いたわ
いじめられた。
また、いじめられた。
いじめられる度に、別の小学校に来ている。
なのに、ずっとだ。
次の学校は、大丈夫だ。
きっと、きっと。
「転校生を紹介する。佐藤くんだ」
「佐藤です。よろしくお願いします」
分かる。
何度も経験しているから、分かる。
児童たちの、目付きが違う。
優しさに溢れている。
ここでは、いじめられないと確信した。
「じゃあ、一番後ろの中央の席な」
「はい」
席へと向かった。
歩いている最中も、あたたかい拍手が鳴り止まない。
柔らかい視線も、感じた。
「どうぞどうぞ」
「あっ、どうも」
ここは、高級レストランかっ!
そう、ツッコミを入れてしまった。
どこの小学生が、イス引きなんてするんだよ。
逆に怖くなった。
席の左右の女子が、うちわで扇いでくれているし。
『いじめ』はされてない。
でも、これもまた苦痛だ。
いじめの進化系か。
いじめの最新形態なのか。
いたわってくれているから、これは『いじめ』にならって『いたわ』と呼ぼうか。