の友人のひとりであるミリュエル・バルニエに40代の想い人がいると知ったのは、1年前の夏季休暇中のこと。そしてそれが帝国宰相であることを知ったのは5ヶ月前のバルニエ伯爵事案の時のことだ。
ただ問題は3ヶ月前の戦闘実習に帝国騎士団が介入したことである。その時点で竜王国はグレイロード帝国に対して多大な借りを作ってしまった。
しかもその日に娘を自宅へ送り届けてくれたローラン侯シメオンの話は、ただの外交的な話ではなかった。
なにせグレイロード帝国最後の砦との異名を持つ宰相ローティス・フィレント侯爵は、かつて失踪したシメオンの兄だと言うのだ。
むしろシメオンは数十年前から兄と連絡を取り合っていて、現在のローラン侯爵家の資産もその兄が大きく増やしたものだという。
つまりミリュエル・バルニエの想い人は、かつて竜王国の神童と呼ばれたマルク・ローランなのだ。これは政治的にも外交的にも大きな話になる。
戦闘実習での返しきれない借りも、その交渉相手がマルク・ローランなら方針から変えられる。なにせ相手は元竜王国侯爵令息なのだ。そこに妥協点を持っていけたなら、竜王国が差し出すものもおおいに減らすことができるだろう。
だから今日この卒業レセプションに帝国宰相が現れるのを前提に、オーブリー侯爵はどのように話を持ち込むかを悩んでいた。
バルニエ伯爵の一件で手強い曲者なイメージしか持てなかった帝国宰相が加減をしてくれることを祈りながら。
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広大な高等部敷地内に年に一度しか使われない施設がある。通称ホワイトパレスと呼ばれる白亜の宮殿は、三階建ての豪奢な建築物で卒業レセプションのためだけに存在する。
教育機関としては贅沢すぎるその建物は、学生たちの成人を祝うと同時に社交界デビューも兼ねていたため重要度は高い。
竜王国は他国と違い宮廷というものがない。王城は王の住む場所ではなく行政機関として存在し、竜王陛下は王城の最深に位置する竜神殿の離れに住んでいる。
そうして宮廷がなければ、異国にあるような宮廷大広間もない。それらがなければ貴族が一同に集まるような場所もないので、社交界デビューは王立学園内で行うしかなくなる。
だからこそホワイトパレスと呼ばれるそこは、数代前の侯爵たちが資金を結集して豪華に造りあげた。
そんな白亜の宮殿の扉が1年ぶりに開かれ、色とりどりのドレスをまとった令嬢が入っていく。玄関ホールに鎮座する大階段は、両脇に手すりがつけられた小階段もあるため令嬢たちは不安なく階段を上がっていく。そして制服姿の男子学生たちは手すりを必要としないため中央の大階段を談笑しながらあがっていった。
大広間は2階部分にあるが、1階にもサブホールがあり、そこでは軽食を取ることも談笑することもできる。さらに1階には控室や準備室がいくつかあり、レセプション前に服装や髪型を整えるため令嬢たちが集まり使っていた。
しかし準備室を使う卒業生や在校生の令嬢たちの話題の中心は、やはり中等部にいる騎士の存在だ。卒業生たちは誰も本物のラピスラズリの存在など口にせず、あえてここに来ない近衛騎士を話題に出す。
そうして令嬢たちは、3ヶ月前の決闘で見たあの漆黒の騎士団服をまとった凛々しい近衛騎士とのダンスを夢見るのだ。
令嬢たちが身だしなみを整えながら談笑するのと同時に、2階の大広間にいる男子学生たちも似たような話題を出していた。女子生徒たちはきっとあの近衛騎士とのダンスを熱望しているだろうが、あの騎士は中等部なのでここには来ない。なので今日こそ好きな相手にダンスを申し込みたいと意気込んでいる。
白壁に囲まれシャンデリアがきらめく大広間は、そんな男子学生たちによって異様な熱気をはらんでいた。
だがそれら空気を完全に無視した生徒会長のベルナール・ローランは、アルノーが更に乗せてくれた小さなフルーツタルトを見つめる。
そしてアルノーも、そんなベルナールの反応に眉を浮かせた。
「ベルちゃんタルト食べなかったっけ?」
白い皿の上には小さなフルーツタルトがひとつ乗っているだけだ。なので他に理由もなさそうだと問いかけた先で、やや上目遣いなベルナールの目が向けられる。
「リリがいたら取られそうだと思っただけだ」
「ああ! そうだった。生徒会室ではベルちゃんのおやつ全部取られちゃってたよね。むしろ後半はもうベルちゃんからあげてた気がする」
「彼女には、甘いものをあげるだけでは返せないほどの恩がある。だがそれとは別で、与えるのがクセになっていたかもしれない」
