第1話 ラストバトル?
あ……ありのまま……今……起こった事を話すぜ!
俺は……子供を庇って車に轢かれたと思ったら……いつのまにか毛虫になってた
な……何を言っているのかわからねーと思うが
俺も何をされたのかわからなかった……
頭がどうにかなりそうだった……催眠術だとか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……
by 都築 龍哉
そこは深い森の中だった。
彼は目覚めるとまずたっぷりと時間を掛け我が身に起こった悲劇を認識した。
毛虫に転生する。
悪逆の限りを尽くした生粋の犯罪者ですらこんなこと有り得ないだろう。
ましてや彼は子供を庇って死んだのだ。
褒められこそすれこんなバチみたいなものが当たるなんて悲劇以外のなにものでもない。
それでも彼は子供を庇ったことを後悔したりはしない。
そういう人間なのだ。
良い人である。
まぁ今はただの虫なのだが。
(……ステータスオープン)
種族名 災厄の毛虫 Lv1
個体名 なし
HP 7
MP 5
攻撃 3
防御 2
法撃 1
俊敏 2
天運 0
〈特性スキル〉
毒針毛 Lv1 麻痺針毛 Lv1 虫糸 Lv1
〈通常スキル〉
毛飛ばし Lv1 糸吐き Lv1 転がる Lv1
ガン飛ばし Lv1
〈耐性スキル〉
毒耐性 Lv1 麻痺耐性 Lv1 根性 Lv1
〈称号スキル〉
醜悪 Lv1 ヤンキー Lv1 襟足の覇者 Lv1
(……うん、やっぱ何回見ても変わんねーな)
このゲームの様なステータス画面を開くのは既に37回目である。
(ステータスもクソだし襟足を改めてイジられたらスゲー恥ずかしかったりとか色々と言いたいことはあるけど一番気になるのは……なんだよ醜悪って……ただの悪口じゃねーか……ん?)
醜悪
可能なら生涯一度も出会いたくない程醜い容姿の者に与えられる称号
(……文句はあとで言おう。喋れねぇけど。てかこれ……説明見れるんだな)
この世界の便利な機能に割と早く気付けた毛虫だったのだがそこはさすがの天運0、他のスキルの説明も読んで確認しておこうと思ったその時である。
念の為
そう念の為、周囲に張り巡らせていた虫糸に何かの反応があった。
スキルの使用感を確かめる意味では最も試しやすそうな字面だったのが良かった。
彼が絶望と悲しみに本格的に包まれ茫然自失となったのは虫糸を試したその後である。
(メチャクチャでかい反応だけどなんなんだこれ?)
周囲を見回す。
そして彼は奇妙なものをみつける。
(なんだありゃ? ……腕?)
茂みの奥からそれは現れた。
頑強な筋肉の鎧を身に纏った左腕が地面からニョッキリと生えている。
左腕だけである。
(……シュール過ぎんだろ。なんなんだよあいつ……ん?)
種族名 審判の左腕 Lv96
神の名を騙り視界に入った全てを滅ぼす真の悪。その心に宿る間違った正義と手に持った巨大な斧でいつの時代も世界の脅威となる。
(あ、自分以外のも見れるのねこれ。超便利……って強すぎだろっ!? なんで初エンカウントがこんなラスボスみたいなやつなんだよっ! てか斧どこ置いてきたんだよっ!)
と思った矢先なぜか左腕が地面に潜った。
(……なんだ冷やかしかよ……だったら最初から出てくんじゃ……!?)
真後ろからまた奴の反応があり急いで振り向くと今度はちゃっかりその手に巨大な斧を持ち地面から出てくる瞬間であった。
(取りに戻ってただけかよおおおおお!!!!! しかも振りかぶってらっしゃるううううう!!!!!)
そしてその巨大な斧が大きめの毛虫に一切の加減も容赦も無く振り下ろされる。
(あぶねえええええ!!!!!)
