凍てつく称賛、剥奪される資格
浄水システムが稼働し、子どもたちが渇きから癒やされたのも束の間、陽菜を待っていたのは世界からの温かい拍手ではなく、凍てつくような非難の嵐でした。
陽菜が独断で制裁網を潜り抜け、中立国の「文化遺産保護財団」を偽装して物資を運び込んだ事実は、国際社会の監視網によってすぐに露呈しました。
国際社会の冷徹な正義
ニューヨークの国際開発銀行(IDB)本部では、緊急理事会が招集されました。陽菜を支持していたはずの各国代表たちは、一転して厳しい表情を浮かべていました。
「星野陽菜顧問の行動は、人道的動機があったとはいえ、明白な国際法違反であり、制裁措置の無効化を狙った独断専行である」
IDB総裁は、冷徹な声明を発表しました。
「一人の『正義』が国際合意を無視することを許せば、秩序は崩壊する。彼女の行動は、武装勢力に『制裁は突破できる』という誤ったメッセージを与え、事態をより長期化させる恐れがある。よって、本日をもって星野陽菜の主任顧問官の資格を剥奪し、彼女のこれまでの全ての権限を凍結する」
孤立する「救世主」
SNSや国際ニュースでも、陽菜は「現場を混乱させた独裁的な人道活動家」としてバッシングを受け始めました。
「彼女がルールを破ったせいで、より厳しい制裁が必要になった」「結局、自分の正義に酔っているだけではないか」
東城隼人も、陽菜を助けた「情報の隠蔽」の責任を問われ、謹慎処分となりました。陽菜にとって唯一の外部とのパイプも断たれてしまったのです。
ナブアの夜明けに差す影
ナブアの現場で、陽菜はボロボロになった衛星電話を握りしめ、資格剥奪のニュースを聞いていました。
「ホシノ……すまない。俺たちのために、お前は全てを失ってしまった」
ラシードが、肩を落として陽菜の側に立ちました。
陽菜は、浄水システムから溢れ出る透明な水を見つめながら、静かに答えました。
「資格なんて、ただの肩書きよ、ラシード。でも、世界は『ルールを守って子どもを見殺しにすること』を、私の『独断で命を救うこと』より優先した。それが今の世界の倫理なのね……」
彼女の**「行動する勇気」は、子どもたちの命を救いましたが、代償として彼女を「世界の罪人」**へと突き落としました。
陽菜の瞳には、かつてないほどの深い悲しみと、それでも消えない強烈な意志の火が宿っていました。
「地位を失っても、私は諦めない。私にはまだ、**『命の声』**を聞き取る力があるから」




