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16 子爵領



 子爵領に着き、滞在する間お世話になる子爵の屋敷に入る。

 今回、俺と護衛の3人の他に、騎士が10人ほど付いてきた。すべて子爵の屋敷に滞在するので、大所帯だな。


 子爵の屋敷で、一番に子爵とあいさつを交わした。子爵家側は、子爵と夫人、息子が3人と娘が1人で、俺たちは俺と護衛の2人で挨拶をする。

 ま、護衛のアムレットがほとんど話をしてくれたので、俺とマリアは立っていただけだが、それは子爵側も同じだ。アムレットと子爵の挨拶が終わり、俺は用意された部屋に案内された。


 子爵家のメイドがお茶の用意をすると、アムレットが退室を促す。メイドはそれに素直に従い部屋を出て行ったので、俺たちはいつもの3人というメンバーになった。いや、4人か。俺が座ったソファの隣に、いつの間にかハーニスがいた。


「お前、影の自覚があるのか。」

「かたいこと言わないでよ、騎士さん。ほら、魔術師さんも座ったら?」

「はい、失礼しますねセイト君。」

「はぁー。」

「お前も座ったら、アムレット?」

「遠慮させていただきます。」

 俺は、用意された紅茶を飲んで一息つく。俺の隣に座った2人も、同じように紅茶を飲んでいた。あれ、いつの間に用意したんだ?メイドは俺のしか用意していなかったはずだが。


「本日の予定は特にございません。ただ、子爵から夕食の招待状が来ています。こちらでとることもできますが、1日目ですし誘いを受けるべきかと。」

「わかった、一緒にとるよ。」

「えー。ま、仕方がないか・・・僕たちも一緒にとりたかったけど、お世話になるわけだし、今日のところは我慢するよ。」

「そっか、お前たちと一緒に食べられなくなるのか。」

「私たちのことはお気になさらず。そうだ、明日のお昼は一緒に外に出て食べませんか!私、ここのメイドさんにおいしいお店を聞いておきますから!」

「それはいいな。」

「あーなら、僕がおいしいお店を調べて来るよ。魔術師さんは、極力屋敷の者とかかわらないようにって言われているでしょ?」

「あ、そうでした!」

「どういうことだ?」

 そういえば、子爵との挨拶の時も、マリアはフードを取らなかった。それどころか、一言も口を利かなかったな・・・いつものことだが。


 こんなに話好きそうなのに、マリアは人とかかわらないようにしている節がある。それはどうしてだろうか?


「今はまだ秘密だよ~。ま、楽しみにしていて!」

「何だよそれ、俺だけ仲間外れか?」

「すねない、すねない。」

「別に隠す必要はないだろう。」

 珍しく、アムレットが俺に話し出そうとした。いつもなら、口止めされているとか言って、何も聞かせてくれないのに。


「マリアがいつも人前でフードを被っているのは、気づいていますよね?」

「それはもちろん。可愛い顔をしているのに、隠すなんてもったいないと思っていたからな。」

「あ、ありがとうございます!」

 嬉しそうに笑うマリア。表情豊かだし、よく話すし、いつもフードを被って無口になってしまう理由が本当にわからないな。


「実は、魔術師の護衛の役割は護衛だけではないのです。ある方がお忍びであなたと共に行動するため、いつもフードを被った魔術師の護衛という立場を作ったのです。魔術師の護衛は、誰が入れ替わってもいいように常に正体を隠すようにしているのですよ。」

