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夜更けの結末


「おはよ」


「おはよう・・・」


目を覚ますと目の前にはハクアの顔があった、というかこっちにきてから目を覚ますときは度々この顔が覗いているなと思いながら身を起こす。


「もう起きるの?」


「ああ、子供の膝枕とか誰にも見られたくないわ」


「まーた格好つけてるの?」


「つけてない」


ニヤニヤしてるハクアをよそに周りを見回す、まだラウボカの家屋の中のようだ。


「そういえば、あれからどうなった?」


「・・・それが」


「とりあえずは解決したわよぉ?」


両肩を掴まれ後ろから声が聞こえた。

2人揃って飛び跳ねるほど驚いてしまった。


「アクライシャさん!?」


予想してなかった人物が立っていた。

以前のような容姿ではなく紫のドレスを纏っている。


「お疲れ様、ふたりとも」


「どうしたんですか?出てこれないんじゃ・・・」


「私が出る必要ができたってこと、ほんとはあんまり出てきたくないんだけどねぇ」


と、笑いながらクロウの黒髪を撫でまわしている。

ハクアが目を細めてこちらを睨み始めた。


「すいません、思ったより大ごとになっちゃったみたいで」


「いいわよ。ただ大ごとになるかどうかは当事者であるあなた達の答え次第なんだけどね」


「答え・・・とは?」


「あなた達は力を役割に権力を持つ『用心棒のラウボカ』を力をもって制した」


クロウは意識がなかったがハクアと共にここにいるということはあのラウボカを最後の一手で打倒したということなのだろうか。

当のラウボカ自身はこの場には見当たらなかった。


「この町にとってふたりは『用心棒のラウボカ』に勝る有用性があることを証明したということ」


「それってつまり・・・」


「ラウボカに取って代わってその役割を担うつもりがある?」


「ないです」


即答した。


そもそも自分は町の人間ではないし、今回上手くいったのだって根拠もよくわかっていない奇跡みたいなものだ、腕っぷしをもって人をまとめることなんてできるわけもない。


それに一人でやったわけでもない、とハクアのほうを窺がうとハクアはブンブンと勢いよく頷いている。


「わかったわぁ。でもそれで終わり・・・ともいかなくてね」


・・・それもそうだろう、ラウボカのやり方を認めるつもりはないが少なくとも必要な人材ではあったのだろうとも思う。それを自分勝手な理由でこの町の秩序を乱したんだ、なんらかの制裁を受けることになってもおかしくはない。

仕方のないことなのだ、傍らのハクアを見ると不安の色を浮かべた表情でクロウを見上げている。


「なにか勘違いしてなぁい?とくに坊やをどうこうしようとは思ってないわよ」


「え?制裁なし?」


「ないわ」


「市中引き回しも打ち首獄門も?」


「私にどんなイメージ持ってるの?」


安心で肩の力が抜ける。


「私が確認したいのはラウボカから権利ではなく何を得たくてこの事態になったのかってこと、ただ単にラウボカを痛めつけたかったっていうのならそれでもいいんだけどぉ」


「じゃあハクアの分の清算を・・・」


「もっと我がまま言ってもいいわよ中途半端よりずっとやりやすいから」


「あー・・・なら外の小屋に住む権利ともう少し住めるようにしてほしい、ついでにもっと下の人に優しくしてやって・・・とか?」


「承ったわ。そのくらいなら許容範囲よラウボカとは既に話はついてる、もう他にはない?」


「そういえば、アクライシャさんにもらった針」


「これ?」とアクライシャは金の針を取り出した。


「これは魂をずらす針、欲しい?安くしといてあげるわよ」


聞いてもよくわからない代物だった。

途中からのハクアのあの強化状態の理由かもしれなかったが。


「いや、やめときます。もしかしたら借りに行くかもしれません」


「ふふ。じゃあ私はあまり外にいたくないからこれで、お疲れ様」


「はい、助かりましたほんとに」


アクライシャは闇に姿を消した。


==========================================


喋る者がいなくなった半壊した家屋は静寂に包まれている。

ここの住民はすでにどこかへ避難しているようだ。

2人が肩を並べて座っている。


「いつアクライシャと知り合いになんてなってたの?」


沈黙を破ったのはハクアのほうからであった。


「ここに来る直前、この場所を聞きたくてな」


「だよね、まぁここで一番物知りなのはあの人だろうけど一番怒らせないほうがいいのもあの人だよ、怖いし」


「わかる」


今日の出来事を通して2人の会話の中からよそよそしさはどこにもなくなっていた。


「逃げてって言ったのになんで逃げなかったの?格好悪いから?」


「茶化すなよ、否定はせんけどさぁ」


「別に・・・助ける理由ないじゃん。あたし、クロウの物盗ったんだよ?」


ハクアの表情に影が差す。


「お前はたいしたことしたつもりはないかもしれないけどさ。こっちに来て死にかけてたところに初めて助けてくれたのがハクアだったんだ、財布のひとつやふたつ分以上の借りがあると思ってる」


クロウは「それに・・・」とポケットの中から小さな包みを取り出す。


「その分の代わりは貰ってたしな」


ハクアは大きく瞳を見開いている。

とくにリアクションをされないのがなんとなく気恥ずかしくなってきたので干し肉を取り出して齧る。

そういえばこっちにきて初めてのまともな食事だった。


「食べるか?」


ひとつ差し出すと顔を寄せ干し肉に齧りついた。小動物のようだ。

腕の火傷が痛いのだろう。


「んく・・・これも作戦?」


「なにが?」


「食べちゃったから借りなくなっちゃったよ?」


「ははっ、確かにな。じゃあ今後いろいろと協力してもらおうかね」


「あたし、高いよー?すぐ今の分だけじゃ足らなくなっちゃうんだから」


「そんときはまた俺が返すわ・・・さて」


瓦礫から立ち上がり尻をパンパンとはたく。


「もう帰ろうぜ。今日はよく寝れそうだ」


ハクアも同じように立ち上がる。


「うん」


2人横並びで帰路につく。


「クロウはあたしがいないと困っちゃうからね~」


「はぁ?あんまり調子に乗るなよ~?」


ハクアが走って前に出る。


「一人だと寝るときにまためそめそ泣いちゃうもんね~」


「・・・・は?」


ハクアの前で泣いた記憶などないのだが。

記憶の糸を辿る―――


「・・・・・・・あ・・・」


前を行く振り返り笑っている。


「お前ーーー!」


格好つけたいお年頃の男児として一番見られたくない姿を見られてしまっていたのだった。


ここまでお読みくださった方、ありがとうございます


ここでこの章の区切りとなります。


次回以降は別の章になります、

応援していただければ嬉しい限りです。


ここまで見てくださった方

切に感謝申し上げます。




「面白い」や「続き読みたい」と思ってくださったなら、




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