第十二話「未来~春~」
春――高校を卒業してから5年の月日が経過していた。
友江旅館の調理場は、相変わらず、湯気と熱気でむせ返っていた。
板長の包丁がリズム良くまな板を叩き、揚げ物担当の藪が油のはじける音に眉をしかめる。デザート係の千秋は、銀色のナイフで一生懸命果物を切り分けていた。
「ちょっと板長!もう少し早く回してくれないと困るよ!お客様が待ってんだ」
催促する前田の声に、板長は「はいよっ」と短く返す。
傍らでは、ふくらんだお腹を抱えた若女将見習いの早菜が皿を並べていた。
「千秋、がんばれー!」
声援に振り向いた千秋が、ニッと笑う。
「早菜、体調は大丈夫なのかい?そんな無理しなくても」
前田が心配そうに視線を逸らす先には、早菜の大きなお腹。
「家にいた方が落ち着かなくて。お客様も一部屋だけなので全然大丈夫です!」
「ほれ、上がったぞ!」
板長の檄とともに、メイン料理が湯気を立てた。
◇◇◇
配膳を終えた早菜は、二階廊下奥の部屋の襖がわずかに開いているのに気づき、軽く叩いた。
「ハルー?入るよー」
月明かりだけが差す窓辺に、ハルが腰掛けていた。机の上の原稿用紙が風で揺れる。
「なんだ。いるんじゃない」
「早菜、仕事は終わったの?」
「配膳は済んだから、あとはお膳を下げるだけ。小説家様は月を見ながらお仕事が出来て羨ましいです」
早菜が冗談めかすと、ハルは照れたように笑った。
「僕が生きた証を残したくて。千秋と早菜に出会ってから、僕の日常は色づいた。この愛おしさを忘れたくないんだ」
「ハル……」
静寂が部屋を包む。早菜は優しくハルを見つめた。
「そうだ!ハルにお願いがあるんだった」
「お願い?」
「そう!この子の名付け親になってほしいの」
早菜はそっとお腹を撫でながら、告げた。
「え……僕でいいの?」
「ハルがいいの」
そこへ千秋の声がする。
「おーい!ハルいるかー?入るぞ」
千秋がエプロンを外しながら、部屋に入ってくる。
「早菜、やっぱりここかよ」
「千秋、ちょうどよかった。今、ハルに名付け親になってほしいって話してたの」
「千秋はいいの?名前付けたがりそうだけど」
ハルの問いに、千秋はきっぱりと言い放った。
「いいんだよ!俺らのことずっと見守ってくれてたわけだし、名付け親はハルしかいねぇよ!」
「そういえば、高校生の頃、みんなで名前の話したよね」
ハルの言葉に、千秋は首を傾げた。
「したっけ?」
「したした!名前は単純な方がいいって話!」
早菜が思い出話に花を咲かせる。
「そうだね……だからって訳じゃないけど、千秋の『千』と早菜の『早』で、『千早』ってのはどうかな」
ハルの提案に、千秋は目を輝かせた。
「めちゃくちゃいいじゃん!女だと可愛いし、男だとかっけー!」
しかし、早菜は何か考え込む様子で首を横に振った。
「違う……」
「早菜?」
「漢字じゃなくて、平仮名で『ちはや』よ」
千秋は「ん?」と首を傾げたが、すぐにピンと来たように顔を上げた。
「あ!わかった!俺の『ち』と、ハルの『は』と早菜の『や』だな!?」
「流石千秋!その通り!ハルどう?」
「そんな、僕の名前を入れるなんて」
ハルは恐縮するが、早菜は真っ直ぐに彼の目を見つめた。
「ハル。この子はハルがいてくれたから生まれてくるのよ。お願い。だめかな」
早菜のお願いに抵抗出来るわけもなく、ハルは頷いた。
「ありがとう。嬉しいよ」
「じゃあ、名前は『ちはや』で決まりだ!やったぜ!」
千秋が嬉しそうにガッツポーズをする。
その瞬間、早菜が突然うずくまった。
「いた……」
「早菜?」
「いたたたたたた!」
