~ 大切な 存在 ~
翌日 …
佐野 は 公園へと 散歩に出掛けた …
大きな 噴水の見える 公園のベンチに腰を降ろし
吹き上がる 水飛沫を ボゥ~っと眺めながら …
「 お母さん」の事を考えていた …
私は 難産で 生まれ …
私を生んで
直ぐに 母は 亡くなってしまった …
成長するにつれ …
周りの 友達と 自分を比べるようになり
5才の時 …
実家の裏山にある 立派な大樹に
「母に 会いたい … 」
と 書いて 七夕の短冊のように ぶら下げて 願ったのです …
偶然でしょうが 其の 7日後 …
今度は父が …
心臓発作で 急死してしまったのです …
父の 四十九日も過ぎた頃 …
母が 夢枕に立ち …
「弘 … 七日ダケ … コウシテ 会イニ来ルコトヲ許サレマシタ … サァ … オ話シシマショウネ… 」
そう言って優しく私を慰めてくれたのです …
幼かった 私は 母に甘えました …
日中の 出来事を 事細かく話して 聞かせました …
七夜目の夜 …
「弘 … 今夜デ 最後デス … サァ オ話シシマショウネ …」
と 釘を指す 母に
私は 泣きじゃくり
「嫌だ!!僕も お母さんと行く!!」
と 駄々を捏ねたのです …
翌朝になると …
私は 高熱を出してしまい …
私を 引き取った
父方の 祖父母を 慌てさせたのです …
医者に診せても
医者は 首を傾げ …
「躰のどこにも 異常はありません … 原因が解りません …」
と そう言ったので
祖母は 藁にもすがる思いで
「拝み屋 」と言われる
霊能者を頼ったのです …
その 「拝み屋 」と言うのが
偽物の詐欺師で …
「お孫さんは 先祖の祟りにあっています! 一刻も速く 命の蝋燭で 消えかけた炎を移しかえなければ!! お孫さんは 死にます!!」
と蝋燭を買わせ …
「貴女と… 否 違うな! 貴女の ご亭主だなっ! この 先祖の祟りを鎮めるには 祈祷を今直ぐ始めなければ!!」
等と 嘘をつき …
祖母から 大金をせしめたのです …
祖母は 家に戻り
祖父に話したのですが …
私の熱が 下がるどころか
逆に上がってしまったので …
普段 温厚な祖父が 怒り狂い
鎌を手に持ち 祖母を追いかけ回し
「殺 さ れ る -!!」
祖母は叫びながら
近所の家に助けを求めた そうです…
母が どの時に 此の事を知ったのかは
私にも 解らないのですが …
翌日の早朝 祖父母の家の 新聞受けに
「殺さないでー!! 」
と書かれた 紙と 祖母が 祈祷師に払った金額と同じ額の現金が 押し込まれていたのです …
私の熱は その朝に 平熱となりました …
ですが …
今度は 母が …
帰るべき場所に 戻れなくなってしまったのです …
其から ずっと …
母は 私の側に居ます …
若い頃は 結婚も 考えましたが …
母に悪気は 全く無いのですが …
気になるのでしょう …
私が どのような女性と つき合っているのかが …
女性は 敏感な方が 多いようでして …
母が 少し覗いただけで …
「キャー! 生き霊 !」
等と言われましたよ
いえいえ 母は
死んでいるんですけれどね …
今は 此の年ですから
結婚 云々は 考えていませんが …
私が 死んでも …
母が 此のまま なのでは 無いか …
其が 気がかりでしてね …
実は 今迄 …
何度も 母を 成仏させようと
有名な 霊能力者の方にも 相談したのですが …
母の 想い …
母の念と言うものが 異常に強く …
全てを
跳ね返してしまうそうなのです …
どうしたら 良いものか …
あの 卵形の変わった石なら
何とかしてくれるような 気がして…
裏野ハイツに引っ越しましたけれど …
気のせいだったかな …
後 三年で 定年退職だし
母さんを連れて 出家でもしようか …
其しか ないだろうな …
弘に とって 母は …
何者にも 変えがたい 大切な存在だった …




