マレー沖海戦3
1946年5月3日 クレムリン
「...つまりこの戦いは傍観に徹したほうが良いというのかね?」
いつもなら部下の言うことを聞かないスターリンだったが、
対独戦の功労者であるジューコフの言葉には耳を傾ける。
「いえ、そういう訳ではないのです。優勢な方に肩入れして確実に勝つのが大切です」
たしかに対独戦で疲労した国力をとりもどすには内政をメインにしたほうがいいだろう。
だが対日戦で不参加となればアメリカとの無用な摩擦が起きてしまう。
「それはまだ早い。それ相応の海軍力をつけなければ」
ソ連海軍が陸軍より劣っているのは確かだ。
ならば海軍を増強したらいいとの声もある。
しかし世界最強の陸軍と世界有数の海軍を保有するとなると莫大な費用が必要になる。
「それならば、有数の海軍を持つ国と同盟を結んではどうでしょうか」
より堅実な案をスターリンに言う。
「我々の最終目的は全世界赤化である!そのためにはアメリカ打倒も辞さない!」
世界地図の極東部を赤く塗りながら満足そうに言った。
1946年5月3日 マレー沖
第一艦隊は東洋艦隊を追っていた。
「敵艦隊再視認!距離3万7000!」
航空隊の連絡をうけ此処にやってきたが正解だったようだ。
連絡どうり敵戦艦プリンスオブ・ウェールズとレパルスは航行不能に陥っている。
「もっと距離を詰めよ!砲戦距離2万4000!」
近距離で一気にけりをつけるようだ。
こちらも敵弾に当たりやすくなるが、山本は博打にでた。
「目標3万5000!」
「3万3000!」
全艦が恐ろしいほど静かになり、針でも落とせば全艦に響くような静かさである。
「目標3万!」
山本長官はまだ口を開かない。
「2万8000!」
命令を待ち杉野艦長は山本の顔を見ているがまだ口を開かない。
「2万6000!」
「面舵いっぱい90度!」
山本はようやく口を開いた。
「目標2万4000!」
「使用弾、徹甲弾!」
「照準よし!」
「装填よし!」
「撃てー!」
轟音とともに16インチ砲弾16発が飛び出し、
亜音速で飛翔して敵艦プリンスオブ・ウェールズの頭上に襲い掛かった。
終わり方が同じ気がする...。