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砂糖菓子とラピスラズリ  作者: メモ帳
はじまり
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プロローグ2 竜王国セリオルネーテ

  1000年を超える遥か昔、この世界は天空の民と呼ばれる有翼種と魔族の間で起きた大戦に巻き込まれていた。

  なんの力もない人類はただ怯え逃げ惑うことしかできず、この大戦により人類の半数が死んだと言うが事実はわからない。

  なにせ戦場となった土地は大地が深くえぐれ、国家単位で消滅したとされるほどの跡もあるのだ。そんな土地では何の資料を見つけることもできない。


  そんな人類にとっては絶望しかない時代、天にある蒼の都から2体の青竜が地上に降りた。

  現代において竜種最強と呼ばれる青い鱗の竜はその地に君臨することで人を守ることにした。

  青竜は兄と妹で、兄は王として国政を、妹は竜神殿の巫女として主に女性の保護に努めた。


  それから1000年。


  今の竜王国セリオルネーテは変わらず竜王が治めている。

  人より成長が遅く寿命が長い竜種として生まれた王の名はカインセルス。

  生まれて80年は雛であるらしい竜種として100年生きた王はやっと成人した大人というところだ。

 そのため竜王国の貴族からは「そろそろ妃を」という声もあがっている。

  竜を産めるのは竜だけなので、カインセルス王が次の王をと望むなら竜の都から雌の青竜を招くしかない。

  なので人間でしかない貴族たちが望むのは、長い王の寿命の中で一時期的に務める妃の地位に娘を立たせるという以外にない。

  竜の寿命は数百年と長いのだから、自分たちの代で跡取りを作る必要はない。だとするなら己が一族の繁栄のためにも、出産リスクない妃の座を射止めたいと考える。


  だが王はどれほど輝く美貌の娘が現れても興味すら向けなかった。



  そうして数年が経つ頃、かつて竜王国の王位継承権を放棄した竜の巫女の息子に子がいることがわかる。


  人類の中で稀に人ではあり得ない深い青い瞳の持ち主が生まれる。先祖返りとも言われるその色彩の持ち主が女性であれば竜神殿の巫女となってきた。

  どんな地位の女性でもその色彩を持てば巫女と扱われる。それは巫女が生む子が高い確率で竜として生まれるためだ。


  巫女そのものは色彩以外に何も持たないが、生まれる子がほぼ竜であるなら、その母体も価値が生まれる。

  そうして先代の巫女も巫女としての務めを果たしながら無事に男子を産んだ。

  だがその5年後。巫女は息子と郊外へ出かけたところ悪漢に襲われ護衛共々殺害されてしまう。

 5歳の息子は無事だったが、その身の安全を考えた父親側が母国へ連れ帰ってしまった。

  それ以降、竜王国に住む大多数の国民は愛らしかった巫女の子の幸せを思いながら過ごしていた。


  そんな竜王国に流れた巫女の孫の存在は、貴族たちにとっては青天の霹靂ではあった。

  だが完全な竜である王よりも、巫女という名の人の腹から生まれた竜のほうが人に近いだけ御しやすい。

  ならばと貴族たちは海を隔てた向こうにある帝国へ使者を送り込んでは孫の年齢や性別を調べさせることにした。



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