3話 魔界来訪
光に耐え切れず目を閉じ、
暫くの時が経った。
光が鎮まって目を開くと、
見慣れぬ景色が広がっていた。
どうしたものかと悩んでいると、
頭の中にクロノスの声が響いた。
『《調停者》はお前を含めて5人いる。
生きる為の品は一緒に送った荷物にある。
まずは仲間の《調停者》を探すといいだろう』
(クロノスさんか?どこにいるんだ?)
『天界…神々の暮らす世界にいる。お前には、《念話》という一種のテレパシーで話している』
心で思っただけで返事が来た。
(こっちには来ないのか?)
『あぁ。大昔の約束があってな。神々は原則、異世界には行ってはいけない。
お前と会うのも、ギリギリだったのだ』
(そうなのか。ところで、ここはどこだ?)
『言ったはずだが魔界という世界だ。
神々の天界、魔族の魔界、そして人間の人間界の3世界でこの世は成り立っている』
(魔族…安全なのか?)
『普段はな。これは、お前に伝えた用件に関わってくるのだが…
18年程前、魔界を統治し、この世の均衡を保っていた7柱の《神龍》が消失したのだ。
だから神を探せ、という用件を伝えた。神族より龍族のが気配は大きい。
しかもお前は、神龍の力を辿る素質がある。見つけるのも可能だろう。
…あぁ、王に呼ばれた。念話を切らせてもらうぞ』
クロノスの声はそれで途絶えた。
周りを探すと、リュックが転がっていた。
中身は食糧、水、地図、野営道具…などなど。
「準備万端じゃねーか…」
トウキはクロノスの手際の良さに感心する。
荷物の確認をしていると、奥にメモが入っていた。
「『自分の能力が知りたい』とでも念じてみるといい。強く念じれば《ステータス》が開く。
言語は通じるように細工しておいた。魔界では魂が可視化されるから、狙われるなよ」
と書かれていた。クロノスが書いたのだろう。
達筆だった。
トウキが書かれていた通りに念じると、簡単にステータスが開いた。それによると、
名前:トウキ
称号:調停者、勇者
加護:《時の神》の加護
総合力:6000
魔力:不明
体力:4500
精神力:1500
スキル:真之勇者
固有能力:神龍感知
との事だった。
スキル「真之勇者」の使い方はクロノスでも分からないとのことだったが、それよりもトウキの目を引いたのは「魔力 不明」という欄だ。
(魔力…不明?0とかじゃないのか?)
思案する中、ふと胸のあたりが光っている事に気が付いた。
見ると、半透明の白い宝玉のようなものが輝いていた。
(これが魂なのか?…『狙われるな』ってことは、急所なんだろうな…)
トウキがリュックの中を探っていると、革の防具が入っていた。
早速装着してみると、光が見えなくなった。
どうやらこの光は、分厚い布や革なら透けないらしい。
(これなら少しは狙われにくいだろ)
気が付くと夜にだった。
トウキは野営道具を使い、眠りについた。