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黒い安息の日々 【貴族令嬢シリーズ】

貴族令嬢 vs クトゥルフ神話


私は本作を、ホラーとして投稿すべきか悩んだ。やむなき理由により部分的に創作を含むからである。しかし、真実を語りたくて書いた以上、エッセイとして世に出す覚悟を決めた。


事実を妄想として扱われることに耐えられないからだ。


余りに恐ろしい出来事で、創作を加えないと書けない私の心情を察して頂ければ幸いである。



執筆者 貴族令嬢・黒い安息日



◇◇◇



2024年08月21日 09時42分


兵庫県 明石市 明石川河口 漁業の町、ウォノターナ。



引っ越して間もないこの町で、貴族令嬢・黒い安息日は新作のホラー短編を執筆し、なろうに投稿した。漁業の町、明石に相応しくクトゥルフ神話をモチーフにした作品は、彼女の才能に相応しい低評価とわずかなアクセス数で、特に誰も気に留めることなく流されていった。


引っ越したばかりとはいえ、黒い安息日にとって明石市はなじみ深く、かつて近隣に住んでいたこともあって周辺地域の地理には明るかった。明石城に匹敵する自宅を出ると、目前に広がる商店街。海の香りと新鮮な魚が町を彩るウォノターナは、冒険者や買い物客で活気にあふれている。


かつては魚屋の前で呪文を唱える魔導士が名物だった。



()っすいで()っすいで奥さん()うてや()うてや……」



声を枯らし尽くし、北斗の拳の次回予告を叫ぶ千葉繁のような発声で、絶え間なく呪文詠唱を続ける魔導士たち。あの雰囲気好きだったんだけどな。今はすっかり息を潜め、爽やかな店員たちが明るく魚を売っている。なお、呪文の効果は多少の値引き。


明石と言えば玉子焼き。明石焼きとも呼ばれるタコ焼きのルーツである。ソースで味付けをするタコ焼きとは違い、出汁 (スープ) に浸して食べるのだ。生地も全然違う、卵入りで柔らか。滅茶苦茶美味い。難点は値段、いくらでも食えるが腹より財布が限界を迎えるだろう。


なお、卵焼きを明石焼きと呼ぶのは問題ないが、タコ焼きと混同されると明石市民の顔色が変わるので厳重に注意が必要。それは広島市民を前にお好み焼きを広島焼きと呼ぶが如くである。広島の人にマジで怒られたことがある筆者が言うのだから間違いない。


黒い安息日は、付き従う老執事に声をかけた。



「爺や、あれをご覧になって」


「相変わらず繁盛しておりますなあ」



黒い安息日が視線を向けたとある店の行列、そこは明石市民なら知らぬ者なき名物を販売している。派手な外観の目立つ店、しかし彼女は知っていた。この店の社長の娘のことを……



◇◇◇



かつて世俗を知るために一般企業で働いていた黒い安息日の職場には、少々気に障る女が先輩社員として配属されていた。彼女は自分が大企業の令嬢で昔はヤンチャなワルだったと事あるごとに吹聴し、テンプレートな武勇伝を語っていた。


それなりに武道の心得がある黒い安息日は見抜いていた。彼女はヤンチャどころか喧嘩すらしたことがない。黒い安息日もたいした腕は持たないが、成人式で一般人の父兄に紛れる刑事を見抜く程度の目利きは持つ。戦える人間かどうかなんて、すぐにわかるのだ。



注釈)成人式で一般人の父兄に紛れる刑事

隠れてますよ、成人式の父兄に紛れて刑事さんが。ちなみに暴れる若者を警戒しているのではなく、政治や宗教のカルト団体による勧誘を調査しています。なお、見抜くポイントは体型と姿勢、特に首と背筋。



ある日、黒い安息日が職場近くの喫茶店で昼食をとっていると、気に障る先輩が正面に座った。一人で喋る先輩に適当な相槌を打って食事を進めていたが、先輩は店員がイケメンだとはしゃぎだした。そして彼女は店員の気を引きたいのか箸袋に



「いつも頑張ってるね ☆ すてき」



と書いて喫茶店を出た。きっついわ! しかも先に出るな! 仲間や思われるやないか! 今でも強烈に覚えているエピソードである。しかし、そんな記憶を上回る大事件が起きた。


気に障る先輩が無断欠勤したのだ。しかも連絡が取れない。数日が過ぎ人事部が家族と連絡を取るも、彼女とは親族だが一切関りが無いと返答してきた。それもおかしな話だなと社内で噂になっていたところ、二週間後だったか緊急で部署の人間が集められ、幹部が告げた。



「〇〇さんは窃盗目的で家宅侵入したところを住民に取り押さえられ現行犯逮捕、なおマスコミへの対応は……」



気に障る女先輩は嘘つきじゃなかった。本当にワルだったのだ。後で知ることだがピッキングツールを所持しており、空き巣の常習犯だったのだ。明石であの店を見るたびに、黒い安息日はその事件が強烈な記憶として呼び起こされるのだった。


