第1話神様がチート能力くれるらしい
目が覚めるとそこにいたのは神様を名乗る謎の青年だった。
見た目は20代後半くらいで、金髪の背の高いイケメンが、高そうな椅子に腰掛けて僕をニヤニヤしながら見下ろしている。
「いやー、まさか通り魔にナイフで刺された挙句に車にもひかれるなんてねぇ、異世界転生の才能あるんじゃない?君」
確かに異世界転生をするにあたって車に轢かれたり通り魔にナイフで刺されたりする事例があるけども。
まさか車にもひかれていたとは。あの時の全身の痛みはこれだったのか。
それのおかげで痛みがこれ以上長引かずに住んだのはよかった。
すると神は呑気な態度で話し始めた。
「いやー、実は僕この世界の神様じゃなくてここ最近できた新世界の神様なんだけどさー、その新世界で君がどうしても必要になったから、異世界転生させようと思って通り魔に君を殺させたわけよ。」
あの苦しみを味わうくらいなら死んだほうがいいとさえ思った苦痛がこんな奴に引き起こされていたのは正直おまえも刺されてまえとか思ったが、それよりも重要にして重大なワードを俺は聞き逃さなかった。
そう、異世界転生させるとこの神は言ったのだ。
異世界転移じゃないからあの苦痛はトラウマになったが、そんなことよりも異世界転生できるのなら、何かしらのチート能力という名なのは転生特典があるはずだ。
「転生特典? あるに決まってんじゃーん! 逆にこうでもしないとチートみたいなパワーあげられないから君を転生させたんだよ」
「まじですか?」
「まじ!」
「能力は?」
「まだ内緒だけど、全ステータスが規格外のレベルで高い」
俺は自分でも気付かぬうちに、おそらく人生で一番であろう大声で叫んでいた。
「っしゃーぁぁぁぁ!!!!異世界ライフでハーレムじゃぁぁぁ!!!!!」
俺の魂の叫びを痛いやつを見るような目で、ーーいや実際には痛い奴なのだが、そんな目で俺をみながら神は、説明を続けた。
「言っとくけど、転生したら体は君とは別の新しいものになるから、もうその顔は永遠に拝めなくなるけど、それでもいい?」
「はい、お願いします!!
「あと、なんかあった時のために一度だけ僕と更新できるようにしておいてあるからなんかあったら遠慮なく掛けておいで」
そんな話どうでもいいから早く行きたい。
「了解です。早くお願いします!」
俺が急かすと神様はめんどくさそうな顔をしながら俺の頭をちょんっと突いた。
すると突然当たり一面が渦を巻きながら歪んでいった。
「いってらっしゃい!」
意識が朦朧としていく
「あ、そういえば言い忘れてたけど、君の他に後で何人か送るからよろしくねー!!」
その言葉を最後に俺はまた気絶した。
◉
俺を優しく包み込んでくれるような心地の良い風が、俺の身体中に吹き当たり、俺の耳に囁くように草が優しくそよめく。
それは俺の第二の人生の始まりの合図だった。
俺はそんな大自然の歓迎を受けながら目を開けると、そこには、現代日本にはあるはずがないほどの広大な草原が広がっていた。
そしてその草原では、魔物やそれと戦う旅の冒険者などがちらほら見受けられた。よくみると魔法も使っているようだ。冒険者の手からは炎やら氷やらが飛び出している。
そして向こうには街に入る為の大門があり、奥には大きな西洋風の城がそびえ立っていた。どうやら世界観としては和風と言うより、昔の西洋風のようだ。
「とうとうきたぞ俺は、異世界に!!!」
思いっきり叫んだ。こんな大自然で大声で叫ぶことがこんなに気持ちいいこととは。
ゲームとアニメが友達の学校に行く以外ほぼ引きこもりの俺からしたらなかなか味わえない体験だ。
俺はこんな気持ちのいい世界でこれから無双していくのかぁ、楽しみだな〜
さて、まず最初にするべきことといえばやはりギルドに入って情報収集だな、そのためにも目の前にあるあの大きな城の街に行かなくては。
「「キャァー助けてー!!!!」」
女の人の悲鳴が聞こえた。
悲鳴の聞こえた方に目を向けると、金髪の綺麗な美人の冒険者が、今にも魔物に襲われて殺されそうになっている。
来たぞ、ここでこの女の人を助けたら一目惚れされるやつだ!
そんなことを考えながら俺はその可憐な女性の元え……魔物の前に立ちはだかる。
「大丈夫か!!」
俺は今までの人生で最大限に格好つける。
「よくもやってくれたなこの魔物め、この俺が貴様を片付けてやろう!!」
そう言って俺は、何も考えず飛び出してしまったが、どうしよう。
魔法の使い方がわからない。
とりあえずやけくそに炎のイメージを頭に思い浮かべて手を魔物に向けた。
「はぁぁぁぁ!!!!!!」
俺の掌に燃えさかる火の玉がどこからともなく浮かびあがる。この至近距離に火の玉があるのに不思議なことに全然熱くない。
「火のた……ファイヤーボール!!!!!!!!!」
ファイヤーボールは見事に魔物に命中。
ゴォォォォォォォォ!!!!!!!
ドガーーーーーーン!!!!!!!
と言う、けたたましいほどの轟音と共に、掌サイズだった火の玉は、魔物に命中した瞬間。異常なまでの爆発に変貌し、その魔物は爆発と共に跡形もなく消え去った。
ついでに後ろの方にあった大きな街も。
「え……あれ?」
目を擦ってもう一度街の方を見るが、やはり街は見る影もなく、代わりに街の面積の何倍にも膨れ上がった巨大な黒煙が、上空にもくもく浮かんでいる。
いや、あの、あれ? 異世界転生系のチート能力ってこんなに強いっけ? 無双というかこれ、無双したらした分だけ街をめちゃくちゃに破壊しちゃうタイプのやつじゃない?
金髪美女は目玉がこぼれ落ちそうなほどに目を大きく見開いてこちらをみている。
あ……終わった。 美女に引かれた。
「いや、あの、これは違うんだ!その、わざとじゃなくて、」
そうやって言い訳をしていたのだが、その美女は突然俺の両手に飛びついてきてこう言った。
「お待ちしておりました魔王様!!」
「ん? 今なんて?」
そう言った金髪美女の頭からは突然ツノと尻尾が生え始め、肌の色は桃色になり、あっという間に悪魔の姿に変貌した。
「お待ちしておりました魔王様と申し上げましたわ!!」
ん? 魔王?
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