「お、おい、どうした?」
焦る千秋に、早菜は苦しげに告げた。
「千秋……来たかも……」
「もしかして陣痛か!?ちょっと早くねぇか!?」
千秋の動揺に、ハルは冷静に指示を飛ばした。
「千秋!布団敷いて!敷いたら女将呼んできて!」
「お、おう!」
ハルは早菜の手を握り、優しく語りかける。
「早菜、大丈夫、ゆっくり呼吸して」
◇◇◇
女将、前田、佐藤、土井、栄江が紅葉の部屋に集まっていた。
「いったー!」
早菜の叫び声が響く。
「早菜さん!しっかり!」
女将の声に、千秋も「早菜!」と叫ぶ。
「人の子なんて取り上げたことないよ」
「私もさ」
「産婆は何やってるんだい」
前田、佐藤、土井は顔を見合わせる。
「こんな田舎町ですぐ来れるわけないでしょ」
前田が状況を説明する。
「いてててて……さっきまではちょっと痛いくらいだったのに、どんどん痛くなってく」
早菜の苦しむ声に、前田、佐藤、土井はますます慌て出した。
「ど、どうすりゃいいんだい!?」
その時、栄江が一喝した。
「落ち着くさね!私らが動揺してどうするさ!男達!出ていきな!ここで産ませるよ」
◇◇◇
紅葉の部屋の前では、千秋が手を合わせてしゃがみ込み、その隣にハルが立っていた。
やがて千秋は落ち着かない様子で歩き回り始め、ハルは壁に寄りかかって静かに時を待った。
産婆が旅館の前に到着し、千秋が部屋まで案内する。
廊下の窓から朝日が差し込む頃、紅葉の部屋のドアがゆっくりと開いた。目を伏せた女将、産婆、そして仲居たちがぞろぞろと出てくる。
「早菜……ちはや……ちはや!」
千秋は慌てて部屋に飛び込んだ。
中に入ると、早菜は、産声を上げない赤子を抱きしめ、涙を流していた。
「早菜……」
千秋の声も震えている。
「生まれてきた時、既に呼吸がなかったの。お腹の中では、あんなに元気に動いていたのに。なんで……どうして……」
早菜の瞳から大粒の涙が溢れ落ちる。
その時、ハルはちはやの首筋に痣があることに気づいた。
「邪慳だ……」
邪慳の声が脳裏に蘇る。
「人間、お前に死の呪いをかけた。いつか必ず後悔する……ざまぁみろ……ざまぁみろ……」
「ちはや……ちはや……」
泣きじゃくる早菜を、千秋は赤子ごと抱きしめた。
「すまねぇ。俺のせいだ……」
ハルは固い表情で、部屋の隅にある文机の引き出しから帳面を取り出し、文机の上に置いた。五年ぶりに触れるその無機質な紙は、ひやりと指先に冷たい。視線を落とすと、手が小刻みに震え出した。彼は思わず袂に隠す。その瞬間、まるで呼応するかのように窓から風が入り込み、帳面のページがめくれて、紅葉の栞が姿を現した。
それは、母・桜が遺した紅葉の栞。自分を産んですぐに命を土地神に捧げ、そして時間という宝物を授けてくれた母の最期の言葉が、そこに込められている。五年もの間、忘れていたわけではない。だが、それに触れてしまうと、「死」というものが明確に、そして恐ろしいほどに現実味を帯びてしまう、形容し難い恐怖があった。生きたい。命族でありながら、自らの命を捧げることへの恐怖が、波のように押し寄せてくる。ハルは迷っていた。千秋と早菜と過ごしたこの六年間が、ハルにとっては何よりもかけがえのない、この上ない幸せだったからだ。しかし、命よりも大切な友人の身に起きた悲劇。今、時を越えて母の声を聞く以外に、選択肢はなかった。ハルは震える指先で、恐る恐る紅葉に触れた。
その刹那、母の映像と声が頭の中に入り込んできた。
最期、桜が赤ん坊のハルを抱きしめ、語りかけているところだった。
ハルは目を見開き、小さく頷くと、帳簿を手に早菜の隣へと歩み寄った。
