マレー沖海戦2
1946年5月3日 ワシントンDC
「我々は日本と戦う必要はあったのだろうか...?」
大統領府で1人の男が悩んでいた。
「マーシャル参謀長の提案や前大統領の方針であったのだが...」
この男、トルーマンは副大統領だったのだが、
前大統領が心筋梗塞で倒れてから大統領になったのである。
このような仕事は初めてであり、もちろん経験はない。
ではなぜ副大統領に選ばれたかというと派閥争いで選ばれたのである。
「日程どうり進んでいれば、日本軍はマレーでイギリス艦隊と雌雄を決しているころだろうが...」
イギリス東洋艦隊が弱くないのは知っており、
多少の艦艇差があっても惨敗することはないと見積もっている。
だが、無傷で残るのは困る。戦後は無傷の艦隊の数が物を言うからだ。
「戦後のリーダーシップをとるのは大英帝国やソビエト連邦ではなく、我らアメリカ合衆国である!」
この願いを実現するために東洋艦隊はぜひとも消えてほしい。
そう考え、連合国の勝利を信じて疑わなかった。
「マーシャル参謀総長に伝えてくれ。小笠原進攻 スカベンジャー作戦の実行を許可するとな」
1946年5月3日 ロンドン
チャーチル首相は東洋のことが気がかりであった。
「イギリスはドイツを相手に1番勇敢に、そして被害を出しながら戦った」
イギリスから見れば第2次世界大戦はもう終わったようなものなのだ。それなのに...
「それなのに、東洋に派兵する余力はない...」
たしかに対独戦でイギリスは本土爆撃をうけ、復興が第1目標であった。
「しかし我ら大英帝国の復活のためには致し方ない犠牲である。戦後は大英帝国が覇権を握るのだ!」
そのためには植民地を増やし、アメリカを再度抜かさなければならない!
チャーチルは東を見ながらそう考えた。
1946年5月3日マレー沖
妙高型はイギリス駆逐艦に善戦している。
「装填よし!撃てー!」
重巡の8インチ砲弾が勢いよく飛びだす。
使用弾は徹甲弾ではなく榴弾だが、
装甲がほとんどない駆逐艦には効果的になっている。
「弾着!2発命中です!」
この2発が致命傷となった。一瞬で廃艦となり病床の老人のように、ゆっくりと沈んでいった。
「敵機視認!数は約20機です!」
「チッ、間の悪いところに」
フィリップスは自分の不幸を憎む。次から次へと厄介が降ってくるのである。
「All Weapons Free!」
流星隊は熾烈を極める対空砲火の中に突っ込んでいく。
「よーし、おまえら!降下開始だ!」
隊長の坂木修一大尉は1番乗りで降下する。
流星は雷撃、急降下爆撃、要撃をこなせる万能機だ。
今回は魚雷は積めなかったが、800kg爆弾を搭載している。
例え戦艦でも当たれば無傷とはいかないだろう。
しかも今回狙うのは煙突である。当たれば航行不能になってもおかしくは無い。
「よし、投下だ!」
20機中12機はプリンスオブ・ウェールズに、8機はレパルスに投下した。
やがて煙の色に同化して、爆弾は見えなくなった。