神話の始まり
神になって種族を創り観察し
手を加え反映させる
そんなモノポリー的な話です
恐竜の化石ほど
少年の心をワクワクさせる
存在はない
太古より
この地球上で
最強の生物であり
ロマンを感じさせ
少年の想像を擽る
ヒーローである
恐竜好きのその少年は好きが講じて
遂には恐竜専門の職業に就いた
これは恐竜の骨の発掘に人生を掛けた
男の話
俺の名は 堀部神流 ホリベカンナ
30年以上恐竜一筋で
やってきた化石発掘家だ
俺には長年の夢がある
恐竜の王…ティラノサウルスの骨
その骨をこの手で発掘する
その為に単身アメリカに渡り
長年探し続けた
「金が無い」
だけど遂に資金が底をつき
今週中に見つけられなければ
日本に帰国するしか無くなった
俺は最後の望みを掛けて
恐竜の骨を探す
「この崖…多少危険だけど
登ってみるか」
もう夕方だ…時間切れ寸前
「どうか…ここに俺の恐竜が眠っていてくれ頼む!」
ガッ!
俺は指先に確かな感触を感じた
「まさか今のは」
俺は一筋の希望に全てを掛けて
ハンマーでタガネを打った
「南無三!!」
その手応えは間違いなく化石だ
ガシガシと無心で岩を削る
何十分…何時間
やがて日が落ち
あたりが漆黒の闇に包まれ
俺の手が止まり気がついた
ヘッドライトに照らされる
その姿は紛れもなく
「俺は夢を見てるのか?」
俺はいつの間にか泣いていた…
巨大な王の遺骸…
遂に見つけた
「 Tレックス 」
そこで俺の一生分の運を使い果たしても
悔いは無い!そう思ってこの骨を見つけた
そう言えば
俺は崖を登る装備に金を掛けていなかった
ここでロープが切れたら笑い事じゃ済まない
そう思ったその時…ロープは切れた
俺は落ちる
最後の瞬間まで
偉大な王の骨を崇めながら
見ながら落ちた
……
…
気がつくと
俺は
一つの精神体となっていた
「バ…」
「バンゴラー」
声が聞こえる
やがて
始まりと呼ばれる声が
「バンゴラー?」
俺の名を呼ぶのは誰だ?
「我は…マントルお前の父だ」
「俺の父親?」
もう一人の声が聞こえてきた
「そして私はお前の母
リソスフェア」
何言ってる
俺には
ちゃんと日本に
おとんもおかんもおるんやで!
だけど今の俺は意識だけの存在であり
形をなしてない
「あなたの好きな姿にお成りなさい」
どんな姿にですか
母上
俺は自然にその存在を母と認め
問いかけていた
「望みのままに…どのような姿にもなれます」
その優しい声が聞こえ
俺は一つの形になった
「俺が一番成りたい姿は…恐竜の姿だ!」
その姿は…例えるなら巨大な白鳥
羽毛に覆われたカラフルな体毛
頭の先から尻尾の先まで
美しい獣の姿だった
「そうか…人類の考えた想像の恐竜とは
化石にそのまま肉と皮をつけただけの
丸裸状態の鳥肉」
美しいという発想は無かった
だけど本当の恐竜は
美しく気高い生き物だったのだ
「恐竜と言う名も人間が勝手につけた種族名に過ぎない」
父神であるマントルがそう言って俺に
光り輝く生命源サイクルを渡す
「神の子バンゴラーよ
それでお前の大陸にお前の血肉を与え
子を創り育てなさい」
俺はマントルに言われるとおりに
血と肉を分け与え自分の姿に似せた生き物を
その巨大大陸に産み出した
神の目線で見れば小さくて可愛い
豆粒みたいに見えるその生き物
だが実際は数十メートルの巨体を持つ
恐竜だ
「いや…たしかに恐竜だけど
俺が作ったんだから種族名は
違うものにしようか…」
閃いた名が頭に浮かぶ
「プレート…」
俺の恐竜達の種族名はプレートにしよう
その中でも特に気に入ったプレートがいた
ティラノサウルスだ
「えこひいきじゃないけど…やっぱり
好きなものは好きだしね」
神である俺が目をかけただけはあり
ティラノ達はバンゴラ大陸で繁栄し
国を作った
「他にも沢山のプレートが国を作っているみたいだけど
やっぱりティラノの国が一番綺麗でいい感じだ」
その時俺の横合いから声がした
「なかなか面白い物創ったみたいじゃないか
俺にも遊ばせろよ」
声に驚きそいつを見た
そいつは黒く禍々しい流動体だったが
俺に見られることで俺と似た姿に
変化した
「お前は誰だ!?」
その黒い体毛に覆われた怪物の頭に
赤い線が入り目と口になった
その目は俺を鋭く射抜き
敵意を滲ませる
その時マントルの声が聞こえる
「お前には教えていなかったが
そのものはお前の兄ヌーナだ」
「ヌーナ?」
俺はひと目見ただけで
こいつとはウマが合わないと感じた
「他の兄弟達も紹介しましょう」
母神であるリソスフェアがそう言うと
同じように3人の神の子が出現する
「長兄アフロユーラシア」
巨大な首長竜の姿をしている
…俺に感心が無さそうだが敵意は感じない
「次兄ヌーナ」
俺と同じティラノの姿をしているが
言うまでもなくこいつは敵だ!
