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4 護衛1



 用意された部屋は、広い部屋だった。高そうな応接セットがあり、3人がけのソファが2つあって、それが机を挟むように配置されている。

 俺とヘレーナは向かい合うように座った。すると、細身の男が後から来たメイドにお茶を用意するカートだろう、それを受け取ってお茶の準備を始めた。


「ここは、国賓用の部屋です。・・・国のお客様という形が、一番セイト様に当てはまるかと思いまして。」

「確かに。俺は、国に招かれたわけだし・・・そうだよな?」

「はい。聖女召喚は国が主導で行ったことです。」

 そこで、細身の男がお茶を俺の前机の上に置いた。


「ありがとう。」

「紹介がまだでしたね。ディーは、私の近衛騎士です。」

 ディーは、微笑んで頭を下げた。俺もつられて軽く頭を下げる。


「セイト様にも、護衛騎士をご用意させていただきました。」

「え、俺にも?」

 俺にも護衛がつくようだ。そうだよな、俺は重要人物だし。


「はい。もともと聖女様の護衛として、用意はしていましたので。ただ、神殿は何かと決まりが厳しく、召喚には立ち会えませんでした。ですが今から彼が、あなたを命に代えてもお守りします。」

 命を代えて守るって・・・神様ありがとう!あれ、でも彼って・・・?


 ディーが、部屋の外へ声をかけると、一人の男が入ってきた。金髪に緑の瞳・・・というか、この国の人金髪多いな・・・またしても、美形だ。ディーが、王子系だとすると、この男は、堅物系といえばいいのか。真面目そうだ。


「あなたの護衛騎士、アムレットよ。」

「よろしくお願いします、聖・・・なるお方。」

「あぁ、よろしく。俺のことは、セイトでいいよ。あと、普通に話してくれないか。」

 これからずっと俺のそばにいるだろう、アムレット。かしこまられるのも面白いが、疲れる。これから大勢にかしこまられるのだろうから、その体験はその他大勢で楽しむことにしよう。


「申し訳ございませんが、恐れ多くもお名前をお呼びすることなどできません。」

「は?」

「申し訳ございません。」

 え、なんで?名前呼ぶのもダメなの?それくらいいいじゃん?


「私としては、セイト様とその周囲の関係に口を出すつもりはありません。あとで、アムレットとは、よくお話しした方がよろしいでしょうね。あと2名ほどセイト様に護衛を付けさせていただく予定です。一人は、影と呼ばれる常に主の傍におり、主にすらその身をさらすことがほとんどない・・・こちらは気にしないでください。」

「いや、気になるけど!何、俺ずっと見張られているわけ!?」

「見張っているのではなく、見守っています。」

 その表現はその表現で嫌だな。


「最後に、護衛の魔術師を付ける予定ですが・・・こちらは、セイト様のために再選考していますので、今しばらくお待ちください。」

「再選考?アムレットは再選考しなかったのに、なんで魔術師の護衛はするんだ?それに、魔術師の護衛って何?」

「騎士からの護衛はすぐに用意すべきと思いましたので。アムレットがお気に召しませんのでしたら、こちらも再選考いたしますが?」

「いや、そういうわけじゃないから!」

 いつの間にか俺の背後に控えているアムレット。後ろにいるのに、なぜか落ち込んでいる雰囲気が感じ取れて、俺は慌てて否定した。


「左様ですか。それで、魔術師の護衛ですが、魔法を専門に扱う護衛です。アムレットを剣と例えるなら、魔術師は盾とでも思ってください。」

「盾・・・」

 俺の頭の中で、ローブを着た男が俺を守るために肉壁となる姿が浮かんだ。ひどすぎる。


「防御や補助、治癒などを行いますね。戦闘の際には、あなたの一番近くに控えることになるでしょう。」

 そういうことね。魔法で結界、バリアー的なものを張ったりしてくれるのだろう。肉壁ではなかった。


「なぜ、魔術師を再選考するのかといえば、むさいからです。」

「え、むさい?」

「はい。」

「・・・そっか。」

 むさい?むさいってなんだ?魔術師がむさかったのか?


「とりあえず、セイト様はこの世界になれることに専念してください。一度にいろいろお話しても混乱なされると思うので、今日はここまでといたしましょう。もし、聞きたいことがありましたら、アムレットからお聞きください。親睦を深めるためにも。」

「えーと、今日は何もしなくていいってことか?」

「はい。それでは、私は失礼いたします。」

「あ・・・」

 あっさりと、ヘレーナは部屋を出て行った。もちろん、護衛のディーもだ。

 残ったのは、俺と俺の護衛のアムレット。あと、見えないけど影か。


「えーと、とりあえずアムレット?」

「はい。」

「そこに座ってくれないか?背後に立たれていると落ち着かない。」

「申し訳ございませんが、慣れてください。これが普通ですので。」

「・・・お前、俺のこと嫌いだろ?」

「嫌いになるほど、時を共にしていません。ですが、あなたをこの命に代えましてもお守りいたしますので、ご安心を。」

 全然信用できない。嫌いになるほど俺を知らないってのはそうだろうが、そんな俺を命に代えて守るって・・・口先としか思えないのだが。


「・・・」

「・・・」

 どうしよう、会話が思いつかない。

 聞きたいことはたくさんあるが、この男・・・話してくれるとは思えない。さっきから、俺の言うこと全く聞いてくれないし。


 でも、一応聞いてみるか。


「ヘレーナって、王族か何かなのか?ずいぶん権力がありそうだったけど。」

「・・・王族です。ただ、詳しい役職はお話しできません。ヘレーナ様は、聖なるお方が過ごしやすいようにと、役職をあなた様に話すことを禁じられています。知らなければ、あなたがどのような不敬を行っても、知らなかったと済みますから。」

「・・・いや、王族って知っちまったけど?」

「その程度なら、よろしいかと。とりあえず、俺たち護衛の身分は明かしますが、そのほかは気にしなくても大丈夫です。」

「・・・ヘレーナは気が利くな。お前もそうであって欲しいんだけど?」

「そうですね、多少は努力しましょう。」

 全く努力の痕跡が見られないのだが?


「俺は、あなたをこの命に代えても守りますが、だからと言って心を許したわけではありませんので。」

「・・・わかった。まずは、お前の心を開かせてみろってことだな?」

「その通りです。」

 ただの堅物化と思えば、いい性格をしている。

 少しだけ、この先の生活が面白そうだと俺は感じた。


 それにしても、俺を守ってくれる護衛・・・アムレット。

 男だな。


 美形だし、きっと強いけど・・・男だな。


 確かに、女性とはお願いしてなかったからな。

 だが、そこは察してほしかった、神よ・・・




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