「ベルちゃん……」
感情など知らないというレベルで前しか見なかった男が、他人を見るだけでなく物を与えられるほどになる。その成長に感動するアルノーとベルナールの横合いから伸びた白く繊弱な手が、小さなタルトをつかんだ。
「他人に餌付けしたい。それも立派な変態よ。ベルナール・ローラン」
フルーツタルトを奪うその手を追うように目を向けた先にいたのは、白磁のドレスをまとったリリだった。柔らかな琥珀色の髪は後頭部でまとめられ、遊び毛が一部だけ垂れる。
普段から甘く愛らしい砂糖菓子は、見た目を整えて清楚で可憐な砂糖菓子となって立っていた。
「なぜここにいる? 中等部は参加しないのが通例だが……」
ベルナールは驚きの顔で問いながらも周囲を見る。しかしいつもリリと一緒にいる近衛騎士の姿はない。
「それは通例なのであって、禁止されているわけではないわ。だから来たのよ」
そう告げたリリは手元のタルトを小さな口でかじった。とたんにフルーツの酸味とクリームが口に広がったのか美味しそうに嬉しそうに微笑む。
その顔を眺めたベルナールは、軽食が並ぶテーブルを指差す。
「……もうひとつ食べるか?」
「ひとつと言わず何個でも食べられるわ!」
「ここは食事をする場所ではないから、何個も食べられては他の生徒が困るだろう。2個までだ」
「ベルナール・ローラン。あなたのそれ、アニエスが移っているわよ」
「俺は常識的なことを言っている」
リリとベルナールが言葉を交わす脇で、アルノーがトングを使って皿にタルトを2個乗せた。とたんにリリがアルノーに礼を言う。
そうして1個目を食べ終えたリリへ、ベルナールは再び質問を向ける。
「それで、なぜ君はここに来た?」
「ここに来なければ、ベルナール・ローランに会うことができないからよ」
「俺に用があったのか。何か問題が起きたのか?」
「いいえ。でもここで会わないとしばらく会えなくなるわ」
リリの発言が理解できないベルナールは、真顔のまま目をしばたかせる。
「俺に会うことで、何かあるのか?」
「あなたが己のことに関して無頓着な愚か者であることは充分に理解しているわ。でもわたくしだって、あなたと会えなくなることを寂しいと思うことはあるのよ。だってあなた、2年前にわたくしを助けて守ってくれた恩人なのだもの。それにこれまでだってずっとわたくしのことを守ってくれたわ」
「そこは覚えてないが、ここで泣かれるのは困る」
そう告げたベルナールは、制服のポケットからハンカチを取り出してリリに持たせる。すると大きな琥珀の瞳に涙をにじませたリリはますます目を大きくさせた。
そうして涙がこぼれるのを防いだ上で言い放つ。
「わたくしは泣いていないわ!」
「あと少しでこぼれ落ちる」
「落ちるものですか! そもそもおまえたちは、わたくしを助けておきながら感謝も求めない愚か者じゃない! わたくしは人が愚かであろうがどうだろうが興味はないけれど、おまえたちがそのまま卒業するのは嫌なのよ! わたくしはおまえたちに何も返せていないのに!」
言葉の途中でポロリとこぼれた涙は、そのまま無尽蔵にあふれては流れる。つまりのところリリは2年前や今回の戦闘実習で自身が助けられたことを気にしているのだ。
その可愛すぎる叫びを聞いてしまった騎士科の生徒たちは感動に目を潤ませ、中には可愛いとつぶやく者もいる。
そうして周囲がしんみりする中、口を開いたのは騎士科筆頭だった。
「でもぶっちゃけおれたち、6年前からベル姫応援し隊だからね。砂糖菓子ちゃんを助けたとかではないんだよ。むしろ2年前なんて逆に助けられたんじゃないか的な疑惑すらあるし。だから気にしなくて良いよ〜」
アルノーが気安区手を振りながら言うので、リリは涙をこぼしながら彼を見上げる。
「でも事実として、わたくしはたくさん助けられたわ」
「そしておれたちは帝国騎士団に助けられてる。砂糖菓子ちゃんがいてくれなかったら、アニエス君も留学生としてここにいないわけで。アニエス君がいなきゃイリアンデさんも来なかったし。そしたら帝国騎士団も来なかったからおれ死んでたんだよ。もはやここで砂糖菓子ちゃんにタルトもう1個あげたくなる話じゃない?」
「それは欲しいわ」
「よーし、おれの分もあげちゃうねー」
いつもの笑顔と変わらぬ軽い態度。軽快なアルノーに乗せられたリリは、新たな皿を渡してどのタルトが良いかと話している。そのため騎士科の生徒たちも安堵の笑みを浮かべた。
我らが騎士科筆頭は、最後の最後まで無自覚にその役目を果たしている。そしていまは泣いていた可憐な美少女の涙を止めることもしてくれていた。
