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オープニング

少し不思議。いや、少なからず不思議なSFの作品、だと思います。

デカイお屋敷、私の視線の中にはそれしか映っていなかった。

「うわぁ……」

思わず声が漏れた。それほどに大きくて、とても古い感じの、そしてなにかありそうな雰囲気満載のお屋敷だ。

「ここなら、絶対何かあるはず」

私は手に持っていた物を鞄の中に終い、庭を通って玄関へと歩を進める。

私の背よりも少し高い観音開き型の古めかしい扉の前、そこにドアノブを見つけた。

「……」

さすがに、少しばかり怖くなってきたかな。

でも、何の為に私がここに来たのか、それを思い出すと、そう言ってられなくなってくるんですよ!





「だからさ! 私とひかりんで探索しようよ!」

「私はいいわ、後、ひかりんって呼ばないで」

それはまだ午前中、ちょうど二時間目後の休み時間に、私、七宮(ななみや)朱里(あかり)が友達にして似た波長を持つクラスメイト、朝香(あさか) (ひかり) にある提案をしていた時のことだった。

「えー、かわいいよ、ひかりん」

「今気にするところはそっちじゃないでしょ?」

と横からツッコミを入れて来たのは塩波(しおなみ)菜子(さいこ)、私の昔からの幼なじみだ。

「あぅー、じゃあしおなん一緒に…」

「ゴメン、あたしもパス」

「即答ですか」

「あたしは光や朱里みたいな波長は持ち合わせてないからね」

私やひかりんみたいな波長。それは、非日常に憧れていること。

日常という現実から一歩隣に歩いた所にある日常、それが非日常。誰かが言っていた言葉だ。

私にはよく意味が分からないけど、要するに普通とは違うところに行くと普通とは違うものが見れるということだよね。

だから私は、考えたのです。

「でも、本当に何か見つかるかもしれないよ? コレで」

今私の両手には二本の棒が握られていた。それは途中から直角に曲がっているL字型のもの。いわゆる、ダウジングというものだ。

「それで見つかるのは地下の金属や鉱石だけだって、その非現実なものに反応する訳ないじゃない」

「ふふふ、甘いねしおなん。コレは市販の物とは違うのですよ!」

じゃきーん! とダウジングを交差して突き上げた。

「まず売ってないでしょ」

「なんとこのダウジング! 金属棒ではなく木材で出来ております!」

「え? まさか手製?」

「木材2つをL字にあわせて角を削り、銀色の絵の具を塗ったのです!」

材料費は1,250円なり。

「これこそ! 不思議検索装置ナンバー6! 不思議ダウジングマシン!」

再びじゃきーん!

「……そんなのがもう6個もあるの?」

「こういう子なのよ、朱里は」

「ひかりん。しおなん。コレを信じて一緒に…」

「「ゴメン、無理」」

ステレオで即答されました。

「ダメよ朱里、光は今、愛しのあの人が心配で仕方ないんだから」

「なっ! べ、別に私は夜月のことなんて…」

そう言うひかりんの顔が真っ赤になった。

「おやぁ? 別にあたしは夜月君だなんて一声も言ってないんだけど?」

「あぐ…」

口をぱくぱくさせるひかりんを見てしおなんはニヤニヤと笑う。

ちなみに夜月(やづき)君とは、今年転校してきた帰国子女の男の子のこと。ひかりんととても仲が良かったけど、家の事情とかでまた外国へ帰ってしまったのだ。

「そ、そういう塩波こそ、アイツとはどうなったのよ」

「え? い、いやあたしと浜樫はそういう関係じゃな…」

「おやおやぁ? 別に私は浜樫なんて名前は言ってないけど?」

「あぅ…」

立場が逆転した。

ちなみに浜樫(はまかし)というのは、同学年の男子生徒で、野球部期待のエースと呼ばれているらしい。しおなんはその野球部のマネージャーで、浜樫とのそういうウワサがたくさん流れているのだ。

「そうやって慌てるところがいかにも怪しいわね」

「あぅ……そ、そっちだって夜月君を…」

「……えぇ、そうね、認めてもいいかもしれないわ」

「な……!」

その時、チャイムが鳴った。休み時間の終わりだ。

「次の授業なんだっけ?」

「数学よ、二人とも早く席に戻りなさい」

私としおなんは互いの席へ戻った。

ふと、ひかりんの方を見てみると、

「……」

何か思いつめるように、もしくはその先にいる誰かを見ているように、窓の外をぼんやりと眺めていた。

詳しくは知らないけど、ひかりんは夜月君や他の生徒と共に非日常に行っていたらしい。そこで起こった何かが夜月君が外国に帰ってしまった理由に繋がっているらしく、以降ひかりんはあんな感じだ。

だから、新しい不思議を見つけて、ひかりんに教えてあげるんだ!





