第8話妹には何かあったらしい
「待ってください!!!!」
突然誰かの声があたりに響き渡り、その声の主の方を振り向くと、そこにいたのは今まさにすぐそこで魔法の鎖に繋がれているはずのシロの妹だった。
シロの妹が、2人?
「おい、これはどういうことだ?」
「私は精神体ですーー肉体は見ての通り未だに赤いあの鎖によって自由を奪われています」
確かに彼女の姿は若干透けているようで、彼女の後ろの背景がうっすらとその身に写っていた。
「あなた方は、何をしにここえ?」
俺はここにきた理由とこれまでの経緯を説明した。
「なるほど、あなたは魔王様だったのですねーークロのご無礼をお許しください」
クロというのはやはりこのダクロスのことのようだ。だいぶ可愛いと言うか、ペットのようなあだ名だが。
「いや、いいーーそれよりも、シロがお前の兄というのは本当か?」
「はい、そうですーー正直兄にはもう2度と会えないと思っていましたーー兄はこの山にはきていないですよね?」
「いや、あいつはなぜかこの山を登るにつれて弱っていってな。そこであの小僧のパンチを喰らってあそこで伸びている」
俺は伸びてリーズに治療してもらっているシロの方を指さす。
「に、兄さん!!!」
その様子を見るや否や、ノルはシロの元に駆け寄って体を揺すりながら兄の名を呼び続けた。
「兄さん!! 兄さん!!」
声が聞こえたのか、兄弟の絆の奇跡なのか、シロはうっすらと目を覚まし、妹の顔を見るや否や、その目に涙を浮かべた。
「ノ……ル?」
「うん、兄さんーーノルだよ?」
「ノル!!!!」
兄弟はその再会を心から喜び、お互いに抱き合った。2人の目からは、大量の涙がこぼれ落ちている。
そしてシロを回復しているリーズまで
「兄弟の再会、なんて泣けるのかしら」
とか言ってもらい泣きしている。
「ノル、よかったーーよかった……ずっと死んと思ってた」
「まだ生きてるよーー私」
「でも、お前なんでこんなところに?」
「それは、皆さんにも聞いてもらうわーー少し話が長くなるけど」
「魔王様?」
リーズの顔には聞きましょうと書いてあった。
「いいだろう話すがいい」
「ありがとうございます魔王様ーークロ!!あなたも聞いて?」
「あぁ!? なんで俺がぁ?」
「お願い」
ノルの本気の表情を見て、ダクロスはしょうがねえなと言う表情で近場にあった小岩の上にあぐらで座り込む。
そしてノルは1500年前にに起きた出来事について語り出した。
「1800年前、今私たちがいるこの山に、一体の竜が生まれましたーーその竜の力は凄まじく、たった300年で成人した竜と同等の力を持つほどでした」
「そして1500年前のある日、その竜の力に目をつけたユーシア帝国の魔術師は、その竜の力を利用して敵国を滅ぼそうと考えましたーーしかし、竜を制御するには、魔法で作った赤い鎖が必要でしたーー」
「その赤い鎖を使うためには、条件がありましたーーそれは死神のエネルギーを喰らって動くというもの、私は必死に抵抗しましたが、未熟者取った私は謎の暗殺部隊に捕らえられ、赤い鎖の原動力になってしまいました」
死神であるノルを捕らえるほどの力を持つユーシア帝国の暗殺部隊。一体どれほど強いんだ?
「そしてこの赤い鎖は発動したら最後、エネルギーの供給元の死神が死ぬ以外に止める方法はありませんでした」
それはつまり、ノルはここから出られない。
「そして、その竜を利用して敵国を滅ぼしたユーシア帝国は、その恐ろしい力を恐れ、魔術師を暗殺し、赤い鎖の力で竜をこの山に封印したのです」
ノルは昔のことを話し終えると、クロの方を見てこう言った。
「クロ、私はそろそろ、あなたは自由になるべきだと思っているわ」
「は!?」
彼女言っていることはつまり、自分が死ぬことでクロを自由にさせるという残酷なことだった。
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