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故郷からの援軍





陽菜が指示した「過去の紛争地帯への支援データと同時期の国際的な鉱物取引データ」の照合は、「グローバル・ハート」本部に激震を走らせた。その分析は、外部の独立した金融専門機関に委託されたが、その結果が組織の屋台骨を揺るがすことを、不正に関与した者たちは理解していた。




本部内では、情報へのアクセス制限や、陽菜への業務妨害が公然と行われ始めた。コーヒーカップに故意に塩を入れられたり、重要書類が紛失したりといった幼稚な嫌がらせから、陽菜のオフィスへの不審な侵入まで、闇の勢力は彼女を孤立させ、精神的に追い込もうとしていた。




「星野顧問。この監査は、組織の士気を下げています。そろそろ潮時では?」




バーネット統括が静かに忠告した。彼は陽菜を案じているが、組織全体の混乱を恐れていた。




「士気が下がるのは、真実を恐れているからです。バーネット統括、彼らが恐れているのは、私一人の力ではありません。透明性と倫理が、組織のシステムとして確立されることです」




陽菜は微動だにしなかった。彼女の背後には、ラシードとムスタファ医師、そして世界中の子どもたちの顔があった。




その頃、故郷のNPOは、金融コンサルティングファームの巧妙な圧力により、いよいよ活動停止の瀬戸際に立たされていた。偽情報による信用失墜に加え、銀行からの融資が突如停止され、運営資金が完全に枯渇したのだ。




NPOの代表を務める陽菜の旧友から、絶望的な連絡が入った。




「もう終わりよ、陽菜。私たちは、あなたの戦いの足を引っ張るだけだわ」




陽菜は、国際電話を握りしめ、強い怒りに震えた。彼女の**「人を思う前向きな心」**が、今、最も深く傷つけられていた。




その時、本部のある会議室で、陽菜の演説を収めた映像を見つめる一人の男がいた。彼は、巨大な国際金融コンサルティングファームの元上級役員であり、現在は引退している、**東城とうじょう 隼人はやと**という名の男だった。東城は、陽菜が追い詰めている「闇の構造」の、最も深い部分を知る人間の一人だった。




東城は、陽菜の「沈黙を拒む勇気」と、彼女が訴える医療格差や貧困の問題に心を動かされていた。彼は長年、その闇の構造の一端を担ってきたことに、深く苦しんでいた。




彼はすぐに陽菜に連絡を取った。




「星野顧問。あなたが追いかけている闇は、私がかつて所属していた場所です。彼らは、法と金融の論理で、あなたの故郷を潰しにかかっている。あなたの戦いを支援させてほしい」




陽菜は警戒したが、東城が提供した情報は驚くべきものだった。彼は、NPOへの金融圧力が、どの部署の、どの担当者によって、どの法的な抜け穴を使って行われたかを示す、極めて具体的な内部資料を持っていた。




「私の罪滅ぼしです。あなたの叫びは、私のような罪を犯した者にすら、行動する勇気を与えてくれました」東城はそう言った。




陽菜は、これが天からの助けだと確信した。彼女の「叫び」は、最も不純な場所—闇の構造の内部から、倫理と光を引き寄せる力を持ち始めていたのだ。




陽菜は、東城から得た情報を手に、故郷のNPOへの金融圧力をかけるコンサルティングファームに対し、即座に国際的な訴訟準備を進めるよう指示した。




「私たちは、沈黙しない。この戦いは、紛争地帯だけでなく、世界の金融街でも勝たなければならない」




陽菜の戦いは、今や、土埃の戦場から、国際的な法廷へとその舞台を移しつつあった。

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