~パンドラの棺編~第七話
こんにちわ講和淵衝です。
第七話すっかり遅くなってしまいました、いやぁ本当はもう少し早くに投稿する予定だったのですが何かと忙しいもので
そんなことは置いておくとして・・・
第七話ですよ、今回は準備回そしてちょっとした休憩回とでもいいましょうか
ここまでの冒険を振り返ったり、予想外な展開になってきたり
謎が謎を呼ぶ第七話、さてさて開幕です。ごゆっくりどうぞ~
第七話「疑問と貴族」
「気分はどうだ、セレナ?」
「う、うむ・・・ちょっとは・・・」
「あんまり無理をするなよ。寝てたっていいんだからな」
「な、何を言っている!ベイカー、私は無理など・・・うぷ・・」
「ほら、いわんこっちゃない、おいディスこいつを休憩室まで連れて行ってやれ」
「はいはい、まったく、だから休んでてくださいっていってたのに」
「う、うるさい!お前まで・・・うぷ」
「ほら、とっとと、行きますよ。舵はまかせるよ、ベイカー」
「おう」
私は、ディスに身体を支えてもらいながら、休憩室に向かった。
私と、仲間であるベイカーとディスは、隊長の依頼を受けた後、すぐに行動を始めた。まずは、フロンティア大陸の中を探すことにした、王襲撃からさほど、時間も経っていなかったので、おそらく大陸内に残っている確率が高いであろうというのが三人の一致したところだった。
しかし、大陸内をくまなく一週間ほどかけて、探したが姫様は見つからなかった。しかも、同時におこなっていた、ギルガメッシュの調査についてもこれと言った進展はなかった。
そこで、大陸を出ることにしたのが、ついさっきのことで、すぐに軍船を一隻用意し、まずはここから一番近い大陸である、星詠大陸スターリングに向かった。
そして、かれこれ一時間近くたっているのだが、私は船酔いがひどい方で、案の定すぐに酔ってしまった。
副隊長として、情けない限りだった、姫を見つけることもできず、船に乗ったらすぐに酔って仲間に支えられる、本当に情けない。
「すまないな・・・ディス、私が情けないばかりに・・・」
「何を言っているんですか、セレナらしくもない、そんなんじゃもっと姫を見つけることなんて、無理ですよ」
「それもそうだな・・・しっかりしないと、うぷ・・・」
「とにかく、今はしっかり休んで」
「ああ・・・」
そんな、話していると不意に船が大きく揺れた、まるで何かにぶつかったようだった。
「な、なんだ!」
「こ、これは・・・うぷ・・・もっと揺れがひどく・・・」
「セレナはここにいてください!外を確認してきます!」
「ちょ、ちょっと待て・・・私も・・・」
ディスは私の声も聞かずに休憩室から出て行った。何が起きているのかは分からないが、なんだか胸の奥がモヤモヤしていた。
もしかしたら、何かよからぬことが起きるんじゃないだろうか、気が付くと私は、無理やり身体を起こして、甲板にむかった。
甲板にでるとそこには信じられない光景が広がっていた。
「ベ、ベイカー!ディス!」
「こ、来ないでください!セレナ!」
二人は、巨大なタコの足のようなものに捕まっていた。
「なんだ・・・これは・・」
「どうやら、俺のミスで、この近海に住んでいる海霊獣にぶつかっちまったらしい!」
「まったく、貴方という人は・・・」
「わりぃな、まぁ何とか脱出するぞ、セレナの奴が無茶する前にな」
「そうですね、でも、もう遅いみたいですよ・・・」
「いいか!二人とも私が助けてやるからな!」
セレナは、愛用している二丁拳銃を構え攻撃態勢をとっていた。
「ばか!下手に刺激したら・・・」
ベイカーの言葉を聞く間もなく、セレナは海霊獣にむけて弾を放った。セレナの放った弾は見事に的中したがそれが余計に相手を怒らせることになってしまった。
〈海霊獣〉は怒り狂い船をつぶしにかかってきた。更に船の揺れは激しくなりセレナもたっていられなくなる。
「やばいな、このままじゃ船が沈んじまう。くそが!」
「チェックメイト・・・ですね」
「あぁ・・・二人とも、私が焦ったせいで・・・」
「な、何言ってるんだよ、セレナが助けようとしてくれたのは嬉しかったですよ」
