第10話乙女には禁句があるらしい
「あぁ!? なんだぁ、殺して欲しいのかこの死にゴミがぁ!!」
クロがシロを下から舐めるように睨みつける。
「死にゴミじゃなくて死神だよ〜? シスコンのクロちゃんはノルお姉ちゃんがいないとそんなこともわからないのかなぁ〜」
「ぐはぁっ!!!!」
クロ、シロのシスコン発言により40ダメージ。
「て、テメェだってシスコンだろうが!! ノル姉が言ってたぞ!? お兄ちゃんは過保護すぎて時々めんどくさいってなぁ!!」
「がはぁっ!!!!」
シロ、妹ノルによる昔のお兄ちゃんめんどくさい発言により40ダメージ。
バベル山を降り、新しくダクロスを仲間にし、残り一人の四天王を探している我々魔王一行だが、あれから毎日シロとクロの二人はこの調子なのである。
ちなみにクロとはダクロスのあだ名である。
「二人とも喧嘩はやめなさい!!」
「うるせぇババァ」
「バ!!!!!!!?」
リーズ、クロのババア発言により500ダメージ。
「バカ、き、貴様……なんてことを!!」
女性にババァは禁句だろうが!! 考えろよこいつは。
「あぁ!? んだよ厨二魔王がぁ!?」
「グヘェ!!」
俺、クロの厨二発言により30ダメージ。
あぁ、こっちだってやりたくて厨二やってるわけじゃないんだ!! とは言えない。
ゾク!?
ん!?なんだろうこの寒気は、今からよからぬことが起きるような。
「クロ君」
リーズのいつもの物腰柔らかい表情はどこかに消え、憎しみのこもった悪魔に相応しい冷たい声にクロの生存本能が働いたのか、体がビクッと反応して無意識にクロは後ずさる。
「どこにいくの? ほら、優しい優しいババァが、クロ君のことを呼んでるのよ? 早くこっちに来なさい?」
危険を察知した俺は、シロを連れて転移の魔法をで一瞬でその場から離れる。
「残念だが禁句を言ってしまったのはのはクロだ。可哀想だが生贄になってもらうほかない。」
「そうですね、魔王様」
俺とシロが一致団結している向こうで、クロは一人リーズの近くに取り残されている
「いや、あの……そのー、な!?」
クロは自分一人取り残されたことを悟る。
「来ないなら私がそちらに行ってあげましょうか? うふふ」
リーズはクロに向かってゆっくりと近づいていく。クロは恐怖が限界値に達し、足がすくんで動けない。
「ぎゃああああああ!!!!!!!!!」
俺たちはクロがあんなことやこんなことをされている姿を、遠くから見守ることしかできなかった。
◉
「魔王様、目的の場所に行くにはここを通る以外ないっぽいっすねー」
シロがめんどくさそうな顔で目の前の大きな関所を眺めている。
「そのようだな、まぁ変身の魔法を使えば問題ないだろう、頼んだぞリーズ」
リーズの返事はなく、何かに怯えたような顔をしている。
「リーズ?」
「あ、はい了解致しました」
どうしたのだろう。いつもならテキパキと変身魔法をか蹴てくれるのだが、どうも様子がおかしい。クロのババァ発言をまだ気にしているのだろうか。
「リズ姉さん、どうかしたんですか?」
クロ頭に大きなたんこぶができているクロが心配そうな表情で語りかける。
「だ、大丈夫よクロ」
「もしこの街に何かあるなら転移魔法でここを通り過ぎるというてもあるが……」
「いえ、お気になさらないでください魔王様。なにありませんので、早く通ってしまいましょう」
「あ、あぁ」
この時俺たちは、再びユーシア帝国の暗殺部隊と出会うことになるとは、思いもしなかった。
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