希望の資金、現場での開花
国際開発銀行（IDB）会議での陽菜の勝利により、フードロス削減分を命の投資に変える「グローバル・フード・エシックス信託（GFET）」が正式に発足しました。参加を表明した各国政府と企業からの初期資金が流れ込み、陽菜の提言した「フード・フォーカス開発（FFD）」モデルは、ナブア紛争地帯でついに実行フェーズに入ります。
ナブアへの資金と知恵の還流
GFETからの資金は、IDBの官僚的なルートを経由せず、東城隼人が構築した透明性の高いデジタルプラットフォームを通じて、直接ナブアのコミュニティに振り込まれました。この資金は、単なる援助ではなく、「教育と農業再建」という明確な目的を持った投資でした。
陽菜は、ラシード、ムスタファ医師と連携し、FFDモデルの核となるプロジェクトを開始しました。
土地の回復と食料生産
資源採掘予定地だった土地は、コミュニティに返還されました。陽菜が手配した専門家が、子どもたちの**「希望の教室」**の生徒たちと共に、持続可能な農業技術を導入し、食料生産の再建に取り組みました。
教育と技術の結びつき
「希望の教室」では、ムスタファ医師が衛生管理と栄養学を、ラシードの協力者たちがフードロスを防ぐための食料保存技術を教えました。教育は、貧困と食料問題を直接解決するツールとなりました。
日本からの「共感」の連鎖
この頃、日本国内でも、陽菜の活動が大きな感動と共感を呼んでいました。**「私たちが捨てる食料が、命と教育に変わる」**というメッセージは、市民や企業を突き動かしました。
陽菜の旧友が主導し、日本のフードバンクやNPOが協力して、「フードロス削減分をGFETへ寄付する」という市民運動が全国に広がりました。この運動は、「人を思う前向きな心」が、国境を越えた倫理的行動へと繋がることを証明しました。
闇の残滓と新たな監視
しかし、闇の勢力は完全に消滅していませんでした。彼らは、GFETの資金が「正しく使われているか」という名目で、現地での監視を強化し、陽菜のチームの行動に不当な圧力をかけ始めました。彼らは、FFDモデルが失敗するように、コミュニティ内部での対立を煽ろうと画策しました。
陽菜は、東城に警戒を促しました。
「闇は、資金そのものを奪えなくても、人々の信頼を奪おうとする。私たちの透明性と倫理を、これまで以上に厳しく守らなければならないわ」
陽菜の戦いは、国際的な構造改革から、ナブアのコミュニティ内部での信頼と希望を守るという、最も繊細で、しかし最も重要なフェーズへと移行しました。彼女の行動する勇気は、今、**「希望の芽」**を、闇の圧力から守り育てるために必要とされていました。