「早菜、泣かないで。ちはやは助かる」
「え?」
早菜は帳面を見て、ハッとした。
「だめ!ハル!それはだめって約束したでしょ!?」
「早菜、覚えてる?高校3年の最初の定期試験、勝負して僕が勝ったよね。そのお願い、まだ使ってなかった」
「ハル……だめだ……」
千秋の言葉にも、ハルは意を決したかのように動じない。
「ちはやを生き返らせたい」
早菜は目を閉じて顔を背けた。
「早菜、ちはやをよく見て」
早菜は言われるがままに、ちはやを見つめる。
「三人で、ちはやの声を聞こう」
その言葉に、早菜は抑え込んでいた感情が溢れ出してしまう。
「ハル……ごめん……ごめんなさい……」
「うん。大丈夫だよ」
「くそっ!なんとかなんないのかよ!くそっ!」
この状況に、自身の無気力さに、全てに腹を立て、悔しがる千秋。
ハルは帳面に『ちはや、八十年』と書き記す。あとは、ちはやの手を握り、命を分け与えるだけ。
「ハル、すまねぇ……俺は……」
「いいんだ。早菜と千秋の気持ちは分かってる。僕がこうしたいんだ」
そしてハルは、ちはやの小さな手を優しく握った。
部屋が眩い光に包まれ、その中でちはやが産声をあげた。
「ちはや!」
早菜は涙を流しながら、愛おしそうにその名を呼ぶ。
「ちはや!」
千秋も安堵の声を上げた。
ちはやは、ハルが握った手をぎゅっと握り返す。
ハルは目を見開いた後、微笑み、目に涙を浮かべた。
「ハル……」
ちはやのうぶ声を聞き、女将と仲居たちが紅葉の部屋に駆けつけてくる。
早菜、ちはや、千秋の姿を見て、ハルは静かに微笑むと、紅葉の部屋を後にした。
◇◇◇
ハルの背中を千秋が追いかける。
「ハル!すまねぇ……」
「謝らないでよ。良いことをしたんだから。ね」
「でも……」
「千秋」
ハルは手にしていた帳面を千秋に渡した。
「この帳面はちはやの命になる。絶対に守り抜いて」
「ああ」
千秋は力強く頷く。
「あとは託したよ、僕の親友……」
「感謝してもしきれねぇ……ありがとう」
ハルは中庭に向かって歩き出した。千秋はその背中に向かって深々と頭を下げる。
◇◇◇
早菜は疲れ切って眠っていた。女将が赤子の面倒を見ている。
「女将、すみません、代わります」
千秋がちはやを抱き上げる。
「早菜さん、すごく頑張ったから疲れちゃったのね。寝かせてあげましょう」
「女将……ハルが……」
女将は静かに頷いた。
「いつかこんな日が来ると思ってました。あの子、千秋くんと早菜さんに出会ってから、表情がすごく柔らくなったのよ」
「そうなんですか」
「ええ、高校の卒業式の日ね、ハル、私に毎日お弁当作ってくれてありがとうって言ってきたの。本当に嬉しかった。あなた達に出会ってなかったら、きっと聞けなかった。感謝しているわ」
「はい……」
◇◇◇
夕日が部屋を赤く染める。
早菜が目を覚ました。
「ハル!」
勢いよく起き上がる早菜に、千秋が駆け寄る。
「早菜、大丈夫か!?」
「ハルは!?」
「まだ中庭にいる」
「千秋は……千秋はもうハルとの、その」
早菜の言葉を遮るように、千秋は言った。
「別れは済んでる。早菜、ハルはお前を待ってるよ」
「行かなきゃ……」
「一人で大丈夫か?」
「私を誰だと思ってるの。このくらい平気」
早菜は決意の表情を浮かべ、部屋を出ていった。
◇◇◇
中庭のベンチに座り、桜を眺めるハル。
桜の花びらが舞い落ちるように、ゆっくりと時間が流れていく。
ハルは静かに詠んだ。
「世の中にたえて桜のなかりせば、春の心はのどけからまし」
「あら、それは私を最初にからかってくれた歌じゃない」
早菜の声が響く。ハルは小声で呟いた。
