綿が出て三千厘4
全宇宙から愛されるテディベア。
その愛され方、加減を知らないよ。
多分。
そんなテディベア、ファンタスが今日もまた、おもちゃ屋へ向かい、そして愛される。
か、どうか。
自らお店のワゴンセールに身を投じ、天井を見つめる。君の輝く黒い目は、何を映すのか。
そうだね。
赤く燃えたぎる、情熱の光景。
君に安らぎを覚える子供との出会い。君を激しく抱き寄せ、安堵して眠りに落ちる子供。ずっと側にいてね。そう語りかける。
そんな出会いは、まさに情熱?
いや、赤く燃えたぎる、炎。
そう、ファンタス。
これは、
火災だね。
ただ、今のお店には、スプリンクラーというものがあって、火災の時には、天井から激しいシャワーが出て、火を消してくれるはずなんだよ。
何で出ないのかって?
ファンタス。
僕は、お店の支配人じゃないし、防災関連のお仕事をしている人ではないからね。
多分、どっちかが悪いんじゃないかな。
さっきから、慌てていないけど。
逃げないと。
燃えるぞ。
後、縫い目から綿が出てる。
お客様の品定めで、そこがはじかれる重要ポイントなんだ。
縫っておきなさい。
今じゃないよ!
…止めなさいって。