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食料を捨てる開発の矛盾





陽菜はナブア紛争地帯での危機を乗り越え、主任補佐の東城隼人とともに、国際開発銀行(IDB)と多国籍企業が参加する**「資源開発と持続可能な未来に関する国際会議」**に臨んでいた。




陽菜が今回立ち向かう課題は、資源開発がもたらす環境破壊が、現地の人々の食料生産基盤を奪い、結果的に貧困と食料問題を永続させるという、新たな構造的不正義だった。




会議では、IDBの代表が、ナブア周辺の鉱物採掘が地域の「経済成長」に不可欠であり、紛争後の復興を助けると熱弁していた。しかし、陽菜にはその裏に潜む闇の構造が見えていた。




陽菜は、壇上に立ち、スクリーンに一枚の写真を映し出した。それは、日本で規格外として廃棄される大量の野菜の写真と、ナブアの村で栄養不良に苦しむ子どもたちの写真を並べたものだった。




「皆様は、経済成長を語りますが、その成長の裏で、地球は大きな倫理的矛盾を抱えています」




陽菜は語り始めた。




「私の故郷では、必要以上に食料があり、毎日大量の食料がフードロスとして捨てられています。一方で、資源開発による環境破壊は、現地の人々が自給自足できる土地を奪い、食料にすらありつけないという悲劇を生んでいます。」




彼女の「叫び」は、資源開発の倫理と食料倫理を、初めて公の場で結びつけた。




「資源を掘り出すための『開発』は、私たちに食料を捨てる権利を与え、貧しい国々から食料を生み出す土地と未来の希望を奪っているのです。これが、私たちが追求すべき持続可能な未来でしょうか?」




陽菜は、東城が作成したデータに基づき、採掘予定地の環境破壊が、地域の食料生産力を30%以上低下させ、数年以内に深刻な飢餓を引き起こすことを証明した。




「私たちは、食料を捨てるための開発ではなく、命を育むための倫理を選ばなければなりません」




彼女は、ナブアでの成功例を提示した。**「希望の教室」**で子どもたちが、新しい農法やフードロス削減の知恵を学んでいる写真だ。




「この子どもたちに、教育という知恵と、食べ物を生み出す土地を残すこと。これこそが、最も倫理的で、最も持続可能な『開発』です。私が提案するのは、採掘権を放棄し、その土地と資金を教育と農業の再建に振り向けるという、**『フード・フォーカス開発(FFD)』**モデルの採用です」




陽菜の提言は、開発銀行と多国籍企業に激震を与えた。彼らは、経済的な利益だけでなく、倫理的責任とフードロスという、グローバルな世論を動かす二つのテーマで追い詰められた。




闇の勢力のロビイストたちは、陽菜の提言を阻止するため、会議の休憩中に裏工作を開始した。彼らは、陽菜が提案するFFDモデルの**「実現可能性の欠如」**を訴えるための、偽の経済分析レポートを緊急で作成し始めた。




陽菜の戦いは、単なる構造改革から、経済学の論理と生命の倫理を対立させる、さらに厳しいフェーズへと突入したのだ。

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