EP1:影の兆し
放課後の体育館。颯太はいつものようにバスケットボールを追いかけていた。
「よし、シュート!」
ボールがリングをかすめ、歓声が上がる。しかし、その瞬間、颯太の視界の片隅で何かが異常に揺れた。
ふと足元を見ると、自分の影が不自然に歪み、まるで独自の意思を持っているかのように動き出す。
「……え?」
影は颯太の動きを真似るのではなく、正反対の動きをしている。ボールを追いかけるはずの自分の影は、逆方向に走り出したのだ。
颯太は息をのむ。
「な、何だ……これは……!」
---
影の現象は他人にも
周囲のクラスメイトの影も、微妙に不自然に動いていることに気づく。
「あれ……先生の影も……?」
紗弥が驚きの声をあげる。
窓の外では、通りを歩く人々の影が、まるで勝手に生きているかのように揺れていた。
颯太は携帯を取り出し、海外のSNSを検索する。
画面にはニューヨーク、パリ、モスクワ、リオデジャネイロの映像が並ぶ。
ニューヨークの映像には、街角で人々の影が勝手に動き、群衆が混乱する様子が映る。
パリでは、カフェのテラスで影が人々の行動を微妙にずらしている。
ニューヨークの字幕が表示される。
"My shadow… it's not me!"
(「俺の影…自分じゃない!」)
パリでは翻訳が添えられる。
"Mon ombre… elle agit toute seule!"
(「私の影…勝手に動いている!」)
颯太は背筋が凍る思いだった。
「世界中で、同じことが起きてる……?」
---
初めての心理戦
影はただ動くだけでなく、人々の心理まで微妙に揺さぶる。
クラスメイトの影が不意に動き、友達が一瞬戸惑う。
その瞬間を見逃さず、颯太は思い出呼び覚ましを試す。
「……あの時、みんなで練習したことを思い出せ!」
胸の中で強く意思を宣言すると、影の動きが一瞬止まった。
小さな成功だったが、確かに自分の意思が影に影響を与えられることを実感する。
紗弥も呼応する。
「私も……!」
二人の意志が重なると、周囲の影も微かに揺らぎを止める。




