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砂糖菓子とラピスラズリ  作者: メモ帳
中等部2年
33/54

31.砂糖菓子と新学年

夏季休暇を過ごした竜神殿は、リリにとって娯楽にあふれた楽しい場所ではあった。

竜神殿には王国随一の蔵書量を誇る王立図書館があり、竜神殿から徒歩数分で行くことができる。これは幼馴染みいわく知識欲の権化であるリリのにとって楽園のような場所だ。


だが竜神殿の奥は一般人の立ち入りを禁じているためマティアスを招くこともできなかった。

むしろ王城の麓である竜神殿では竜の加護が強すぎて魔法武具が起動しない。そのためリリの色彩も元に戻ってしまって不便でならない。

元の色に戻ったリリはセレンティーヌ以外の何者でもなくなるのだ。そして竜信仰の本山である竜神殿にとってセレンティーヌは神に等しい存在として扱われる。

それはリリに耐え難いほど目障りで鬱陶しい世界ではあった。そして同時にこの国の頂点もまた同じように煩わしさを感じながら生きてきたのだろうとも思う。



なので夏季休暇が一ヶ月で終わるとリリは安堵しながら学園の寮へ戻った。あと1日でも竜神殿にいたら自分にかしずく誰かを叩いていたことだろう。

リリは帝国では最高位の女であるが、それは親が持つ肩書を元にした序列でしかない。出自など選ぶことはできないが、それでも公爵家の娘として生まれた義務と相殺で納得することはできる。

だが何もしていないこの竜王国で、しかも私的な空間でまで赤の他人にかしずかれて喜ぶような趣味はない。

もちろん相手がこちらを神として敬いたい思想の人間だとしてもだ。



そうして少しすっきりした気持ちで、リリは学生寮の階段をあがった。

王立学園の学生寮は学年ごとに使用区画が変わる。3階建ての学生寮の中で、1年生は寮の2階部分で部屋も広くない。

だが2年生は3階部分で部屋が少し広くなる。それは2年生になり芸術クラスなどが増えることで持ち物や衣類が増えることを想定してのことだ。

昨年同様に学業に必要のない物を持ち込むことは基本的に禁止されている。女子生徒で言うなら華美なドレスや装飾は認められないのだ。

王立学園の女子生徒で華美なドレスをまとえるのは、高等部の卒業レセプションに参加する生徒だけである。もちろんその際は卒業生が主役となるが、在校生も見送る側として立場に沿ったドレスをまとうことが許される。

さらに華美すぎてはいけないが、高等部ではダンスレッスンも始まるためそこで使用するためのドレスは用意することを許されるのだとか。


なんにしてもリリには興味のない話で、ドレスなどはその時に親へ頼めばいいと思っている。リリがこの学園に来たのは学ぶためで、その外見を他人に見せびらかすためではないのだから。


学生寮3階の最奥にある部屋をあてがわれたリリは広い自室のベッドへ飛び込んだ。そばに誰もいないということはどんな無作法も許されるということだ。

竜神殿では広い客間をあてがってもらったが、そこには常に誰かがいた。着替えも食事も何もかも神殿の関係者が手伝いに来ていたため窮屈で仕方なかったのだ。

だが寮に来てしまえば服のままベッドに転がっても誰にも見られない。

その日の夜、リリは広い自室で久しぶりに熟睡することができた。


そして開放感にとらわれていたリリはまだ知らなかった。この女子寮を取り巻く空気の変化と、廊下や何処かで小さく上がる黄色い声の正体にも。



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