プロローグ異世界にいくには痛みが伴うらしい
俺はなにもない高校生。部活もやっていなければこれといって目標もなく。クラスのみんなからは、この根暗な性格からネクラーなんて呼ばれてる。
「よぉ〜ネクラー。今日はいくら持ってきてんだぁ?」
「あたしら今日みんなでカラオケ行かなきゃいけないんだけどさぁー、昨日お金使っちゃったんだよねー」
こいつらはユージとユサ。クラスで一番カーストが高い、いわゆる陽キャという奴だ。そしてご覧の通り今まさに俺はこいつらからお金を巻き上げられようとしているのである。
では俺はこんな奴らに対してどんな対抗をするのかというと。
何もしない!!!!!!!!!
そう、あえて何もしないのだ。それは別に怖いから何もしないとか別にそういったわけではないのだ。
決してないのだ。
「今日はこれしか、」
俺が財布を取り出すと、ユージが俺の財布を強引に奪い取った。
「こんだけ? 少ないんだけど」
「ごめん、今日はこれだけしか」
「へー、まぁいいわ、行こうユサ」
「うん!! ユージ!!」
お金を取られるのはいつものことだ。しかし今日はあのキラクエシリーズの最新版が出る日。お金を取られるわけにはいかない。
俺はポケットに入れていた1万円を取り出し密かにほくそ笑む。バカな奴らだ。こんなのに騙されるなんてな。
「ねぇ、あんたその手に持ってんの何?」
「......」
そんな俺にも実はやりたいことがある。
が、残念なことにそれを行うことは絶対に不可能なのだ。
何故不可能なのか。それは俺のやりたいことが異世界に転移して勇者として無双することだからだ。
仲間と共に冒険を重ねるうちに、パーティメンバーの美少女と恋に落ちる。
こんな人生送れるならこの世に存在する全ての宗教に入って神様に異世界に転移させてくださいって言いたくなるよ。
あぁ、まさに夢物語だ。
正直異世界転生でもいいが、あれは一度死ぬことが条件なので、はっきり言うと怖いのだ。車で跳ねられたり、通り魔に刺されたり色々方法はあるみたいだが、どれもこれも痛そうなので、できれば異世界転移が良い。
と、一円にもならない妄想を長々と語っていたところで学校のチャイムがなり、俺はさっきあの二人に取られたお金を家に取りに帰ったのち、いつもゲームを買っている店に向かい、ようやくゲームを手に入れたのだ。
キラクエ11値段税込み10800円。さっきお金を取られたので実質出費21600。普通のゲームソフトより少々高いが、このシリーズにはこれだけ払う価値がある。
「あぁ、ようやく買えた。キラクエ11。今回はストーリーが凝ってるらしいから楽しみだなぁ。」
新しいおもちゃを手に入れた子供のように心の中ではしゃぎすぎて少し心の声が漏れてしまった。
俺はせっせと家に帰宅していると、
「「「キャァーーーーーーーー!!!!」」」
と言う女性の悲鳴と共に人混みが突然騒がしくなる。
何事かと立ち止まりそちらに注意を向けるが、俺の中ではゲームが最優先なのでそのまま気にせず家に帰ることにして、俺はまた歩き出した。
このまま俺は家に帰って、お菓子でも食べながらキラクエをすると言う至福のひと時を過ごすはずだった。
グサ!!!!
俺が今までの人生で聞いたこともないような鈍い音がした。
何やら背中からとんでもないほどの熱を感じる。
その熱の原因が自分の背中に刺さっているナイフだと自覚した瞬間。
その熱は俺の中で途方もないほどの痛みに変化し、その傷口からは自分の命の泉がどんどん外に溢れ出していく。
俺はそのショックでバランスを崩し、倒れそうになった瞬間。
ほんの一瞬俺の体全体に猛烈な痛みが走ったが、その感覚は背中の痛み、いや、全身の感覚と共に既に消えていた。
目が覚めるとそこには神様を名乗る謎の男がいた。
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