そしてそんなアルノーの社交性の高さをそばで見ていたベルナールも、柔らかな表情で小さく笑う。
とたんに周囲がベルナールに目を集める中、タルトを取り分けていたアルノーも驚きの目を向ける。
「ベルちゃんが笑ってる。そんな綺麗な笑顔を見せてくれるとかどんなご褒美ですか?」
「アルはすごいなと思って」
ベルナールがそう告げた瞬間、アルノーの手からトングとタルトを乗せた皿が落ちた。とたんに皿の割れる音が響き、リリは「タルトが!」と声をあげる。
だが真っ赤な顔で硬直したアルノーは、脳すら停止したように動かなかった。
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時間になり卒業生や在校生たちが大広間へ集まると、学園長による卒業レセプションの始まりを知らせる挨拶が始まる。
学園長が卒業を祝う言葉を語る中に入室した保護者たちも、卒業する我が子を見守るため大広間の壁際に立った。
そんな大勢の人が集まる大広間で、主に女子生徒たちの中にささやきが流れる。
在校生の中にあの水色頭の1年生や侯爵家子息たちの姿がないのだ。
特に侯爵家子息たちはそれぞれ婚約者がいて、在校生として参加している。だというのにエスコートもせず、令嬢ひとりで会場入りさせるという恥をかかせていた。
むしろ婚約者がいないのでは、彼女たちは最初のダンスを踊る相手すらいないことになる。
そのささやきを壁際に立ち耳にしたオーブリー侯爵は憤怒の顔を見せた。アンベール家の愚か者はこんな華やかな場ですら娘を敬うことをしないのだ。
こうなったらもう自分が踊ることで娘の社会的地位を守らなければならないか。そう思いながらもオーブリー侯爵は、ファーストダンスとして皆の前で踊る生徒会長のベルナール・ローランとリリを見た。
さすがにリリを名乗るこの国の至宝は、中等部3年生とは思えない洗練されたダンスを踊る。ふたりで練習などしたこともないだろうに、ベルナールと息がぴったりだ。
そんなダンスの後で保護者である自分が行っては、かえって娘の恥になるのではないだろうか。そう考えて一歩が踏み出せないオーブリー侯爵の視界の隅を白いシャツの少年が横切る。
あげくその少年は、オーブリー侯爵が見守る先にいる娘アドリエンヌの前に駆け込んだ。
ファーストダンスが終わり大広間が拍手に包まれる。そんな会場内に飛び込んできたのは白いワイシャツに黒いズボンの少年。短い黒髪もはっきりした黒目も同じなのに、アドリエンヌの記憶にあった姿より随分と成長した。そんな彼は、2年前と変わらない笑顔を見せる。
「おはようお姉様。めっちゃ寝坊して焦ったけど、間に合った?」
「ええ……あなた、ディートハルト・ソフィードよね?」
「そうだよ。あ、ちょっと背が伸びたかも」
2年前のディートハルトはアドリエンヌと同じ目線の高さだった。だがいまはもう頭ひとつ分ほど高くなってしまっている。しかもその顔つきから子供らしさが薄れて、青年らしい精悍な顔つきに近づいていた。
そんな彼が2年前と同じ嬉しそうな顔でアドリエンヌに手を差し伸べる。
「お姉様の最初のダンスはオレって決めてたから」
「あなたは何でもかんでも勝手に決めすぎよ。婚約も何もしていないのに攫うだのなんだのとお母様に話してしまわれたのでしょう? お母様も困っておられたわよ」
苦情を向けつつアドリエンヌが手に手を乗せると、ディートハルトが嬉しそうに笑った。
「そうだった。そうなんだよ。お袋にぶっ飛ばされたんだ。でもおかしいよな? オレちゃんとお姉様を飯に誘ったじゃん? 竜王国だとそれ恋人にやることのはずなのに」
「あなた、その慣習を知っていたの? アニエスは知らなかったわよ?」
12歳の異国の子供が、大人だけが扱う卑猥な慣習を知っていて利用したなどと誰も思わない。しかも同じ帝国出身のアニエスは知らない慣習なのだ。
そこに驚くアドリエンヌを連れて大広間の中央に進みながらディートハルトは悠然と笑う。
「アニーは育ちが良いからね。だからベルナールお兄様の目標にもなれるし、陥落させることもできる。これはオレじゃあできないことだったから助かったよ」
「ベルナール・ローランは、あなたのことも認めていたわよ」
「ベルナールお兄様は優しいからね」
平然と会話をしながら他の学生にまじってダンスを踊る。しかしこの中でひときわ長身になったディートハルトは、ダンスも際立っていた。アドリエンヌをリードしながら人々の隙間を縫うように移動する。それはやはり中等部3年生に該当する年齢の男子とは思えない技術力だった。
「あなたはダンスもできたのね」