「・・・つまり、お忍びの奴といつか行動を共にするということか?」

「その通り!」

「そうだったのか。なら、マリアはそいつが来たら、もう一緒にいられないのか?」

「そんなことはありませんよ!その方がいらしても、私は顔をさらして護衛としてそばにいますので。」

 それって、意味があるのだろうか?ま、いいか。

 マリアと離れるのは寂しいし、一緒にいられるなら、いいか。


 俺は、お忍びの人物には興味がなかったので、その正体については尋ねなかった。お忍びとか言うくらいだから、貴族か何かだろうが・・・

 どうでもいいな。




 次の日。

 昼時、みんないつもの服装とは違いラフな格好になって、子爵領の町の評判のお店で昼食をとった。まぁ、マリアだけはいつものフード姿だったけど。


 お店では、いつも一緒に食べないアムレットも流石に目立つので座って、俺たちと共に昼食をとる。新鮮だ。


「お前、綺麗な動きだな。」

「はい?」

「いや、食べ方だよ。なんか・・・浮いてる。」

「左様ですか。確かに、騎士仲間にも言われたことがあります。ですが、一応貴族ですのでこれくらいは当たり前の教養なので、お気になさらず。」

「お前って貴族なの!?」

「はい。」

「え、ハーニスは?」

「僕は違うけど、魔術師さんも騎士さんと同じで貴族だよ。」

「貴族とは言っても、庶民に近い貴族ですけどね。貴族もピンキリですから。ですが、そういうセイト君だって、綺麗な所作で食事をしますね。良いところの生まれなのですか?」

「・・・普通かな。ただ、俺の世界の普通って・・・たぶんこっちの世界だと貴族くらいの生活かも。文明が発達しているからなー。」

「普通が貴族並み・・・全員貴族ということでしょうか?想像がつきません。」

 貴族といえば語弊があるかもしれないが、この世界の貴族って俺からすれば、衣食住がそろっているだけという感じがする。確かに、高いレベルの衣食住だが、服とか男はスーツだろ、あれ。サラリーマンじゃん!?女の人はドレスだけど、女性の服ってあっちでも高いらしいし、お金のかけ方は変わらないだろう。

 食べ物は、向こうの世界の方がうまい。ま、こっち西洋風だし。俺の世界でも、日本食、和洋折衷の料理の方がうまかったから、日本に住んでいたからこう思うのかもしれない。

 住、家はさすがに大きいけどな。


 それに、使用人もいないな・・・あれ、貴族は言い過ぎだったか?ま、いいか。


 貴族か庶民かといえば、貴族だし。

 町に来て思ったのは、ぼろぼろだな、だ。建物もそうだし、出歩く人が来ている服もほつれていたりとかしていて、可哀そうになってくる。

 あと、臭う。風呂入ってなさそう。


 そんなしょうもない話をして、俺たちの昼食は終わった。それから、あっという間に夜になって、この日も夕食を子爵と共にして、部屋に戻った。



「そろそろ就寝の時間です。」

「もうそんな時間か。」

 部屋で水晶を使って魔法の練習をしていた俺は、アムレットの言葉に驚いた。ずいぶん集中していたようだ。


 魔法なんて、使えるかわからない。けど、特にやることもない俺は、いまだに魔法の練習をしていた。

 憧れだからな。


 いつか、魔法を使えるようになったら・・・それを極めたら、俺はこの世界に来た意味があると思えるだろうか?

 魔法、使いたかったもんな。


「おやすみ、アムレット。」

「はい、おやすみなさい。隣の部屋で控えていますので、何かありましたらお声がけください。」

 昨日と同じ説明をされて、俺は頷き返し寝室に入った。


「・・・」

 部屋の中央にあるベッドは、城で俺が使っていた客室と同じくらい大きなベッドなので、俺を入れて3人は余裕で一緒に寝れる。寝れるが。


「おい、どういうつもりだ。」

「セイトが安心できるように、添い寝してあげようかと思って!」

 俺よりも先にベッドに入って待ち構えていたハーニスは、悪びれた風もなく笑って言った。


「・・・はぁ。」

 このやり取りは昨日もした。俺は諦めて布団の中にもぐりこんだ。あたたかい・・・これがマリアのぬくもりとかだったら、鼻息荒くしているとこだけど。


「いつでもウェルカムだよ!」

「うるさい。」

 俺は布団をかぶって目を瞑る。そうすると、隣のハーニスのことなんて気にならなくなり、いつの間にか眠っていた。




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