第9話覚悟を決めるらしい
「クロ、私はそろそろ、あなたには自由になるべきだと思っているわ」
「な、何言ってんだよ!! ノル姉!!」
「ノル!?」
シロとクロはそのセリフを聞いてひどく動揺している。
「ノル姉がいなくなるなら、俺は自由なんて欲しくねぇ!!」
クロその目には、涙が浮かんでいた。そんなクロに、まるで母親のように優しくノルは寄り添い、頭を撫でる。
「あなたはもう大人にならなくちゃ行けないのよーー私のことなんか忘れて、この広い世界で、たくさんの経験をするの」
「て、でも、ノル姉が死んだら、なんの意味もねぇ」
その言葉を聴いてうつむくノル。
「大丈夫よ。この世界は広い、きっとどこかに私と会う方法があるわ」
きっとこれは気休めだ。クロを独り立ちさせる為の。
「駄目だ!!」
そこで口を開いたのはシロだった。
「おまえに、これ以上辛い思いをさせたくないーーきっと何か他に方法があるはずだ!!」
シロは必死の思いでノルに訴えかける。
「ないのよ」
それを冷たくノルさつき話す
「私が死ぬ以外、方法はないのよーー兄さん」
「なら、俺がおまえの代わりになって!!」
ノルは無言で首を横に振る。
「兄さんは、魔王様の四天王なんでしょ? きっとそれは運命なのよーー魔王が生まれたことも、兄さんが魔王の四天王になったことも」
「おまえ、何を言って……」
「兄さん聞いて!!」
「今この世界では、魔物は不必要に人間に虐げられているのはわかってるでしょう?」
「あぁ、人間には、本当に失望する限りだ」
確かにあんなことされたら、失望するのも無理はない気がするが、魔物が虐げられているなんて聞いたことが、
「人間は自分の強さを上げるためだけに魔物を殺すーー子供も老人も関係なく」
その言葉は、今までゲームでたくさんモンスターを倒してきた俺にも刺さる言葉だ。しかし、ゲーム故に、無意味に殺していると言う感覚がなかった。
「きっと、魔王が誕生したのは、人間と、魔物の均衡を保つためよーーそして兄さんはその魔王の四天王になったーー今、兄さんがやるべきことは何?」
「魔王様に、全力でこの身を捧げて仕えること」
するとノルは優しく微笑んだ。木漏れ日のように暖かく、ささやかな笑顔で。
「兄さん、私を殺して」
シロは鎌を持って無言で立ち上がるその表情こそ見えなかったが、シロの覚悟が伝わってくる。
「必ずまた、兄さんがお前を、助け出してやるからな」
シロも微笑んだ。木漏れ日のような優しくて温かい、兄弟そっくりの笑顔で。
そしてシロは、精神体のノルの胸に鎌を突き刺した。
ノルの魂の光が、薄暗い赤色に光っていたバベル山の山頂を、眩しく輝かせた。
「ノル姉!!」
クロが涙を必死に堪えて叫ぶ。
「俺も、いつか必ずノル姉と会うために、この世界を、存分に冒険するから!! だから!!」
クロは溢れ出る涙を拭う。
「冒険の話、いっぱい聞かせてやっから!!待ってろよ!!」.
「うん!! 待ってる!!」
そしてシロは鎌を引き抜き、ノルの体は、優しい光に包まれ、消えていった。
最愛の妹、育ての姉を亡くした二人の目に、もう涙は浮かんでいなかった。
そんな彼らを、魔王である俺は、見ていることしかできたなかった。
良ければ感想、評価、ブックマーク等お願いします。
小説書くの難しい