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闇の襲撃と、光の生中継





ナブアの夜は、不気味なほど静まり返っていました。エクリプスの私設特殊部隊は、最新の暗視装置を装備し、陽菜たちが身を寄せる教会跡へと音もなく近づいていました。彼らの目的は、陽菜を「紛争地帯の不慮の事故」として処理し、彼女が育てた「希望の芽」を根こそぎ破壊することでした。




1. ラシードの「盾」




「来たな……」




暗闇の中で、ラシードが低く呟きました。彼は、陽菜の直感を信じ、村の若者たちと共に密かに防衛線を築いていました。しかし、相手は重武装のプロです。正面から戦えば勝ち目はありません。




「ホシノ、お前は動くな。俺たちが時間を稼ぐ。お前は、お前のやり方で奴らと戦え!」




ラシードは、地の利を活かし、砂塵を巻き上げるトラップや、迷路のような廃墟の構造を利用して、特殊部隊の進軍を攪乱しました。




2. 東城の「剣」




一方、遠く離れた場所で謹慎中のはずの東城隼人は、自身の全キャリアを賭けた最後の大勝負に出ていました。彼は、世界中の有志ハッカーたちと連携し、エクリプスの通信網をジャックしました。




「陽菜さん、準備はいいですか? 世界は今、あなたの目を通して真実を見る準備ができています」




東城は、陽菜が持っている旧式のスマートフォンのカメラをリモートで起動し、複数の衛星チャンネルと主要なSNSのプラットフォームに強制的に全世界同時ライブ配信を開始しました。




3. 世界を照らす「叫び」




突如として、世界中のテレビやスマートフォンの画面に、暗闇の中で銃を構える特殊部隊の姿と、その先に立つ一人の女性、星野陽菜の姿が映し出されました。




陽菜は逃げませんでした。彼女は、子どもたちが眠る教会の入り口に立ち、カメラの向こう側にいる数億人の人々に向かって、静かに、しかし力強く語りかけました。




「今、私の目の前にあるのは、暴力によって希望を消し去ろうとする『力』です。でも、見てください。私の背後には、皆さんが送ってくれた種から育った小さな芽があります。彼らが消そうとしているのは、私という個人ではなく、皆さんの心に灯った**『人を思う前向きな心』**です」




特殊部隊の隊員たちは、自分たちの姿が全世界に生中継されていることを知り、動揺しました。引き金にかけられた指が止まります。ここで陽菜を撃てば、それは文字通り、全世界が見守る中での「人道に対する罪」の公開処刑となるからです。




4. 逆転のうねり




ライブ配信の視聴者数は瞬く間に数億を超え、各国の政府機関には「星野陽菜を救え!」という怒涛のメッセージが押し寄せました。これまで静観していた国際社会も、この「生中継された暴挙」を無視できなくなりました。




「撃てるものなら撃ちなさい」




陽菜は一歩前に出ました。




「でも、たとえ私を倒しても、皆さんが捨てた食料が誰かの命に変わるという**『共感の旋律』**を止めることはできません!」




闇の部隊は、光にさらされたことでその牙を失いました。上空からは、世論の爆発に突き動かされた国連の平和維持部隊のヘリコプターが、かつてない速さで現場へと急行していました。

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