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旧想像世界  作者:
3/13

陰陽の里 ①

 今日も天気は快晴。東の里「陰陽の里(いんようのさと)」の陰陽寮では、今日も修行に励んでいた。

陰陽寮の朝は4時頃に全員起床、、支度が終わり、全員で外に出て座禅を組み、朝日に向かって呪符のようなものを唱えていた。

「元柱固具、八隅八気、五陽五伸・・・・」

これ、みんな毎日やっているのだ。長く陰陽寮にいれば、どうってことないというが、素人はとてもできることではない。頑張ればできるかもしれないけど。これが終われば、もっときついものが待っている。

陰陽師の使う術は、肉体的にも精神的にも自らを削る激しいものだ。そのため、それに耐えるための身体を普段は練り上げている。肉体の訓練は柔道や空手、居合道などの稽古に励んできた。そして、精神の修業は、苦しいものなのだ。例えば、よくあるのが数日間の断食、一日中木の上から吊るされたり(そこに石を投げてくるいたずら者もいる)、森林をひたすら歩きまわったり・・・・・。

こんなことをほぼ毎日やっているのだ。想像できるか。

 朝の日課を終えた春香は、この陰陽寮の師の指示を待っていた、そこへ「姉ちゃん!」と元気な声がする。

「あら、明楽(あきら)」。

「へへっ」という声を漏らしたこの少年は「土屋(つちや) 明楽(あきら)」である。そう、あなたたちはほとんどがお察しだと思うが、春香の弟である。

「姉ちゃんは今日何すんの?」

「まだ指示はもらってないのです。」

「ふぅーん。俺は柔道をやるんだぁー。」

「まあ、がんばってね。」

「姉ちゃんよりも強いから、俺、そんな心配はいらないぜ。」

「な、なにを・・・」

 姉弟喧嘩が始まろうとした時、また春香を呼ぶ別の声がした。

「はるかーー!」

春香と明楽は声のしたほうに顔を向けると、こちらに走ってくる女の子がいた。

酒井(さかい) (かえで)」、春香よりも早くこの陰陽寮にきた春香の先輩的存在だ。春香をずっと引っ張ってきた。春香にとっては楓は陰陽寮の中で一番かけがえのない存在だった。

「はい、なんでしょう。」

「師匠が呼んでたよ。」

「はい、わかりました。」

春香は走っていった。

「師匠!」

春香はその高い男を見つけると、彼を、師匠と呼んだ。

「土屋春香、遅いぞ、何やっていたんだ。」

彼は「安陪(あべの) 和陽(かずはる)」、この陰陽寮の師である。彼は、伝説の陰陽師の血を引いているという噂があるが、伝説の陰陽師のことは十分に残されていないため、何もわからないのである。

「す、すみません。今日の指示を・・・」

「はぁ、もういい、お前は一週間洞窟の中で暮らしてもらう。」

「そ、そんなぁ!?」

「さあ、いくぞ。」

「はい・・・・・。」

春香は和陽に連れられ、陰陽の里の外に出て行った。

時と場所が変わり、ジメジメした洞窟にやってきた。和陽は、春香を洞窟の中に入れると鋼鉄の分厚い扉を閉めようとしたとき、春香はこう呟いた。

「どうしてこんなことを・・・。」

その声を聴いた和陽は、どこか悲しげな顔をし、

「俺だって、やりたくてやってる訳ではない。」

と言って扉を閉めた。

 鍵がかかる音が洞窟内に響いたとき、春香は一人ぼっちだった。

これも、修行の一つだ。何も持たせずに洞窟の中に閉じ込め、一人で生きさせる修行。どの修行もたくさんの人間が死んでいったが、この修行が一番死人を出した修行だ。春香はここで一週間生きていかなければならなかった。

 




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