という訳で放課後になり、私は自作ダウジングを持って住宅街を歩いていた。

「むむ…」

けれどピクリとも動かない。やっぱりこういった普通の生活感溢れてるところじゃダメなのかな? やっぱり森の中とか、そういうところの方が反応があるのかな?

一応裏道に裏道に向かってるつもりなんだけど……

その時、ダウジングに動きがあった。

「あ!」

その場に立ち止まり、三百六十度回る。そして一番反応があった方向へ進むと、徐々に反応が大きくなる。

これは、何かがある!

と思った瞬間、ダウジングが左右に大きく開いた。

「おぉ!」

そこは左右を生け垣に挟まれた一本道、行くべき先は、正面しかない!

私は慌てて走って道から出て、左右を見た。

右、何もない。

なら左は、人が2人居た。

一人は小学生くらいの女の子、何だか泣いていたみたいに目が赤い。

もう一人は男の人、その人の手には風船がある。

「はい、取れたよ」

男の人が女の子にその風船を渡した。

「ありがとう! お兄ちゃん!」

嬉しそうに笑った女の子は、風船を受け取ると手を振りながら走っていってしまった。

「もう離さないように気をつけてねー」

男の人も手を振って見送った。

「?」

ダウジングはこの方向に反応している。でもそこには今、男の人だけだ。

改めて男の人を見てみる。上下黒い服、スーツに見えるけど、似た感じの違うものだ。金色に近い髪の色、あれは何色っていうんだろう? そしてフレームの無いメガネをかけている。

うーん、不思議な人だ。だからダウジングが反応したのかも。

でもきっとこの辺に住んでる普通の人だと思う、見たことないけど。

「……ん?」

その時、男の人が私に気付いてこちらに歩いて来た。

すると、

「え?」

ダウジングの反応が大きくなった。左右への開きが大きくなる、それどころか、回転し始めた。

「えぇぇ!」

やっぱりあの男の人に反応してるんだ!

「どうかしたのかな?」

この人、何か不思議と関係があるんだ!

「あ、あの…」

「ん? ……君、もしかして」

回るダウジングを気にしていない男の人は、私の顔を見て、

「仕事の依頼かな?」

「……はい?」

仕事の依頼?

「あぁゴメン、言う順番を間違えたね」

男の人は服の内ポケットに手を入れて、一枚の紙を取り出してそれを私に差し出す。

「僕はこういったものでね、すぐそこで……おや?」

頭の上に手をやった男の人は辺りを見回した。

「どうしました?」

紙を受け取り訊いてみる。

「いや、帽子が……あ」

上を向いて男の人が声を出した。私もその方向を見ると、電柱のテッペンに黒い帽子が引っ掛かっていた。

「あちゃー、さっきのだ」

「さっきの?」

「女の子が電線に引っ掛かけてしまった風船を取ってあげてね、その時に飛ばされたようだ」

さっきのはそういうことだったのか、優しい人なんだな、この人。

「仕方ない、もう一回使っても大丈夫だろうし」

すると男の人は、

パチン!

良い音をたてて、指パッチンをした。

「へ?」

そんなことで取れる訳が……

瞬間、風が吹いた。しかも、下から上へ。

その風は電柱の上に引っ掛かった帽子へ到達して、宙に浮かせ、そしてそのまま――――帽子は上空の風に乗って飛んでいってしまった。

「しまった。やり過ぎた…」

男の人は帽子を追って走り出してしまう。

「え? あのちょっと!」

まだこの紙のことを聞いてないのに。

「ゴメン! 依頼はまた今度ね」

一度だけこちらを向いた男の人はそれだけ言ってから、UFOのように浮く帽子を追いかけて行ってしまった。

「……」

今の風、明らかに人工のもの。男の人が指パッチンしたら生まれた感じだった。

指パッチンで風を起こすなんて……やっぱりあの人は不思議と関係があるんだ!

ほら! あの人が行っちゃったらダウジングが止まって―――――ない。まだ微かに反応していた。

「あ、コレ…」

それはあの人がくれた紙、そこにはこう書かれて……

「……何て読むんだろう」

紙にはこう書かれていた。


漆積探偵所

探偵  逸見 無良


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