第12話 ただの悪魔じゃないらしい
「正気か?」
「正気だとも。僕は憎んでるんだよ。ユーシア帝国を。君もユーシア帝国が邪魔だろ?もうすぐ勇者だってやってくる。利害は一致してるじゃないか」
なんなんだこいつは、突然手を組もうとしてくるなんて。信用できるわけが
「ならなんでリズねぇをさらったんだぁ!?」
クロの鋭い眼光がライを睨みつける。
「こうでもしないと交渉に応じてくれないと思ったからだよ。僕は君たちにリーズ返す。君たちはユーシア帝国の内部に詳しい素晴らしい仲間を手に入れる。それだけさ。悪い話じゃないだろう?」
「断る」
「は?」
「リーズを傷つけた貴様を仲間に入れることなどできん。」
あんな不安そうな顔をしたリーズを初めて見た。許せない。
「そっか。じゃあ仕方ないね。君たちの骸を帝国に持ち帰る以外、僕に道はなさそうだ」
「何!?」
その瞬間、ライは容赦なくリーズの胸にナイフを突き刺した。リーズの胸から大量の緑の血が溢れ出す。
「な……き、きさまぁ!!!」
「に……げ……て」
その言葉で俺が反射でその場から移動した途端、けたたましい轟音と共に、俺がさっきまでいた場所の空間が削り取られていた。
「あーあ、かわされちゃったか。一発目当たらないときついかもなー、」
「魔王様、これはやばいです。空間を削り取っています。死神の僕も、この魔法に当たったらまずい」
どうやら特殊暗殺部隊元四天王の名は伊達じゃないようだ。
「ま、交渉も決裂したし、もう嘘つく意味ないか。出ておいでー!!」
気づくとあたり一面氷で囲まれており、その向こうで大量の暗殺部隊の人間が僕らを包囲している。
「シロ、あいつの命を取れるか?」
「無理です、あいつの周りの空間が歪んでいて近づけません」
「ちっ、」
「クロ、お前は氷をなんとかしてくれ、シロは氷の外にいる雑魚どもを頼む。」
「了解!」
「言われなくてもやってやらぁ」
あたり一面の空間が避けていく。
くそ、どれだけ強い魔法を奴に放ったとしても、空間ごと削り取られてるんじゃどうしようも無い。なんとか奴の隙をつければ良いが。
「グハッ」
気がつくと空間の切れ目が俺の腹を抉り取っていた。俺はその場でうずくまり、回復魔法を自らにかける。
「それじゃあね、魔王さん」
これで終わりか。
「ライ!!」
女の金切声が聞こえた。見るとそこにいたのは、あの時氷漬けにされたミリアだった。しかし以前のミリアとは違い、体の半分色が青くなっている。
「ライ、助けて、あなたに頼まれて魔王を倒しに行ったら、こんなことに」
ミリアはゆっくりライのところに近づいていく。
「あー、誰だっけきみ、ミリ、ミリアか。弟の仇は取れたのかい?」
「取れてないわよ、見たらわかるでしょ。あなたがとってよ、弟の仇を」
「んー、それは無理だなーー」
「何故?」
「君、半分魔物化しちゃってるし、君の弟を殺したの僕だもん」
半分青くなっていたミリアの顔がさらに青ざめる。
「そ、そん……な……。だってあなたが、弟はあの街で魔王の魔法で死んだって」
「嘘に決まってるじゃないか。僕の名前ライだよ?君に嘘ついて反応を楽しんでただけだよ、あっはははは!!!」
「許せない」
「あ?」
「許せないわ」
朦朧とする意識の中、腹を刺されたはずのリーズからは信じられないほどの魔力が溢れ出していた。
「ただの悪魔が僕に勝てるわけないだろ?何を今更」
「私は確かに悪魔だけど。魔王四天王の一人。あなたなんかに負けないわ」
そう、リーズ悪魔である。しかしただの悪魔ではない。この世界の全てを見通す。そう、ラプラスの悪魔である。
「あなたの命はあと3秒よ」
「なんだ……グハッ」
リーズが持っている短剣が、ライの胸を貫いていた。
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