「ええ、そうです。最後まで、セレナが副隊長として僕らを助けようとしてくれたこと、きっと忘れませんよだから・・・」
その言葉を最後に船は砕け散り、セレナは海に放り投げられることになってしまった。
・
「ふぅ、やっと戻ってこれたな、ここまで」
「そうですね、下山するのも一苦労でした」
「何を言っているんだか、これからの冒険、これくらいでへばっているようじゃ前に進めないぞ、二人とも、特にフラン」
「わ、分かっています!私ばっかり責めなくても・・・」
「何か言ったかい?」
「まぁまぁ、お前らそこらへんにしておけよ。それよりも、バスティーユまでどうやって行くか考えないとだろ。こんな事態になってるんだから」
俺たち三人は、里を離れ下山し、魔術都市キャラリングに戻っていた。しかし、戻ってすぐに問題が起きていた。
「まさか、軍がここまで来ているなんてね、まぁ王が死んだんだ。当然の処置といえばそうだけど、まさか姫まで指名手配するなんて」
「本当ですよ、許せないです!」
「ハルトはいいとしても、俺とジェシカ、それにグランとシェリルは指名手配されてる。船に乗ることはできないだろうな」
「でも、船に乗ることが出来なかったら、外の大陸には出れないぞ」
「ああ、だとしたら、方法はただ一つか・・・」
「なんですか?レイル?その方法って」
「もちろん、隠れて乗り込むんだよ」
「やっぱり、それしかないか・・・」
「そ、それはいけません!」
「でもそうでもしなきゃ、捕まって元も子もなくなっちまう、そしたら意味ないぜ」
「でも・・・」
「確かに、僕も少し気が引けますが、現状ではレイルの意見に賛成です」
「よし、とりあえずはそれでいこう。あとはどうやって港に出るかだな」
「それなら、僕が裏道を知っているよ。表を通るよりは比較的に安全だと思う」
「道案内は任せたぜ」
「よし、じゃあ行こう。こっちだ」
「なんか、裏道ってドキドキしますね」
「まぁ、フロンティアや、これから行くバスティーユの裏道よりは、どちらかというと安全で裏から見る綺麗な街並みがいいってのは昔聞いたことがあるな」
「それはそうでしょう。ここは昔の神話聖戦の時でさえ非戦闘地だったとこですからね」
「そういえば、俺もそんなことを古文書で読んだな」
「はい、それなら私も読んだことがあります。あの〈神話聖戦〉は我が王族にとって忘れることのできないものですから」
「そうだな、お前の一族があの戦いを終戦に導いたんだもんな」
「でも、その裏では結局革命を歌った人間たちがみな貴族になって、その後は最悪だったけどね」
「そうなんですか?」
「箱入り娘だったお前は何もしらないだろうな、まあ、今から行くバスティーユで嫌というほど現実を見せられるさ」
「そうだね。あの大陸は、ある意味罪人と一緒に自分たちの罪を王族が閉じ込めたところだしね」
「むぅ・・・二人して、私を除け者扱いしなくても・・・」
「悪い悪い、そんなつもりはないんだ。ただ、お前も知らなくちゃいけないと思ってな」
「ぜひ、教えてください!」
「それもいいけど、ほら二人ともついたよ」
「案外早く着くのですね。裏道っていいものです」
「それより、港には軍は居ないみたいだね。どうやら、大陸内の捜査を重点的にしているみたいだ」
「そうだな、だが妙じゃないか?」
「なにがです?」
「いや、万が一包囲網を抜けられて、港に到着されることも考えられるだろうにどうして港には誰もいないんだ?」
「確かに、不自然と言えば不自然だね」
「とにかく、私たちの運がいいということですよ!今のうちに、出港予定の船の確認をしましょう」
「そうだな、考えていても仕方がないな・・・いくぞ」
「そこまでだ!やっと見つけたぞ」
港にでようとしたその時、後ろから声が聞こえた、振り返ると自分達に向ている銃口が目に入った。どうやら、港に出ることに気を取られすぎてしまったようだ。
「くっ!隙をつかれたか・・・」
「喋るな!いいか、そこの男二人は所持している武器を捨てて、両手を上げろ」
「その声・・・もしかして・・・やっぱり、セレナじゃないですか!」
「はい姫様、お久しゅうございます。しかし今は挨拶を交えている場合ではありませんまずその賊たちを退けるのが先です」