「からかったつもりは……ないんだけどな」
早菜は優しくハルを見つめる。
「早菜、もう立って大丈夫なの?」
「沢山寝たから大丈夫」
早菜はハルの隣に座り、そっと手を握った。
「一人でなんて逝かせやしない」
早菜は涙を堪える。
「……今日は、すごく長閑な気分なんだ。鳥の囀り、暖かい日差し、春の匂い、ゆっくり散っていく桜の花びら、そして早菜。君に出会えて本当によかった」
ハルは早菜の方を見つめた。
「私も……ハルに出会えてよかった」
ハルが早菜にもたれかかる。
「そろそろ……かな」
「ハル……!」
ハルは早菜の膝に頭を置いた。
「ごめん……ちょっと……力が入らなくて」
「ハル、ごめんね……ごめんね……」
早菜の瞳から涙が溢れる。
「早菜、笑って……」
ハルの優しい言葉に、早菜は涙を拭い、微笑んだ。
「うん……ハル、ありがとう……」
小鳥がさえずり、夕陽が優しくハルを包み込む。
「明日世界が終わるとしたら僕は早菜、君と過ごしたいと思っていた。僕の願いは叶ったよ」
「うん……」
「早菜、千秋、そしてちはや、愛してる。この気持ちを教えてくれて、ありがとう」
そして、静かにハルは息を引き取った。早菜の涙が一粒、ハルの頬を伝う。
◇◇◇
――十五年後。秋。
友江旅館の休憩室では、前田、佐藤、栄江、早菜がテーブルを囲んで立っていた。
「あの泣き虫はだめよ。泣き叫ぶに飴ちゃん3つ」
前田がからかうように言う。
「同じく。飴ちゃん3つ」
佐藤も同意する。
「ちょっと!私の子よ!お客様の前で泣くような真似するわけないじゃない!我慢して戻ってくるに飴ちゃん5つ」
早菜は頬を膨らませる。
「ヒッヒッヒッ。あーやだやだ。分かってないね。我慢して戻ってきて私に泣きつくに飴ちゃん10個だよ」
栄江が笑いながら、ごろっと飴を10個テーブルに置く。
◇◇◇
緊張した面持ちで玄関ロビーに立つ高校生になったばかりのちはや。そこへ三谷がやってきた。
「お疲れ様でございました!」
ちはやの初々しい声が響く。
「三谷様、ようこそお越しくださいました」
女将が優雅に迎え入れる。
「女将、お久しぶりです」
「お鞄お持ちしやす!」
ちはやは言葉を噛んでしまい、思わず口を塞いだ。
「すみません、三谷様。実は今日が初出勤でして」
女将が苦笑いする。
「いえいえ、いいんですよ」
三谷は鷹揚に頷いた。
「それでは、お部屋にご案内します」
ちはやは緊張しながらも、三谷を部屋へと案内する。
目的の部屋に到着し、靴を脱ぎ、部屋に入るちはやと三谷。
「段差がございますので、お気をつけください」
ちはやが注意を促したその時、三谷は部屋の隅に立ち、ぶつぶつと何かを呟き始めた。
「お客様、どうかしましたか?」
「みぃ〜たぁ〜なぁ〜」
三谷は三つ目を開き、長い舌を出してちはやを脅かす。
「ヒィ!た、大変可愛らしいお目目ですね……そ、それでは何かありましたら電話でお呼びください……失礼します」
ちはやは慌てて部屋を飛び出し、休憩室へと走った。
◇◇◇
慌ただしく休憩室に飛び込んできたちはやは、カチンコチンに固まっている。ちはやの様子をじっと覗き込む前田、佐藤、早菜。
「う……うぅ……うわーん!」
ちはやは栄江に泣きついた。
「えぇ!?ちょっと!ちはや!なんで私に泣きつかないのよ」
「だって、お母さんに泣きついたら怒るから〜」
「そりゃ、そうよ!もう十五でしょ!しっかりしなさい!」
「あーやだやだ。お母さんは怖いねぇ。よしよし」
栄江は優しくちはやを抱きしめる。
「栄江さん……ん……栄江さん」
ちはやは栄江の匂いをクンクン嗅ぎ始めた。