「この国の人はわからないと思うけど、王位継承者ってそんなものだよ。いつどんな時も陛下の代役が務まる程度にすべてを完璧にしなきゃならない。リリやアニーが完璧なのもおんなじ」
やがて一曲目が終わると周囲の学生たちが引き下がるべく移動していく。そんな中でも動かないディートハルトとアドリエンヌのふたりに自然と視線が向けられる。
「グレイロード帝国第六王位継承者で、ソフィード侯爵家長男。立場は堅苦しいけど両親は少しも堅くない。だからお姉様は、何も気にしないでオレに攫われておいで」
その求婚にも似た告白とともに、ディートハルトはアドリエンヌを見つめたままその指先にキスをする。
それを間近で見てしまった女子生徒たちが真っ赤な顔で慌てふためいた。ホワイトパレスで求婚すると一生幸せになれるという伝説があるためだ。
そうして放射状に騒ぎが大きくなる中でアドリエンヌは眉を寄せてディートハルトを見る。
「あなたのことだから、ここで求婚することの意味もわかってるのよね」
「恋に溺れた脳みそお花畑侯爵子息が、男爵令嬢と結婚するために大衆の前で求婚して既成事実積み上げたって話だろ? 知ってるに決まってるよ。まぁけどみんなこういうの好きだよな」
だからアニエスの独壇場になるのだと笑うディートハルトが、2年前にどこまで計算していたのかわからない。けれどそんなディートハルトに腰を優しく押されてエスコートされるのは不快ではなかった。むしろアドリエンヌの歩調に合わせたような歩みも含めて好意が強まってしまう。
そこへ黄色い歓声が沸き起こったため、アドリエンヌは親友のもとへ戻りながら大広間の入り口へと振り向く。
「なにかしら」
「アニーが来たんだよ。あ、そう言えばミリュエルお姉様は? オレ随分前にここに来て欲しいって手紙もらってたんだよ。ダンスしたいって」
いまここにアドリエンヌの親友は3人しかいない。ミリュエルは今朝の時点でドレスがまだ届いていないと言っていて、さらにどうなるともわからないとも笑っていた。しかしここにディートハルトがいるのなら、また帝国から船が来たのだろう。
周囲を見るディートハルトに、ブリジットが説明を向けた。
「ミリュエルは今朝の時点でドレスがなかったから、参加するかどうかからわからないわ」
「あー……あれだ。宰相が地獄みたいな忙しさで、そのドレスもギリだったんだよ。だから前もって届けられなかったっていう」
「そんなにご多忙な方なのね」
「まぁけど、そこは仕方ないとこあるよ。1着目のドレスは大人っぽすぎるって却下され、2着目は娼婦かよって怒られて却下されてたし。というか、髪の色に合わせるってルールにして黒いドレス仕立てる時点で難易度高いよな。なのにそれを仕事の合間にやるっていう」
「その話だと、宰相閣下はご自分でドレスをデザインされたように聞こえるけど」
「数多の恋を踏み潰してきた宰相の謎理論その1。女に送るドレスは他人にデザインさせない。その2、針子も女に限定して男には触れさせない」
「こだわりが強いのね。でもそれでドレスが間に合わないでは意味がないわ。あなただって船で10日かけてここに来たでしょう? ただでさえ時間がないのに」
「確かに、3ヶ月前に人生初敗北して婚約したよ報告して陛下になんで!って叫ばせてから時間なかった。でも宰相は宰相だから大丈夫だよ」
ディートハルトが宰相に対する絶大な信頼を見せているうちに、騎士団服をまとったアニエスがやってきた。ここへ来るまでの間に様々な令嬢からダンスを求められている。そんな王立学園最強の美形騎士は腕に黒い衣装をかけて、爽やかな笑顔を見せていた。
「ディーはきちんと騎士団服を着なければ駄目だよ。身だしなみは騎士の基本だ」
「へーい」
アニエスから黒い騎士団服を渡されたディートハルトはそれをまとう。とたんに周囲が一瞬の静まりを見せた。
長身で体躯も育ち始めたディートハルトが黒の騎士団服に見を包むとより精悍さに近づく。この場にいる者たちはアニエスという美形騎士に見慣れているが、ディートハルトはまた別の魅力を持っていた。
あげくアニエスが腕にかけていた緋色のマントを受け取ると、それも留め具で固定して背に流す。
「じゃ、改めて思い出作りやろうぜ。アナベルお姉様もブリジットお姉様も、ファーストダンスはオレかアニエスだよ」
「そうですね。この場で馬の骨の存在感を殺せとのおねだりを受けているので」
そんな物騒な注文をふたりにするのはリリだけだろう。騎士ふたりから手を差し伸べられたアナベルとブリジットは、顔を見合わせ笑いながらそれぞれの手を取った。