「待ってください!この二人は賊ではありません。まずは話をしましょう!」
「いえ、話すことなどありません。私が来たからにはもう安心です、さあ姫様はこちらに」
「いいえ、すみませんが私はそちらに戻るつもりはありません。それに、彼らは私の恩人です。その恩人に銃を向ける者は誰だろうと許しません!」
「姫様!」
「分かってください・・・今、戻ってしまうと父の遺志を無視してしまうことにもなるのです」
「お父上・・・王の遺志、ですか」
「そうです。私はその遺志によって、ここまで来ました。そして、これからも歩み続けます」
セレナはジェシカの言葉をただ静かに聞いていた。その場に、しばらくの沈黙が流れる。
最初にその沈黙から口を開いたのはレイルだった。
「なぁ、セレナさんといったか」
「なんだ」
「まずは、落ち着いて話し合いをしないか?」
再びの沈黙ののち、セレナは、ゆっくりと銃を降ろした。
「・・・姫様の覚悟、しかと聞かせて頂きました。ご立派になられましたね。姫様」
「はい、セレナも元気そうでなによりです」
「そうか、この人が前に話していたセレナさんって人か」
「はい、私の初めての友人です」
「そんな、姫様、友人だなんて・・・恥ずかしいです」
「まったく、また変な人が出てきたね」
「まぁ、いいじゃねえかハルト、それよりもさっきの言動あれはジェシカを試していたんだな」
「試す?」
「ああ、どんな事情かまでは知らないが、おそらくそうだろう」
「その通りだ。申し訳ありません、姫様その者の言う通り試させて頂きました。しかし姫様が自らの意思で行動されていると知って安心しました」
「そうだったのですか。よかった、セレナと戦いたくはなかったので」
「とりあえず、どうしてここに来たのか説明してもらおうか、セレナさん」
「そうだな、だがここで長話をするのは、危険だ。軍もいつ戻ってくるか分からない」
「貴方は軍と一緒に動いていたのでは?」
「いや、事情があって、今は単独中だ、その事情も含め話をしよう。私が今泊っている宿に案内する」
「行きましょう。案内お願いしますね」
「待て、二人とも」
「どうしたんですか、ハルト?」
「そんな簡単に彼女を信じていいのか、もしかしたら罠かもしれないだろう」
「そんなこと!どうして貴方はいつもそうやって・・・」
「いや、ここはハルトの判断が正しい」
「レイルまで・・・どうしてなんですか!」
「いえ、姫様この二人の判断は正しいです。すまなかったな、これで信じてもらえないだろうか」
そういって、セレナは持っている二丁拳銃を地面に置いた。
「私は非戦闘状態だ。これで文句はないだろう」
「これで、文句はないよな?ハルト」
「まったく、僕も非戦闘状態の人間まで疑うつもりはないよ」
「そういうことだ、セレナさん、その銃は愛銃なんだろう?使い込んでいるようだが、しっかりと手入れもされている。大事にしろよ」
「すまない、気遣いのほど、感謝する」
「でも、お二人とも、ひどすぎです。セレナがかわいそうですよ」
「そんなこと言われてもな、たとえジェシカの親友だとしても、相手は軍人だ、それに今はお前も指名手配されてる身だろ、少しでも疑いを持った時には慎重に行動することが重要だろう」
「確かにそうですけど・・・納得いきません」
「とにかく、ずっとここで話をしていても仕方がないまずは宿に行くことが先決だ」
「そうだな、改めて案内頼むセレナさん」
「ああ、こっちだ」
そこから、五分ほど離れたところにセレナの泊っている宿があった。裏通りにある宿で、人目につかないところだ。
宿に着くまでの間、ジェシカはずっとムスッとした表情のままだった、さっきの事がよほど納得がいかなかったんだろう。
「おい、機嫌直せよ、ジェシカ」
「ふん・・・別に機嫌を悪くしているわけではありません」
思いっきり機嫌悪いな、こいつ。まぁこういう時は、怒りが収まるまで放っておくかな。
「さぁ、着きましたよ。姫様」
「ここは、リーエンさんが経営してる宿じゃないか」
「お前、リーエンさんを知っているのか」
「まぁ、昔お世話になったことがあってね、最近忙しくて顔を見せてないんだけどね」