「姉のローラシア」
見たこともない恐竜の姿…
新種と言うか、まだ
発掘されていないだけだな
そしてメスだった
「4番目の子はあなたよバンゴラ」
ローラシアが口を開く
「あなたは想像の力を持つ選ばれし神…
だからあなたの持つ想像力で私達神は
初めて形が出来たのよ」
なるほど俺がここに来た理由が其れか…
想像力というか…俺の恐竜の知識が必要とされてるわけだ
父神であるマントルの声が告げる
「鶏が先か…卵が先か…全てはお前に掛かっている」
それが父神の発した最後の言葉だった
父神マントルは惑星に同化した
「全てはお前達に託します兄弟で助け合い
この星で良き時代を築きなさい」
母神リソスフェアもそう言い残し
海に同化して消えた
「父神と母神は
我等を産みだし役目を果たしたからお隠れになられた」
アフロ・ユーラシアはそう言いながら
長い首を曲げて星の大陸を見下ろした
「我等の役目はこの大陸に生まれた生き物を観察し
正しい進化を歩ませることにある」
「そのためには役割を分担し
観察の目を星全体に行き届かせる必要がある」
俺は長兄の意見に賛同したが
次兄はやはり気に入らない様子だ
「じゃあ俺は陸上の観察役にしてほしい
他には興味がない」
だが長兄は首を振り
「駄目だ…陸上の観察役はバンゴラーに決まっている」
そう言い切った
次兄は吠える!
「嫌だ!俺は弟より先に生まれたんだ
先に生まれた俺にこそ選ぶ権利がある!」
だが長兄は
「陸上生物の観察は最も難しく細心の
注意を必要とする重要な仕事だ…
兄弟の中で最も優秀なバンゴラーこそ
適任だ!」
この首長の兄さんはまたえらくこの俺を持ち上げるけど
何か企んでるのか?
そしてもう一人の姉さんの方も
「それにバンゴラーの大陸では既に
プレートが彼を神として認知しているから
あなたは神として認知されないでしょうね
ヌーナ」
そう言われヌーナは怒りの表情をつくるが
「やめなさいヌーナ!また打ちのめされたいの?」
ヌーナをローラシアが逆に睨みつけると
急に大人しくなった
どうやらヌーナは以前ローラシア姉を怒らせて
酷い目にあったらしい
それだけで俺は少しこのローラシアの事が好きになった
「わ…わかったよ…じゃあ俺は
どこを任されるんだ?」
そう言いながらヌーナは惑星を指差し
「海か?」
だが海は俺の予想だと
首長竜であるアフロ・ユーラシアの物だろう
案の定
「海は我が領域…アフロ・ユーラシアの監視下になる」
ヌーナは流石に其れは納得して
同意した
「それはそうだろうな…海は兄神の物だと思ったよ」
その次は空を指差し
「じゃあ俺は空の担当だな?」
その手をローラシアが無言で掴み
「空は私が観察するわ
この翼が目に入らないの?」
そう言って彼女は翼を広げてみせる
気が付かなかったがローラシアは
翼竜だったらしい
「そ…そんな…」
ヌーナは泣きそうな表情に成り癇癪を起こして
そして吐き捨てるように喚く
「それじゃあ俺はどこを任せてもらえるんだ!?」
俺は少しヌーナが気の毒になったが
この手の奴に同情は禁物だ
そしてアフロ・ユーラシアはヌーナに言い渡した
「お前に任せるのは星の地下を、最も広大で
神秘に満ちている地中の観察をやってもらう」
それを聞いたヌーナは怒り心頭に達した
「嫌だ!俺は地中なんて嫌だ!!
バンゴラー!俺と変われ!
お前が地中を担当しろ!!」
俺に牙を剥いて襲いかかってくる
そんなヌーナを牙で威嚇し
尻尾で腹に打撃を叩き込む
そんな俺にヌーナの奴は
足の爪で引っ掻いてきた
「兄に向かって歯向かうとは許さないぞ!
お前なんか殺してやる!」
その言葉に俺も切れた
「おんどれなんぞ最初から兄貴と認めてねえ!
やる気なら本気で殺してやる!!」
そんな俺達二人を巨大な尻尾が押し潰した
ドシイイイン
その押しつぶすような圧力に
俺とヌーナは身動き一つ出来ない
「いい加減にしろ!二人共
神として恥ずかしくないのか!?」
俺とヌーナは
アフロ・ユーラシアの巨体の前に
暴れる気を失った
暫くして落ち着くと俺たちは
星の観察を始める
これが恐竜の神として目覚めた俺の
初日の出来事だった。
どこにでも嫌なヤツ居るよね
人が心血を注いで創ったものを
横取りしようとする奴とか
そんな奴ブッ飛ばすのみ