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国際捜査と現場の危機





陽菜が提出させた監査報告書は、国際連合の関連機関と、国際不正取引を捜査する専門機関に受理された。




この情報は瞬く間に世界を駆け巡り、「グローバル・ハート」の不正を利用していた国際的な武器商人や、紛争鉱物取引に関わる企業の株価は暴落し、幹部の訴追が始まった。




陽菜の「叫び」は、ついに世界の金融構造の核心を直撃したのだ。 




法廷闘争も陽菜側に有利に傾いた。東城隼人から得た証拠と、本部から提出された監査報告書により、故郷のNPOへの金融圧力を仕掛けていたコンサルティングファームの違法行為が明白となり、彼らは巨額の賠償請求と国際的な非難に晒された。故郷のNPOは活動を再開できることになり、陽菜の人を思う前向きな心が守られた瞬間だった。




本部での勝利に安堵した陽菜のもとに、遠い紛争地帯から、ラシードからの緊急の暗号通信が入った。




「ホシノ。国際捜査のせいで、闇の構造が崩れ始めた。影の牙は資金源を失い、飢餓と絶望からより暴力的になっている。彼らは、食料と支援物資を奪うため、難民キャンプ全体を、今度こそ本気で襲撃する準備をしている。本部からの支援は期待できない。助けは…お前しかいない」




陽菜の告発は、闇の構造を崩壊させたが、その崩壊が現場に真空地帯と暴力の増大という、新たな危機をもたらしていたのだ。彼女が本部で手にした「光」は、現場の「影」をさらに濃くしてしまった。




陽菜はすぐにバーネット統括に現地への増援と物資輸送を懇願したが、組織はまだ混乱の最中にあり、彼の答えは消極的だった。




「星野顧問、我々は今、国際捜査の協力と組織の再建に全力を尽くしている。君の功績は理解するが、武装勢力との直接的な戦闘に介入する権限は組織にはない」




陽菜は、再び組織の壁にぶち当たった。しかし、今回は違った。彼女には、本部で築いた「透明性・倫理監査 特別顧問」としての地位と、東城隼人という強力な協力者がいた。




陽菜は、東城に連絡を取った。




「東城さん、あなたの知識とネットワークが必要です。難民キャンプに物資と、彼らを守るための手段を、国際機関を通さずに、緊急で調達する手助けをしてくれませんか?」




「わかりました、星野顧問。私が知る全ての合法的な抜け道と、人脈を使います。あなたの叫びが、まだ現場に届いていないのは、世界の構造的な怠慢です。それを打破しましょう」




東城は即座に応じた。




陽菜は、本部での勝利に浸る間もなく、東城と連携し、支援物資と、現地の安全確保のための装備(非殺傷の防衛物資)を、極秘裏に調達し始めた。




彼女は知っていた。世界の貧困と食料問題を真に解決するには、構造的な改革だけでなく、今、この瞬間に行動する勇気をもって、目の前の命を守る必要があるのだと。




陽菜の心は、再び土埃の戦場へと飛び立っていた。

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