「そうだったのか。あの人はほんと、どこまでもお節介なのだな」
「おや、アタシはそんなにお節介さんだったかい?」
宿の扉を開いて出てきたのは初老の女性であった。
「リ、リーエンさん!いえ、これは決して悪く言っているわけでは・・・」
「そんなことは分かっているさね。まぁまぁ、お久しぶりだこと、ハルト坊ちゃん。元気にしていたかい?」
「ええ、まぁそれなりに」
「そりゃあ、よかった。所でおまえさんがなんでセレナさんと一緒なんだい?」
「いろいろと事情がありまして・・・」
「そうかい、まぁ深くは聞かないでおくことにするさ」
「そんなことよりも、リーエンさん、少しの間、部屋に三人を上げてもよろしでしょうか」
「うーん、本当なら泊らない客を上げることはできなんだけどねぇ、しょうがないいいだろう」
「ありがとうございます!」
「そんじゃ、宿主の許可も下りたことだし、お邪魔しますか。おっと、ジェシカお前先に入れ」
「はい?どうしてですか」
「こういう時はレディーファーストってな」
「聞いたことがあります。紳士のたしなみというものですね」
「まあ、俺の場合はそんな言葉似合わないと思うけどな」
「そんなことはないですよ。レイルだって十分紳士です」
「やめてくれ。背中がむずむずする」
「ほう、貴様見た目とは違って中々に紳士ではないか」
「だからやめてくれってば、そんなことはいいから早く入ろう」
そうして、ジェシカを筆頭に女性を先に中に入れ、その後俺とハルトが宿に入った。
宿の中は外見より思ったほど狭くはなく、奥に広がって広々とした空間になっていた。
「外からだと分からなかったが、中は広いんだな」
「この大陸にはこういった家は多いよ。街の構造の関係もあるんだけどね」
「なるほどな」
「素敵なお家なのですね」
「次に来るときはちゃんと泊っていくといいさね。なんてったて、ここはこの大陸一の宿だ、泊ってそんはないさね」
「それは次来る時が楽しみです」
「私が泊っているのはこの上だ。あがろう」
部屋に入ると、ベットと机が置いてあるだけのシンプルな部屋だったが、かえってそれが綺麗に見えた。
「よし、そこらへんに座ってくれ、あ、姫様はこの椅子にどうぞ」
「ありがとう。セレナ」
「あ、ありがとうだなんてそんなお言葉、ありがたき幸せです」
「おい、喜ぶのは構わんが本題に入りたいんだよな」
「おっと、すまない。私の事は気にするな。では、まず先にお前たちの今までの経緯を説明してもらおうか」
「そうだな、どこから説明すべきか・・・」
それから、一時間ほどだろうか、俺とジェシカの出会いから、大陸を出て魔術都市にきて、そしてハルトに出会ったこと。
断片的ではあったが、ここ数週間の出来事を話した。自分でも思い出すと懐かしいことばかりだった。
「そうか、そんなことがあったのですね」
「はい、最初はもちろん戸惑いました。しかし、レイルそしてハルトの二人が私を導いてくれたおかげでここまできました」
「二人には改めて感謝する。ありがとう」
「いや、いいさ。元々俺は誘拐なんて物騒なことが目的だった訳だし」
「僕はただの成り行きさ。フランの為というよりも自分の為ってのが大きいからね」
「それでも、ありがたいです。私からも感謝します。そして、これから先も、もう少しの間かもしれませんがよろしくお願いしますね」
「気にするなよ。さて、今度はセレナさんの番だ。どうして単独で行動しているのか。話してもらおうか」
「そうだな。私は今回特殊部隊として、姫様捜索の任務を受け、私を含めた三人でギルガメッシュに気づかれることなく行動していた」
「特殊部隊はギルガメッシュ側じゃないってことか?」
「ああそうだ。私たちの隊長は奴が近衛兵の隊長だったころから怪しんでいた。何かと謎が多く、よからぬ噂も数多くたっていたからな」
「なるほど、それでギルガメッシュとは別に姫を探していたってことか」
「そうなる。話を戻すが私はまず、フロンティア大陸の中から姫様を捜索することにした。大陸全土を駆け回ったが結局見つけることはできなかった。当然だな、姫様はその頃にはもうこちらの大陸に来ていたのだから」
「まったく、あの時は大変だったぜ、ジェシカが船酔い起こしてぶっ倒れるもんだかな」
