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祈り

土と草の匂いが鼻を突く


「うぅ・・・」


寝起きのようなけだるさを感じながら

硬い地面に寝ていたためか節々が痛む体を起こす。


木々が生い茂っている、森の中だろうか。


「どこだ・・・ここ・・・?」


自分の住む都市ではここまで自然豊かな場所は今まで見たことはない

半覚醒した頭で疑問を抱えながらとりあえず足を進める。


「なんでこんな場所でこんな格好で眠っていたんだ」


歩きながら土をはらっていると制服の腹部分が裂けていることに気づき。


「そうだ・・・俺・・・刺さ・・れた」


おそらく意識を失う直前のことを思い出す。

見ると服は裂けた部分以外にもボロボロのひどい有様だ

だが自身の体には傷ひとつない。


わけがわからない。

もし医療機関に運ばれて意識がないうちに完治したというのならなぜそのままの格好なのか、

そもそもこのような人気のない場所に放置されていることも説明がつかない。

あの惨事が夢の中の出来事だったとも思えない、この服装の有様が凄惨な出来事を物語っているし、

なにより地獄のような痛みの感触がいまだ脳にこびりついていた。


なんでこんなことになってしまったのだろう、

友人だと思っていた三浦 陸(みうら りく)に知らないうちに殺したいほど恨まれていたとでもいうのだろうか。

少なくともそこまでされる覚えが自分にはなかった。

それにあのときは逆光だったためよく顔が見えなかったし

もしかしたら勘違いで別人だった可能性だってある。

どちらにせよどれだけ考えたところで答えは見つからないままだった。


九朗はしばらく歩いたのち行きついた広場で歩みをとめた。

なんの知識もない人間が山を歩き回るのは自殺行為だと聞いたことがある、

ここで助けを待つのが賢明なのではないか

ボロボロの袖で額の汗をぬぐい、ズボンのポケットから携帯端末を取り出す、


「・・・最悪だ」


画面はものの見事に割れており、なんの役に立たない板と化していた。


遭難が確定した。


====================================


それから小一時間が経過した、状況は変わらず絶望的だ。

連絡手段もサバイバルスキルも持たないただの高校生がどうすればいいのか、

このままだとやはり死んでしまうのだろうか。

餓死だろうか?衰弱死だろうか?あの時よりも苦しい思いをするのだろうか?

馬鹿なことばかり考える。

よくない、こんなことばかり考えてたら頭がおかしくなりそうだ。


なんの目的もなしに気を紛らわせたくて広場を歩き回ると

広場の一画地面が少し盛り上がって土の色が他とは違っていた。

興味本位からすこし掘り返してみるとそこには。


「・・・・・・うわ」


なんの動物だかわからないが動物の骨が大量に埋まっていた、

なかには肉片のついたものもあり嫌な臭いを発している。


もしかしたら誰かが埋めたものだろうか?

だとしたら近くに人がいるのではないか

希望的観測の思考を巡らしかけた瞬間背後から林をかきわける音が聞こえた

若干の安堵を胸に振り返るとそこには。


全高は自分と同じくらいの化け物じみたサイズのイノシシが鋭利な牙をむけ鼻息荒くこちらに向かって猛然と突っ込んでくるところだった。


「―――は?」


激突する。

牙が体にめり込む、

体重が軽く倍以上あるであろう巨体の体当たりに九朗の体が物理法則に従ってゴミくずのように吹き飛ぶ。


「―――――――ッ」


肺から酸素が根こそぎ押し出され悲鳴すらあげられない。


周りの景色が高速で流れていく

勢いそのままに受け身も取れず思いっきり蹴飛ばした小石のように地面をバウンド

たぶん急な坂か崖だったのだろう、どこまでも転げ落ちていった。


痛みに晒されながら九朗は思う、

なんでこのような思いばかりしなければならないのか

自分がなにをしたというのか

誰でもいいから助けてほしい。


救いを求めながら意識は再び闇の中に飲まれていった。

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