5話 商人
エントリーカントリーまで、地図を見る限りは近い位置に私たちは居た。そこで、1人の男性がゴブリンに絡まれているのを見かけた。
「た、助けてくれー!誰か助けてくれー!」
大変だ。男性がゴブリンに襲われている…ように見えたが、これは…煽られている…
「やーいやーい!おっさん!ゴブリン如きにビビるとか、弱すぎだろ!」
「そうだそうだ!懲らしめてやろうぜ!」
なんとも言えない光景。でも、止めに行かないといけないと、決心した。
「コウタ君、止めに行こう。」
「だね。おいそこのゴブリン共ー!!」
コウタ君が、ガチの顔をして長剣で立ち向かって行った。ゴブリン如きにそんな顔しなくても…と思いつつも意外と正義感の強い男の子だと思った。
「やべぇ!なんか強そうなヤツらが来たぞ!お前ら、逃げるぞ!」
「覚えていろよ!人間!」
くそ…逃げられたか…でも、この中年の男性が無事で良かった。
「ほ、本当に助かりましたァァァ!ありがとうございます!」
その男性はコウタ君に土下座をした。なんとも、滑稽な光景。
「え、いやそこまでしなくても大丈夫ですよ…」
コウタ君の顔を伺ってみると、うん。引いている。予想通りだ。
「貴方は、なんでゴブリンに絡まれていたんですか?」
少し尋ねてみることにした。すると、
「私、こう見えても商人なんですよ。で、急にゴブリンが来て、それで、荷物よこせとか言ってきて…散々でした…」
確かに、よく見てみると男性の背中には大きいリュックを背負っていた。更に、何処へ行こうとしていたのか尋ねてみることにした。
「商人という事は、荷物を販売しようとしていたんですよね?という事は、エントリーカントリーに向かってました?この辺で栄えてる場所と言ったらそこを想像するんですけど…」
「ええ!まさにそうです!あなた達もエントリーカントリーに向かっていた途中ですか?」
「そうですよ。僕の戦友のエレノアさんっていう隣の女の子のギルド登録をしようと向かっていました。」
「ほほぉ!それはそれは…私から武器をプレゼント致しましょう!」
商人はとても嬉しそうな顔をして、その大きいリュックを漁り、剣を出してくれた。
「これは狼族の牙と爪を加工したウルフソードでございます!牙猪の牙よりも丈夫でございます。」
その剣は、灰色をしていて、長さは70cm位の刀身だった。
「ありがとうございます!大切に使います!」
「良かったね、エレノアさん。」
「そんなに喜んでいただいて光栄です。もし良かったら、一緒にエントリーカントリーへ向かいませんか?」
「もちろんいいですよ!一緒に歩きましょう!」
今気づいたが、商人の名前を聞くのを忘れていた。
次回もお楽しみにお待ち下さい!