「しょうがないじゃないですか。私だって好きで船酔いをしたわけではありませんから!」
「姫様も私と一緒で船が苦手なのですね」
「あら、もしかしてセレナも苦手なのですか?」
「はい、昔からどうも苦手で、そのせいでこの前なんか・・・」
船酔いの話になると急にセレナはふさぎ込んでしまった。
「どうしたのですか?セレナ」
「い、いえ・・・」
「何か、その船酔いに単独行動になった原因があるみたいだな」
「ああ、フロンティア内の捜索が終わった私たちは次にスターリングの捜索をすることになった。もちろん船に乗っってここまで来る予定だったんだが、その途中の船で事故が起きてな」
「事故?」
「ああ、船が巨大な海霊獣にぶつかってしまってな。怒らせてしまったんだ、怒った〈霊獣〉に船を襲われてな、仲間の二人が捕まってしまい、その時船酔いしていた私は何も出来なかった、そしてそのまま船を潰されて気が付くと私だけこの大陸に流れ着いていた。その時そばに二人の姿は無かったよ・・・」
「では、もしかしたら・・・」
「分かりません・・・でも、私は生きていると信じたいです」
「その気持ち、絶対に忘れるなよ。それを忘れることが無ければきっと仲間に会えるさ」
「どういうことだ?」
「なあに、昔仲間を信じずに自分だけで突っ走って馬鹿な事をしたやつがいたのを思い出したのさ」
「そんな馬鹿な奴がいるといはね、でも今はその男も違うんだろ?」
「ああ、きっとな。そうだと信じてる」
「少なくとも、僕はそうだと思ってるけどね」
「ふ、素直じゃねえもんだ」
「ありがとう、レイルファントム」
「例を言われる覚えはないさ。それで、大体の事情は分かったがどうするんだ?」
「・・・一つ、お前たちに頼みたいことがある」
「頼みたいこと?なんだよ」
「頼む!私も一緒に連れて行ってもらえないだろうか!」
「なんだ、そんなことか良いぜ。別に」
「ほ、本当か!」
「ああ、セレナさんに頼まれなくても、ジェシカが一緒に連れて行こうって言ってたはずだぜ」
「はい、セレナがいてくれれば百人力ですから」
「姫様・・・」
「お前もいいだろう?ハルト」
「僕は別に構わないよ。戦力は多い方がいい」
「満場一致ってことだ。これからよろしく」
「ああ、このセレナ・メイデン全力を尽くすことを約束しよう」
「さて、状況整理は終わった。次の問題はバスティーユ大陸にどうやって向かうかってことだ」
「さっきまでの話では船に隠れて乗り込むって話だったけど」
「なに!貴様ら姫様にそんなことをさせようとしたのか!」
「仕方ないだろ。こっちは指名手配されてる身だし」
「そ、それはそうだが・・・」
「でも、穏便に船に乗れるとしたらそれが一番だけど」
「穏便に、そうだ!私にいい案がある」
「というと?」
「うん、このスターリング大陸からは革命軍が管理している貿易船が毎日動いているんだ。その船ならあるいはバスティーユまで行けるはず」
「なるほど、貿易船か、だがそれにしたって余計安全に乗れる気はしないが?」
「確かに、三人なら駄目だったかもしれないな。だが、軍人がいるとなれば話が別さ」
「変装して乗り込む気かい?それにしては人数に無理があると思うけど」
「ああ、普通に変装したのならまず不審に思われるだろう。しかし、ちょっと捻った物に変装できればどうだろうか?」
「その捻った物ってのは?」
「まぁ、私に任せてくれ、少し準備がいるが何とかしよう」
「よし、じゃあそれは任せた。とりあえず作戦決行は明日にしよう。今日はしっかり休んで次の大陸に着いたらすぐに行動だ」
「そうですね。セレナ、私にも手伝えることがあれば言ってくださいね」
「姫様そんな、姫様の手を煩わせる訳にはいきません!」
「今は、姫様ではなく、気軽にジェシカと呼んでください。城に居るのではないのですから」
「そりゃあそうだ。ずっと姫様って言ってるわけにもいかないだろうしな」
「ですが・・・」
「もう、相変わらずですね。真面目な所は好きなのですが硬すぎるのです」
「誰かさんと一緒ってことか」
「ちょっとハルト、それはどういうことです!」