斧が振り下ろされる寸前に彼は虫糸を真上に射出し辛うじて危機を脱していた。
【特性スキル"虫糸"がLv2に上がりました】
【通常スキル"糸吐き"がLv2に上がりました】
【初めてスキルのレベルが上がりました 特典として"天の声Lv1"を獲得しました】
なにか重要なことをサラッと言われた気もしたが今はそれどころではない。
(殺意MAXじゃねーかあいつ! 初対面で脳天に斧振り下ろすとかどんな教育されてきたんだよっ!)
斧が振り下ろされた地面をよく見ると陥没し半径5mほどのクレーターができていた。
(威力どんだけっ!? ……でも……駄目だこんなんじゃ……ビビったらそこで喧嘩は負けだからな)
折れかけた気持ちをどうにか立て直す。
(よーし……いっちょやってやろーじゃねぇかっ!)
一撃でも貰えば終わりである。
非常に緊張感のある喧嘩だ。
彼は左腕を木の上から見下ろす。
二人は静かに睨み合うのであった。
【通常スキル"ガン飛ばし"がLv2に上がりました】
かれこれ10分程経過しただろうか?
二人はまだ睨み合っていた。
先程までの緊張感はどこへやら。
(……てかこれもしかしてあいつ……地面から離れられないんじゃね?)
そうなのだ。
あの左腕、実は圧倒的な戦闘力があるかわりにその行動力が大幅に制限されているのである。
(あいつ俺の方に決定打がないと思ってんのか全然動かねぇな……はい勝った……完全試合だわこれ)
この時点で我らが毛虫は勝利を確信した様子である。
(あいつに耐性スキルがあったら終わりだけどな……まずは……)
麻痺針毛で左腕を狙う。
無数の針毛が左腕に向かって飛んでいく。
が、ここで思わぬ事態が起こる。
風の影響か全く当たらないのである。
(全然当たんねぇじゃねーかよ……このままじゃハゲちまうよ俺)
針毛が当たらず不毛な時間が過ぎていく。
もうどれくらい外したか数えるのも辞めた頃、
【通常スキル"毛飛ばし"がLv2に上がりました】
【通常スキル"命中補正Lv1"を獲得しました】
(おっラッキー……なるほどな、こんな感じでスキル増えんのか……あっ当たった)
どうやら耐性スキルは持ってないようだ。
麻痺が効いたのか微かに震えている。
【特性スキル"麻痺針毛"がLv2に上がりました】
(よしっレベルも上がった! お次は毒針毛だぜ!)
命中補正スキルのお陰か今度は1発で当たった。
【特性スキル"毒針毛"がLv2に上がりました】
(……毒効いてんのか、スゲー気持ち悪ぃ色になってんな)
審判の左腕はもはや大事な斧も地面に落とし腐った様な紫色に変色している。
(あいつが死ぬのも時間の問題だな……今のうちに糸張り直しとくか)
そして数時間後ズシンと辺りに重低音が響き渡る。
辺りは真っ暗である。
見るともう動く気配もなく倒れている。
どうやらやっと力尽きた様だ。
(思ったより時間かかんなこれ……毛関連のスキルレベル上がったらもーちょい威力も高くなんのかな?)
と、ここでそろそろ聞きなれてきた天の声が頭に響く。
【798524の経験値を得ました】
(すげーなおい)
【"災厄の毛虫"がLv2に上がりました】
(お、やったぜ)
【"災厄の毛虫"がLv3に上がりました】
(うんうん、あいつレベル高かったもんなー)
【"災厄の毛虫"がLv4に上がりました】
(まだいっちゃうかー)
【"災厄の毛虫"がLv5に上がりました】
(まぁ俺のレベル低かったからな)
【"災厄の毛虫"がLv6に上がりました】
(上がりやすいんだろーなー)
【"災厄の毛虫"がLv7に上がりました】
(ほうほう)
【"災厄の毛虫"がLv8に上がりました】
(ふむふむ)
【"災厄の毛虫"がLv9に上がりました】
(そいでそいで?)
【"災厄の毛虫"がLv10に上がりました】
(うんうん)
【"災厄の毛虫"がLv11に上がりました】
(そだねー)
【"災厄の毛虫"がLv12に上がりました】
(……)
【"災厄の毛虫"がLv13に上がりました】
()
【"災厄の毛虫"がLv14に上がりました】
(…………えっ? これ全部ちゃんとやんの?)