「栄江さん、タバコ吸った……?」
栄江はギクリと固まる。さらにクンクン匂いを嗅ぐちはや。
「ん!?前田さんも!佐藤さんも!タバコ吸ったでしょー!?」
前田と佐藤は知らんぷりを決め込む。
「妖だって病気になるってお父さん言ってたんだから!健康に気をつけてよね!もう!」
ちはやはそう言い放つと、休憩室を出て、ピシャリと戸を閉めた。驚きながら戸の方を見る前田、佐藤、早菜。
「こういうところは親譲りさね」
栄江は楽しそうに呟いた。
◇◇◇
仕事を終えたちはやは更衣室に向かう途中、中庭に人影を見た。中庭に入り、桜の木の紅葉を見ている男に声をかける。
「お客様、今夜は冷えますので、何か羽織りでもお持ちしましょうか?」
男がちはやの方を振り返る。月の光が男を照らし出し、その眉目秀麗さにちはやの頬は赤く染まった。
「大丈夫……」
男の優しい声が響く。
「でも今日はこんなにも息が白く……あれ……」
ちはやは男の口元を見つめる。
男はそっと詠んだ。
「千早ぶる 神代もきかず 龍田川 からくれなゐに 水くくるとは」
「在原業平ですね」
ちはやは即座に答える。
「よく勉強してるね」
「ええ!昔、母を在原業平の歌で口説こうとした人がいたんですよ。父がそういう男に引っかからないように勉強しとけと」
ちはやは苦笑いしながら答える。
「ハハッ。ちはやという名前は父と母から思いついた名でもあるけど、僕がこの歌を好きだったんだ」
「え?」
ちはやは驚いたように男を見つめる。
「僕には、大切な思い出を染めたもみじが、龍田川で色鮮やかに変化していくように見える歌だ」
男を見つめるちはや。
「名にふさわしく育ったね」
「私のこと……ですか?」
男はニコッと笑い、ちはやの頭に手を乗せた。
「ちはや、生まれてきてくれてありがとう」
男は、風と共に紅葉となって消えていった。
「えっ!?ハルさん?もしかしてハルさんですか!?」
空に消えるちはやの声。風が舞い上がり、月の光に照らされた紅葉が美しく輝く。
紅葉の葉が一枚、ひらひらと舞い、旅館の向かいを流れる川へと吸い込まれていく。川面がきらりと光を放ち、まるで誘われるように、ちはやは川辺へと歩み寄った。そこには、一枚の紅葉がゆらゆらと揺れながら流れていく。しかし、それだけでは終わらない。二枚、三枚と、次々に紅葉が増えていく。一陣の風が吹き抜け、ちはやはそっと目を閉じる。そして、ゆっくりと瞼を開いたその目に飛び込んできたのは、川面を埋め尽くすほどの紅葉の絨毯だった。一枚一枚の紅葉には、ハルの思い出が鮮やかに染め上げられ、幻想的な輝きを放っている。
「わあ、すごい!綺麗」
川を流れる紅葉を一枚ふと触れると、ちはやの脳裏に赤子のちはやがハルの手を握るシーンが流れた。
「ハルさん、また、会いに来てくださいね」
紅葉の葉がちはやの肩に乗る。
《完》
一話からここまでお付き合い頂いた方、ありがとうございます。
お楽しみ頂けたでしょうか。
拙い文章力で、イマイチ自分の頭にある情景を文章にすることが出来ませんでした。
文章では魅せられませんでしたが、自分の強みは構成と展開で、その点でエンタメをお届けできたら良いなという気持ちで投稿を決めました。
作家の方って本当にすごいですね。近々、時間あるときに改稿と、活動日記に後日談的なのをアップできたらいいなと思っています。
もしお気持ちが向けば、コメントなど頂けたら泣いて喜びます。
ここまで読んでくださって、本当に本当にありがとうございました。
私も雀部ハルのように、日々の移ろいを大切に、そして穏やかに、丁寧に生きていきたいです。
天音リツ