「そのままを言っただけさ、さて僕はちょっと学園に戻るよ」
「おい、大丈夫なのか?」
「大丈夫さ。さすがに軍も裏道まで調べる余裕はまだ無いはずだからね、今のうちに状況報告と旅に役立ちそうなものを取ってくる」
「分かった。くれぐれも気を付けてくれ」
「了解した。僕は学園に戻って、セレナさんは準備、フランは状況に応じてだろうけど待機、それでレイルはどうするんだい?」
「俺か、そうだな特にやることもないか・・・じゃあ、今俺たちが抱えてる謎について考えてみるさ」
「じゃあ、私も一緒に考えます」
「一人だけだと、見えない点もあるかもしれないし、頼む」
「はい!」
「よし、じゃあ各々のすることが決まったな。とりあえず解散!」
そこから四人は別々の行動をとることになった。
ハルトは、一度学園に戻り旅に必要な物があればとってくることに、セレナは何か秘策があるようでその準備に。
そして、俺とジェシカは二人でこれまでに上がった疑問を整理することにした。
「まずは第一の疑問だ。なぜ、ギルガメッシュは軍を支配し、国を手に入れようとしているのかだ」
「純粋に支配したいという欲求からなのでは?」
「いや、そうじゃないだろうな。前にも話したと思うが俺は・・・まぁ、記憶はあまり残っていないが、奴と王が会話しているのを聞いている。確かに、ジェシカ、じゃなかった〈もう一人のジェシカ〉が言っていたロキレポートの名を口にしていた。もしかしたら奴の目的はもっと別の所にあるかもしれないな」
「その〈もう一人の私〉なのですが本当に信用できるのですか?」
「確かにな、まぁそいつを信じないってことはある意味でジェシカを信じないってことだしそれに・・・」
「それに?」
「いや、俺も城に居た時に記憶が無くなったって話したろ?そんでもってお前は違う俺を見てるわけだ」
「ええ、確かに初めてお会いした時のレイルは今とはまるで別人のようでした。もしかして、私のそれと同じ現象ということでしょうか?」
「おそらくはな、そして俺とジェシカのどこにそれを発現させた共有点があるのか、まずはそこから探らないとか」
「このことに関しては、私たちだけではどうにもなりませんね」
「そうだな、あとでハルトにも聞いてみるか」
「そうすべきですね」
「とにかくいったんこの件は保留だな」
「はい、次はそうですね、〈鍵〉と呼ばれるものが一体何なのかということです」
「そうだな、〈鍵〉か・・・もちろん用途としては何かを開ける為のものだろう。しかし、なぜ〈もう一人のジェシカ〉は〈鍵〉を集めろと言ったのか、とりあえずはそれを探す以外に答えは出ないだろうから集めるがそれを集めた時何が起きるってんだかな」
「分かりません。でも、それを集めないといけないような気が私はします。おそらくそれを集めることによって何かを守ることができるはずです」
「それはジェシカ自信の感か?それとも・・・」
「分かりません。分からないことだらけなんです。今そうしなければならないと思ったのも私自身の答えなのかどうかさえ分からないのです」
「しょうがねえ。結局の所、悩んでも仕方がないことだってことは分かった。ひとまずはここまでだ」
結局何も分からなかった。謎は余計深まるばかり、鍵を集めれば何か分かるのか?
にしても、なんでこんなことになってるんだろうな。最初は純粋と言ってしまっては少し意味が違う気もするが、復讐することしか頭に無かった。
それが気が付けば、姫様と一緒にここまで来て、ハルトと知り合い、セレナに出会った。
とりあえずの目的しかなかった俺たちに今は旅をする目的もできてしまった。これが運命のめぐりあわせだとするならば、きっと神様は相当なひねくれ者なのかもしれない。
「なぁ、ジェシカ」
「はい?」
「神様っていると思うか?」
「何ですか突然」
「なんとなくだよ。もしもこの旅が運命の悪戯ならそれを俺たちに巡らせた神様も居るのかなって思ってな」
「そうですね。何でもかんでも、神様のせいにするというのは少し違う気がしますが私は信じてますよ。というより、今そう思いました」
「奇遇だな。俺もだ」
もしも神がこの世にいるのなら、一発殴ってやりたい。そんな気分になった。
第七話 終