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17 禁血



 さて、覚えているだろうか?

 子爵領に着いて早々に聞かされた、マリアが顔を隠しているわけの話だ。


 朝の朝食時、噂のお忍び様がやってきた。


「おはようございます、セイト様。お元気そうで何よりですわ。」

「ヘレーナ!?」

 俺に挨拶をして入ってきたのは、マリアの格好をしたヘレーナだった。フードを被って入ってきたがすぐに外してその正体を現した。美しい銀髪と青い瞳が輝いて見える。


「どうして、ヘレーナがここに・・・」

「もちろん、お話しいたしますわ。ですが、まずは朝食を召し上がってください。話はそれからです・・・アムレット、今日は何の予定も入れてないわね?」

「はい。今日は一日空けました。」

 予定ね。ここにきて3日経つけど、予定らしい予定なんて、みんなと町で昼食をとったことくらいだ。あとは、一応子爵と夕飯とってるくらい?

 俺、マジで何をしに来たんだろうな。自由な時間は、マリアたちと話をしたり、魔法の練習をしたり・・・また、おんなじ生活かよ!城にいた時と何も変わんねー!



 さて、朝食も食べ終わった俺を見て、ヘレーナは俺に説明を始めた。


「セイト様、これからあなたには救世主として、国中を周ってもらいたいのです。」

「救世主・・・聖女の別名って感じか。だけど、俺が動くことで何か変わるのか?ヘレーナは俺に能力があるって言ってるけど、全くその能力が発動する気配はないけど?」

「ご安心ください。実際に国を救うのは・・・土地に魔力を与えるのは私がやります。」

「・・・それって、今までと変わらないよな?」

 各地で、魔力がある者は土地に魔力を流していると聞いたことがある。それにヘレーナが加わるだけの話だ。


 もしかして、俺の立場を悪くさせない為か?

 ヘレーナが魔力を流せば、多少はその影響で土地が肥えるだろう。そして、それを俺がやったことにすれば、俺は男だけど聖女としての役割を果たしたことになる。肩身の狭い思いはしなくて済むだろう。

 だが、俺の考えは間違っていないが、それだけではなかった。


「セイト様には、謝らなければならないことがいくつもあります。まずは、嘘をついていたことです。あなたが召喚されたのは、この国を救うために力を貸していただくため、とお話ししましたが・・・それは嘘です。」

「嘘?」

 別に、俺がなぜ召喚されたかなんて理由はどうでもいい。俺は、異世界に来たかっただけだし。でも、嘘をつかれていたとしたら、少し気分が悪いな。


「この国を救うのに、聖女の力など必要ないのです。私が欲しかったのは、聖女という強大な力を持っていても不思議ではないと思える人物。」

 私が欲しかった?

 それって、まるで召喚がヘレーナの意志で行われたような言葉だ。


「なので、私は聖女召喚を行ったように見せかけて、聖女役をしていただく人間を聖女と偽ろうと考えていました。そして、その聖女役を表に出し、裏では私が土地に魔力を与えて国を救うつもりでした。」

「それに何の意味があるんだ?別に、ヘレーナが普通に魔力を土地に流せばいいじゃないか。」

「これ以上の名声はいらないのです。私は、普通の人間としていきたいと思っていますから。まぁ、少し手遅れですが。」

 いや、生まれた瞬間から、もう普通なんて無理だろう。美人だし。どれだけ美人かといえば、女神レベルだ。残念ながら、俺の異世界転移に女神さまは登場しないようで見たことはないが。


「さっきから国を救うって言ってるけど、ヘレーナにはその力があるのか?」

「はい。」

「即答!?」

 ヘレーナ、女神だろ。俺の物語の女神決定だな。美しいし、世界を救う力があるし・・・


「私は、禁血と呼ばれる人間で・・・膨大な魔力を宿しています。流石に、一週間でやれと言われれば無理な話ですが、時間を掛ければすべての土地に魔力を与えることができるでしょう。他の使い手では、土地に魔力を与えるそばから魔力が消えてしまいますが、禁血である私ならば可能です。」

「すごいな・・・ん?前に聞いた話だと、使い手たちが各地で魔力を流しているって言っていたよな?与えるそばから魔直が消えるのに、意味があるのか?」

「焼け石に水という程度です。」

「意味ないじゃん!?」

「はい。ですが、やらなければならないのです。動かなければ、民が納得しませんから。」

「・・・いや、ヘレーナ・・・動くべき人が動くべきだろ。」

 動いてますアピールしても問題は解決しない。土地が痩せている問題は、早急に解決すべき問題だろうし、解決できる人間がすぐに動くべきだ。なのに、なんでヘレーナは今まで動かなかったんだ?

 名声はいらないとか言っていたが、そんなことよりも国を救うことの方が優先されるべきだろうに。


「私が動かなかったのは、国を救うことで禁血であることを知られるのを防ぐためです。禁血に自由はありません。それだと知られれば、国に管理されることになります。」

「管理って、例えば?」

「四六時中見張られることになりますね。あと、国を出るのにも許可が必要です。」

「ふーん。」

 それって、俺の生活と変わらないよな?

 四六時中ハーニスが見張っているし・・・護衛としてだけど。国を出るのに許可というか、そもそも国を出られない可能性もある・・・


 俺みたいになるのが嫌だって、俺本人に言ってね?


「私が禁血であることを隠すため・・・というのもありますが、実はもうすでに私の自由はほぼないので、別にこれが一番の理由というわけではないのです。」

 貴族だろうし、それはそうだよな。それに、ヘレーナは国を滅ぼそうとした罪人の娘だ。監視されていても当然だろう。


「国を救うため各地を周ると話しましたら、陛下に止められたのです。俺はそんなこと絶対に許さないと。」

「・・・は?」

 陛下って・・・この国の王様だよな?この国の王様が、なんで国を救う行為を反対すんだよ!?この国大丈夫か?




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