表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

『忌み子の町』

少女に続いて山道を進む

身軽な足取りですいすいと進んでいく小さな背中

運動神経に自信がないわけではないのだが、子供についていくのがやっとの有様だ。


「君はよくこの辺りに来るのか?近くに住んでるのか?」


「ここに来たのは偶然、住んでるのは・・・ほらあそこ」


導かれた丘の上に立つと眼下に景色が広がる、

森を抜けた先には木の杭の壁に囲われ背の低い家屋が立ち並ぶ街並みが見える。

いよいよ自分が異郷の地へ迷い込んでしまったということを認めざるを得なかった。


「ようこそ、ここが『忌み子の町』だよ」


===================================


町に入る前に壁の外に建っている小さな小屋になぜか案内される。


「ここは昔、木を切って仕事してた人が使ってた小屋」


「町に入っちゃまずいのか?」


「クロウみたいな『蘇生者』って結構トラブルの元になったりするからねぇ」


なにしてくれてるんだ蘇生者、やけに評判悪いな勘弁してくれ。


「それに――」ハクアがフードを外す

フードの下には両サイドで結んだ肩ぐらいまで伸びる栗色の髪に

少し吊り目の淡い緑色の瞳をした幼い面影の強く残る少女の顔があった。

なにより目を引いたのは・・・


「なにぃ?もしかしてクロウ見惚れちゃったのぉ?」


とニヤニヤしながらこちらを見やる。


「いや・・・その耳、えと・・エルフってやつなのか?」


感情に合わせてピコピコ動いていた耳を指さす。

明らかに人間のものに比べて尖っていて長い、創作物で見たことのあるそれそのものだ。


反応が気に入らなかったのかハクアは頬をすこし膨らませて


「違うわよ、あんな奴らと一緒にしないで・・・ほら、あー・・・」


大きく開けた小さな口から、尖った犬歯がのぞく。


「ほあ、みへる?・・・あたしは獣人の血も入ってるの」


「わかったよ、ハーフってことだな?」


「そ。純血種からはじき出された望まれぬ血の者が集まるのがこの『忌み子の町』」


「だから純血種のクロウが中をブラブラしてたら身ぐるみ剝がされちゃうんじゃない?クロウって弱っちそうだしぃ」


言い返そうにもこちらに来て早々あんな醜態をさらした以上ぐぅの音もでないのであった。


「といってもそれじゃあ盗られるものもないかなー?」


「はあ?あるが?それくらい!」


愉快そうにケタケタ笑う子供相手に意味の分からない強がりを発動

泥だらけのズボンのポケットをひっくり返す。


おしゃかになった携帯端末、皮の財布、合格祈願のお守りが藁の上に転がる。

金目の物といったら数千円ほど入った財布だろうか、


「クロウのいたところのお金?んーここでは使えないと思う、物々交換してる人のが多いかなぁ」


電子機器はここでは価値があるのかも素人にとってはまったく未知数だ。


「便利なのこれ?え?壊れて使えない?じゃあいらないね」


どうやら物取りに会う心配はなさそうだ。


「なぁに?これ」


ハクアがお守りを拾い上げる。


「お守り、神様にお願いするときにもらうんだよ。俺受験生だったから親にもらったんだ」


「親・・・・?」


「結局無駄になっちまったなぁ・・・」


「はい」


手にしていたを守りを返された。

耳がさっきと違って垂れている、どうやら気を使わせてしまったかもしれない。


なにか話題を変えないと、と思考を巡らせる。


「あー・・・ここ以外だと町みたいなところはないのか?」


「歩いて行けるほど近くにはないよ、さっきも言った通りあたし達は純血種と仲が悪いから」


バカか俺は咄嗟に出した話題の選択を間違えた、

彼女らにとっては自分たち以外との関係は相当デリケートな問題なのかもしれないのにと後悔する。


「じゃあ・・・どこに行きようもないな・・・」


「そだね。クロウみたいな人族がいる都市があるのは聞いたことあるけどあたしは行ったことないから、

わかんないや」


「俺が勝手にここにいるのは大丈夫なのか?」


「もう誰も使ってないから大丈夫だと思うけど・・・」


ハクアは立ち上がり藁を落とすと


「一応、ここにいてもいいか確認してきたげるよ」


と扉に向かう。


「あ!ハクア、ごめんな。ほんとにありがとう、助かったよ」


命の恩人にせめてもの感謝を告げる、彼女がいなければどうなっていたかわからない

返せるものなんてそれくらいしかなかった。


立ち止まりこちらを向く耳がヒコヒコと動く。


「これあげる、いまよりマシだと思うから」


纏っていたボロ布を放ってよこすと軽い足取りで風のように去っていった。


===================================


町の門に立つ番にジロりと横目で睨みつけられながら門を抜ける。

子供であるハクアはたいした仕事ができないため大人からは白い目で見られがちだ。

自分を追いやった純血種は嫌いだが、かといってここに住む混血種が好きというわけでもない。

言ってしまえばハクアは生まれてからこの方、自分を蔑ろにするこの世界そのものを好きではない。


だからあの時、なにか食べられるものを調達するために踏み込んだ森で

虫の知らせか行き逢った異世界出身の『蘇生者』を助けた。

自分を不要な物として見ることのない眼差しを求めていた。


他人に自分だけの名前を呼ばれたことが嬉しかった。


「おい!役立たず!」


乱暴な言葉が小さな背中に浴びせかけられハクアがビクッと足を止める。


「はい・・・」


背の高く筋骨隆々の右側頭部から角をはやした半獣人の男

ほかの住人よりも多少強いという理由でここでは幅を利かせている顔役だ。


「なにを急いでどこに行きやがる、お前俺に渡すもんあんだろ」


この男は弱い立場にある者から用心棒代と称して定期的に金品を徴収する。


「ご、ごめんなさい。今日はなにも採れてない・・・です」


「はあ?一日歩き回ってなんも採れないって役立たずにもほどがあるだろうよ」


「明日には・・・必ず」


「ったくよぉ、行き場のないお前に住む場所くれてやってんだ。恩を仇で返すなら追い出すぞお前」


足元の砂を蹴飛ばしてハクアに叩きつける。


「・・・・・・・・・・あ、あの!」


立ち去ろうとする男の背中に声をかける


「あん?」


「外の小屋なんですけど―――」


顔役に捕まってしまった以上報告はしておかなくてはいけない、

勝手なことをして黙っていたのであってはどんな目に合わされるかわかったものではない、

ここを追い出されればハクアの居場所などどこにもない。


「―――へぇ『蘇生者』ねぇ」


「はい・・・あそこなら誰も使ってないし」


「親しくなったんならお前、そいつからなんか使えそうなもん盗ってこいよ、それで今回は許してやるわ」


ここまでお読みくださった方、ありがとうございます


切に感謝申し上げます。




「面白い」や「続き読みたい」と思ってくださったなら、




↓の【☆☆☆☆☆】を押して




評価してくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