マレー沖海戦6 空襲
遅くなりました。
1946年5月3日マレー沖
「対空戦闘用意!」
艦隊に近づく編隊を前にラッパが鳴り響く。
「使用弾、三式弾!」
まずは40cm砲8門、2隻の計16門の砲撃から始まった。
大空に咲く大輪の花は上を飛んでいた爆撃機3機を巻き込んで炎上、蒸発。
残った爆撃機の1機は雷撃機を残して、慌てて逃げかえった。
やがて雷撃機隊は高射砲の射程に入った瞬間、視界が黒煙に包まれてしまう。
「畜生、ジャップの野郎!爆撃隊がやられちまった!」
雷撃隊は上空の惨状がみえていたが、それに構わず果敢に突撃を敢行していた。
「奴らの敵討ちだ!全機攻撃開始!」
敵艦との距離300mで魚雷を投下する。1機落とされてしまい、
5発の投下になったが、長門、陸奥の2隻に集中したので戦果は見込める。
「やっちまえー!」
そう言った途端激しい衝撃が機体を襲う。
この感覚を最後に意識が途切れた。
「敵機魚雷を投下!」
魚雷が艦の右舷に迫ってくる。
「取り舵いっぱい」
「取り舵いっぱい、ヨーソロー!」
長門は2本、陸奥は3本の魚雷が直前まで迫っていた。
長門の船体が左にゆっくりと曲がる。
2本を躱すことができたが、もう1本の狙いは正確だったようだ。
艦橋まで届くような高さまでのぼった水柱が現れた瞬間、
激しい衝撃が船体を大きく揺さぶった。
杉野艦長は衝撃に耐えながら、横目で陸奥の様子を見ていた。
陸奥は3本全ての魚雷が命中。早くも、黒煙が上がっている。
「第3機関室に被雷、浸水!」
「排水電路損傷!」
この報告から考えれば、大破ではなく中破だろう。
そう考え杉野は胸をおろしたが、陸奥のことを思い出し溜息を吐いた。
空襲から1時間ほど経ち、被害の全貌が明らかになった。
被害は長門、陸奥の2隻だけで長門は中破、陸奥は大破という結果だった。
長門は1本の被雷により、第3機関室に浸水し、速度が26ノットから18ノット。
陸奥は3本の被雷により、3か所浸水、9ノットに減速。
一方戦果は6機撃墜で高い撃墜確率を誇った。