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葛藤と後悔

 元婚約者セレスティーヌ・バイエ侯爵令嬢。私が七歳になった時に婚約者になった。幼い頃の彼女はまるで絵画の中から現れたのではないかと言う様な天使的な可愛さだった。


 子供らしくふっくらした頬は白く、ピンクゴールドの髪の色は彼女の可愛さを際立てた

 手を繋いでバラ園をよく散策した…… 懐かしい思い出だ。


 王子妃の教育として週の半分は王宮で過ごしていた。

 歳を重ねて行くうちに、可愛らしい少女から美しいレディへと成長する、私の隣で笑っていてほしいと思っていた。


 優秀な彼女といると、自分に劣等感を抱く事もあるが、彼女に気づかれない様に自分の感情に蓋をする。



 たまたま散策に行った下町で笑顔の可愛い子に会った。

 その屈託のない笑顔が何故か気になり話しかけた。

 身分は子爵令嬢だった。貴族だったか……

 家は裕福ではないため、商家に預けられ手伝いをしているのだと言う。

 苦労をしているのだな……

 この子のために何かをしてやりたいと思ったのが運の尽きだった……。



 なぜ十年を共に過ごした彼女の存在を軽く見てしまう様な真似をしたのか……

 共に学び共に成長をしてきたのに……


 子爵令嬢といると自分が優位に立ったつもりになったのか……

 初めのうちは可愛いと言う感情でこれが恋だと思った。


 学園にも裏から手を回し入学できる様に細工した。

 子爵令嬢(アニエス)と人目を忍んで逢瀬する時間はスリルがあった。

 アニエスから婚約者に申し訳ないから別れたいと言われた時に、婚約者のことを愛していない、愛しているのはアニエスだ! と、勢い余って言ってしまった……

 婚約破棄もするなどと口を滑らした。



 婚約者であるセレスティーヌにそのことを告げると、悲しむどころか喜ばれてしまった。


 応援するとは何事だっ……!

 セレスティーヌよ! なぜ泣かない? なぜ悲しまない?


 私の事をどう思っているんだよ……


 嫌だよ。十年も美しい君と一緒に居たのに。

 なぜ書類にサインをするんだ……

 将来私の隣にいて欲しいのはセレスティーヌ君なんだ……そう思う心があるのに、


 彼女は……



 真実の愛の前では自分は邪魔だの……


 真実の愛は素晴らしいだの……


 なぜそのようなキラキラした目で私を見るのだ!


 全く話にならないではないかっ!


 結局したくないサインを書かされ婚約が白紙となってしまった。



 アニエスのマナーや不勉強な所には呆れる一方で、セレスティーヌとつい比べてしまう。


 学園でもセレスティーヌを目で追ってしまう……



 叔父上が帰ってくるパーティーにはセレスティーヌも参加するだろう。

 パートナーは誰だ……!


 セレスティーヌは誰の手を取るのだ……


 考えていると眠れなくなる。自分が蒔いた種なのに葛藤と後悔で頭が痛い。



 私との婚約が白紙となり友人と笑いあうセレスティーヌを見た。


 可愛かった……


 目が離せなかった……


 あんな顔っ! 幼少の時以来ではないかっ!




 アニエスは学園の寮で暮らしている。

 今日のパーティーのエスコートをするため寮まで迎えに行く。

 父上がアニエスを見ると言っていたな……


 気が重い……


 女子寮の為、応接室で待つ様に言われソファに腰掛けてアニエスを待つ。


「サロモン様お待たせしました!」



 ドレスを着込み入ってくるアニエスを見て、度肝を抜かれた……


 ……なんだそのドレスは?


 奇抜なピンク色にド派手なリボン……


 頭に大きなリボン……


 胸元に大きなリボン……


 腰にも大きなリボン……


 散らばした大小のリボン……


 ……激しい頭痛が襲ってきた。


 ……センスのかけらもないではないかっ!



「えへへ、可愛いでしょ?」


 何か言葉を発さなくては…冷や汗が出てくる。


「あぁ……似合って、い、る」


 なんとか一言だけ褒める言葉が出てきた自分を褒めてやりたい……


「どうかしたの?具合、悪そうですよ……」


 顔は可愛いんだよな……


 しかし品がないんだその化粧……



「サロモン様、顔色が…」


 侍従に頼みアニエスと共にパーティーに行ってくれる様に頼み


「悪い少し休んでから出席するよ……」


 馬車を用意させ一人王宮へと戻る事にした。



 アニエスのドレスを作ろうと、いつものデザイナーに発注をかけようとしたが、セレスティーヌのドレスでないのなら作りたくないと断られた。


 デザイナーを探す時間がなく、アニエスの実家が世話になっている商家に頼むと言うので任せたのが悪かった……

 コネを使ってでも自力でデザイナーを頼むべきだったのだ……!


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