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13 濡れ衣




 神官にさらわれて、アムレットに助けられた俺は、自分の部屋に運ばれた。運ばれている時には気づかなかったが、部屋に戻るとハーニスにからかわれて、俺はアムレットにお姫様抱っこをされていたことに気づいた。


 恥ずかしいわっ!

 ま、マント被ってたし・・・見られたとしても、俺だとはわからないよな!?


 マントにくるまったまま、俺はソファに降ろしてもらい、ハーニスはそんな俺の隣に座った。マリアは、ハーニスの反対側に座る。アムレットは、いつものように背後に立って控えた。


「その様子だと、息子は無事なんだね~」

「・・・お前、もう話を聞いたのか?」

 俺が神官に連れていかれたのは、俺を女にしようとする神官のたくらみがあったからだ。つまり、俺の息子を切り落とされそうになったわけだが。


「・・・セイトに害をなそうとするやつの情報は集めていたからね。それにしても、馬鹿だよねー。男の象徴を失くしたとしても、女の子になるわけじゃないのに~」

「だよなー。ん、マリアどうかしたか?」

「え・・・あ。」

「あ、ごめん。こんな会話女の子の前ですることじゃないよな。」

「え?あーいいえ、気にしていません。ただ、性別を変えることは可能なので、そのことを思い出していただけです。」

「そんなことできるのか。」

 どうやら、この世界では性別を変える方法があるらしい。それ、変えたい人には最高だけど、変えたくない人が無理やり変えられたら最悪だな。


「あーそれって、例のチラシでしょ?あんなの信じてるの?」

「チラシ?」

「うん。有名な話だけど・・・ヘレーナ様がこの世界を救ったということを民衆に届けたチラシがあってね、誰が配布したのかは不明なんだけど。そこに、「今の性別に悩むあなたへ。その悩みを解消しましょう。」という文言が書かれていて・・・ってやつ。」

「・・・ヘレーナと何か関係があるのか?」

「断言はできないけど、おそらくチラシを配布したのはヘレーナ様の伯父様だと思うよ~。ヘレーナ様の伯父様は隣国にいるんだけど、そのチラシが出回り始めたころにこの国にいたから。」

「隣国?ヘレーナは他国の貴族なのか?」

「違うよ。ヘレーナ様もその血筋もこの国の貴族だよ。けど、伯父様だけは隣国との友好のためにと、隣国の貴族になったんだ。確か、跡継ぎのいない伯爵家を継いだと聞いたよ。」

「ふーん。」

「興味があるなら、さっきの神官たちに聞いてみたら?喜んで連れて行ってくれると思うよ。」

「それは、俺の女性化に期待してか?誰が行くかよ!」

「あはははっ!ま、それは冗談だけど。第一、聖女なんだからさ、他国になんておいそれと行かせてくれないよ。」

「俺は聖女じゃねー!男だ。正真正銘の男だ!」

 俺は立ち上がって抗議する。すると、急に肌寒くなった・・・あ。


「露出魔だ~。お、息子さん初めまして~」

「み、見るな!」

「何をやっているんですか。」

 マントを落とした俺は、下半身をさらすことになり、慌てて前を隠した。そんな俺に、アムレットは落ちたマントをかけてくれる。


「わ、悪い・・・」

「話は後にしましょう。まずはお召し物を。」

「そうだな。しかし、もっと早く言ってほしかった・・・」

 マリアもいるんだからさ。



 さっさと寝室で着替えを済ませ部屋に戻ると、ヘレーナが来ていた。


「セイト様、ご無事の様で何よりです。」

「一時はどうなるかと思ったけどな。」

「ですが、何事もなくてよかったですわ。それで、今回の事件について説明を、と思いまして。よろしければ、おかけになってお聞きください。」

「わかった。」

 俺は、ヘレーナと対面するようにソファに腰を掛けた。何も言わずにヘレーナの話を聞く姿勢を取るが、内心は疑問があった。


 こんなにすぐわかるものだろうか?


 もしかしたら、あの神官たちは警戒されていたのか?でも、だったらなんでこうも簡単に俺は連れていかれた?

 神官たちは、護衛に守られていない、気を失った俺を簡単に連れ去った。・・・あれ?


「そうだ、あの男は。」

「どうかいたしましたか?」

「ハーニス、お前たちを連れて行った男は?あの男と神官たちは関係がなかった。あの男の目的は何だったんだ?」

 すっかり忘れていたが、俺が神官たちに連れ去らわれる前に、フードの男が襲ってきたのだ。その男について、神官たちは知らないようだった。つまり、無関係だった・・・

 なら、あの男の目的は?今、あいつはどこにいる?


「あーあの方ね・・・あれは・・・」

「捕らえましたわ。」

 歯切れ悪く、視線をさまよわせながら答えるハーニスを遮って、ヘレーナが答えた。


「捕まえたのか?」

「えぇ。」

 信じられない。あの男の強さは圧倒的で、ハーニスもマリアも歯が立たないように見えた。いや、あれは動揺していたからか?

 あの時、ハーニスは何かに気を取られていたような。


「あの男は、マリア様を狙ったのです。」

「マリアを?目的は俺じゃなかったのか。確かに、ハーニスとマリアを担いでいたし・・・あれ、なんでハーニスも?」

「それは、私にもわかりかねますが・・・男は、マリア様を自分の花嫁にと望むお方でして、しかしそれを望まぬマリア様が、求婚を蹴られ・・・強硬手段に及んだというのが男がここに現れた理由でした。」

「まぁ、マリア可愛いもんな。」

「あ、ありがとうございます。ですが、私のせいで・・・セイト様を危険にさらしてしまったようです・・・申し訳ございません。」

「いや、マリアのせいじゃないだろ。あの男が全部悪い。」

「・・・」

「マリア?」

「あ、いいえ。その、あの方にも事情があったと思いますので、どうか責めないでいただけますか?大切な友人なんです。」

「え・・・そっか、それは・・・なんかごめん。まぁ、人それぞれ理由はあるよな~ははっ。」

 何の理由があるんだよって話だが、マリアの大切な友達と聞いては、強くは言えないな。それにしても、マリアはお人よしだな。



 事実を知らないセイトと、嘘をついたヘレーナ以外が思った。


 陛下、可哀そう・・・と。

 いくら顔を隠していたとはいえ、とんだ人間に仕立て上げられたものだ。ただ、ヘレーナの言う通りに動いただけなのに、大切な友人に告白してフラれ、実力行使に出る男と言われる始末。もっと、他になかったのだろうか・・・




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