詳細がわからぬよう意図的な捏造は加えているが、基本的に実話である。話は盛っていない、むしろ削っている。



◇◇◇



2024年11月12日 20時34分



黒い安息日に感想が送られた。見れば8月に投稿したホラー短編に、なろう古参の卓越した詩を創作されている作家さんが書いてくださったのだ。時々感想を書いて頂いている方だったので違和感はなかったが、ふと見たホラー短編のアクセス数に衝撃を受けた。


誰も閲覧していなかったそのホラー短編が、急激にアクセスを伸ばしているのだ。それも一瞬ではなく3日間。ひとり、ふたり、さんにん……増減はあれど24時間ほとんど途切れることなく140人以上がアクセスしている。


そのホラー作品の内容は……なろうでアクセス欲しさにクトゥルフ神話を題材にしたホラー小説を書いた主人公が、インスマスの影に触れてしまうメタ的なものである。


インスマスとはクトゥルフ神話に出てくる架空の町、魚と混ざった顔を持つ住民が人類を侵食する「インスマスの影」という作品に登場する。


黒い安息日は震えた。

これは創作だ。

自分で書いたホラー作品だ。

クトゥルフ神話も創作だ。

ラヴクラフトが書いたホラー作品だ。

インスマス顔なんて存在しない。

魚の顔なんてアジア人嫌いなラブクラフトの創作だ。


ここは明石、インスマスの町じゃない。

何の共通点も無いじゃないか。


漁港。

生臭い匂い。

日焼けした漁師。

失われた明石原人。

朽ち果てるタコフェリー。

名状しがたい八本足の軟体生物……


明石市立文化博物館では、表立って展示できない宝飾品があるという。それは黄金に輝く冠のような丸い物体で、玉子焼き (明石焼き) をタコ焼きと呼ぶ者に災いをもたらすと噂されている。なぜか明石だんご協会が大金をはたいて買い取ろうと申し出るが、博物館は拒否しているとか……



黒い安息日は絶叫した。



「いやあああああああああああああ!」


「お嬢さまあああああああああああ!」



老執事の制止を振り切り

黒い安息日は家を飛び出した。

黒い安息日は大声で叫び続けた。

黒い安息日は(うお)(たな)商店街を駆け抜けた。



「いや! いや! いやだあああああああああ!」



絶叫しながら商店街をドレスで駆け抜ける貴族令嬢・黒い安息日。その異様な光景に警察どころか自衛隊が呼ばれそうなほどの緊張感が走る。上空にはF-4。店の裏から隠居した魔導士が店頭に飛び出してきた。唱えられる呪文詠唱、それは……



イア イア クトゥルフ フタグン

イア イア ウオノターナ


イア イア クトゥルフ フタグン

イア イア ウオノターナ



◇◇◇



2024年11月14日 14時43分



……急なアクセスの急増は、偶然にも優しい読者が入れてくれた評価ポイントの時期が重なってしまい、作品が日間ランキングに入ってしまったからだった。


こんなことで騒ぐなんて、ほんとバカなことしちゃった。

あとで明石署にも謝りに行かないと。


へへ、ほんとバカだよ。

明石はインスマスの町なんかじゃない。


もっと素晴らしい

もっと偉大な深きもの

ショゴスを称える町なのだから!


(Eh-ahhh-ah!)

いいいあああぁぁぁあああぁぁぁああああぁああ!



◇◇◇


P.S.

急にアクセスが増えた昔のホラー短編のタイトルは教えない。嬉しいけど怖いから。探すなよ? それより貴族令嬢料理大会を読みましょう。必死で書いてるのにアクセスが少ないから。




【後書き】



2024年 11月15日 07時35分 カテゴリー修正


本作は冒頭で「エッセイとして世に出す覚悟を決めた」と書いておきながら、間違って童話カテゴリーで投稿してしまい、筆者・黒い安息日はどえらい恥と迷惑をかけてしまった。


ゆえに冒頭で謝罪と注意喚起を行っていたが、作品としては読みにくくなるので割愛した。


とはいえ、せっかくの恥ずかしい謝罪文は自戒として記録すべきと考え、この後書きに移動してもらった。時間があれば、ぜひご覧いただきたい。



───────────────────────



【重要】本作は童話ではありません


超大バカ筆者のミスにより誤って童話カテゴリーで投稿してしまい

恥ずかしいことになっております


童話と思われた方はただちにブラウザーバックして

他の作家さまによる素敵な作品をお読みください


本当に本当にすいません



◇◇◇



※評価ポイント下さった方へ


まさか投稿者がこんな大ボケをかましているとは夢にも思わなかったでしょう

ゆえに悪いのは全て筆者・黒い安息日です

もし二度見してこの前書きにお気づきになられましたら

ぜひ星評価を下げて筆者に罰を与えてください


可能なら評価マイナス機能を実装してほしい……

穴があったら入りたい……



◇◇◇



※童話を愛する皆様へ


筆者はご覧の通り相当トリッキーな作風ですので

評価下さった方も「ああ、コイツ的には童話なんだ」とお考えになったのです

そもそも本作をエッセイで投稿するつもりだったことも勘案して頂けると

筆者の狂人っぷりもうかがえましょう

そして評価者の思い違いもご理解いただけるかと存じます

悪いのは全て筆者です、本当にすいません



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