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死の門

「スーーーッ  寒い寒い・・・」


春の迫る寒空の下、二宮 九朗(にのみや くろう)は冷たい空気を吸い呟いた

共に受験戦争を走り抜けた気の置けない学友たちとの祝勝会の帰り道を気楽な足取りで進む

ポケットの中の携帯端末が振動する。


「昼、食べ過ぎたかな・・・」


届いたメールの内容は母親からの夕飯の通達

合格祝いとしてご馳走を用意してくれるらしい

胃のあたりをさすり腹具合を確かめながらメールに目を通す。


自分なりには頑張って勉強したつもりではあるが合格した学校は特に偏差値が高いわけでもなく

言ってしまえば良くも悪くもないごく普通の進学先であった。

一人っ子なせいもあってか父親はともかく母親は甘やかし気味に感じる

もう高校も卒業間近だというのにちょっとやめてほしいと思う、

とはいえ生活もかかる費用も両親に頼り切りな身分なくせにそんな文句もお門違いではあるのだが

最近になってそんな自分は恰好が悪いな、なんて思うようになった。


そのまま帰宅するつもりだったであったが

まだ夕飯どきには間があるため、軽い運動がてら少しぶらついてから帰路につこうと予定変更

日を背に浴びて自宅とは反対方向への歩道橋に足をかける。


階段を登り切り端末の連絡先を流し見する

家族、陸上部の先輩後輩、クラスメイト、バイト先居酒屋と

まるで女っけのないリストに軽く目を細める

先輩を呼び出すのなんて偉そうなことはできないし、後輩も引退した先輩が強要しているみたいだからやめておこう

同級生は中にはまだ受験中の者もいるため無し

先ほど解散した学友たちをまた呼び出すのはすこしだけ気が引ける

とはいえ交友関係も特別広いわけでもないため大した選択肢は残っていない


「・・・・・・・・ん?」


結果諦めようとふと視線をあげると見知った制服が近づいてくるのに気付く

いましがた眺めていた連絡先リストに載っていたクラスメイトで

小中高と近隣に配置されているため小学校からの付き合いのある一人だ

受験が近づいてきたあたりから彼とはあまり話す機会もなくなってしまったように思う。


「おー、久しぶり。」


軽く右手をあげて声をかける

あちらもこっちの存在に気が付いたのだろうか足取りが早くなり小走りで向かってくる


「・・・ちょっ・・・!」


そのままの勢いでドンと正面からぶつかる

いきなりのことで咄嗟に反応できなかった

彼は昔から割と大人しいタイプという印象があったためにこういった悪ふざけするというのは少し意外だった


「三浦、お前なにきゅうに――――」


先の言葉が続かない、唐突に感じた激痛に息をのむ。

今までの短い人生で感じたことのない痛みが胸の下あたりからジワジワと広がっていく。


「おっ・・・ぐっ」


見ると腹部から深々と突き立ったであろう金属の物体が生えている。


(なんとかしないと)


どうにかして痛みから逃れようと状況を理解しきれない脳をそのままに三浦を引きはがそうとする。


「おおああぁぁあああッ」


自分のものか相手のものかわからない咆哮が響く

更に強い衝撃に押され震えていた脚がたたらを踏む

背中のあたりにおそらく歩道橋の手すりにぶつかる感触

直後、天地がひっくり返り浮遊感に包まれる――


凄まじい衝撃が全身を打ち据える


「・・・!!」


赤く染まった視界にはコンクリートの地面が映る

不幸中の幸いだったのが全身を襲う新たな痛みが先ほどまでの激痛を和らげ多少なりとも冷静さを取り戻したことだった。


状況をかろうじて理解する、

歩道橋から車道に落ちたのだ。

ということは―――


「ぁ・・ぶな・・・」


一瞬でボロボロになった体を動かし

なんとか首をあげる目前に大きな鉄の塊が迫る


水が爆ぜるような音が聞こえた瞬間、赤かった視界が黒になり


「ぶ」


終わった。


ここまでお読みくださった方、ありがとうございます

切に感謝申し上げます。


「面白い」や「続き読みたい」と思ってくださったなら、


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