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ロストオブギルティ  作者: 講和 淵衝
パンドラの棺編
6/11

~パンドラの棺編~第五話

いきなり、暑くなったかと思ったら梅雨に入ったり、最近天気がおかしい日が続いていますが、そんな中でも小説はいつも通り書いてます、講和 淵衝です。

ここまで、書くとなんだか、書いているの方もわくわくが止まらないようになってきました。

早く、続きが書きたいと思う毎日です。頭の中に浮かんでは消えるアイディアを必死にかき集め、形にする。本当に楽しいです。

さて、そろそろ本題に入りましょう。第五話に入りました。

魔術大陸につき、いよいよジーニアスさんと会うことのできたレイルとジェシカの二人は敵の目的にちょっとずつ近づくことに、そして、新たに出会う人物たちは曲者ばかりで・・・

本格的な冒険の始まりになる、第五話いよいよ開幕です。

どうぞ、楽しんでいってください。

第五話 意外な出会いと新たな出会い


「研究資料・・・どこにやったんだっけ」

 目が覚めるとすぐに、資料を探し始めた。徹夜明けの朝によくやる行動の一つである。

僕にとっては、命よりも重要かもしれない研究資料が手元に無いのは不安でしかない。

 「あったこれか、うん?最後が抜けているな」

どうやら、昨日教授にもらった際にもらい忘れがあったようだった。

 「仕方ない、教授の部屋まで取に行くか」

そういうと、ラインハルトは重い腰を上げ、自分の研究室を後にした。

                     ・

「ふむ、それは実に大変でしたな。しかし、姫様会わないうちに、すっかりとお綺麗になられて」

 「お褒め頂き光栄です。それにしても、鍵とはいったい何のことなのでしょう」

「それについては私に思い当る節があります。確か、研究資料が資料室にあったはず、しばしお待ちください」

 あれから、すぐにジーニアスさんの所にたどり着くことができた。ガロン・ドラゴノフと名乗った男は一見胡散臭そうに見えたが悪い奴ではないと思った。

 目的の場所まで、くるとすぐどこかに立ち去ってしまったところは怪しかったが。そんな俺たちが着いたのが世界一の頭脳と魔術が集まる場所と言われた学園〈レギオン〉着くと思っていたより、すんなりと学園に入ることができ、ジーニアスさんにも会うこともできた。

「これで、なんとかなりますね。レイル」

 「ああ、でも鍵の事が分かっても問題はそれからだぜ」

「どういうことでしょう?」

 「鍵の事が分かったら、次はそれを探さなきゃいけないだろう。ここまでの目的は鍵の事を知ること。そして、今俺たちの身に何が起こっているのかはっきりさせなきゃいけないことだっただろう」

 「そういわれてみると、そうですよね。私としたことが」

「これで、なんとか一つでも場所が分かるといいんだがな」

 「はい・・・信じましょう」

「お待たせいたしました。ありましたよ、おそらく鍵というのはこれのことでしょう」

 ジーニアスさんが持ってきた資料を机の上に置いた。資料の名前を見るとそこには〈クルアトキーと歴史的関係性について〉と記されていた。

 「クルアトキーそれが私たちの探さなければならない鍵」

「おそらくはそうだと思われます。クルアトキーに関して簡単に説明いたしますと、これは何かを封印していた鍵であり、全てで五つあるようです。もちろん、鍵である以上何かを封印していたもののようです」

 「いったい、その鍵は何を封印していたのでしょうか」

「それは、分かりかねます。ただ、何か恐ろしいものであるということは間違いないでしょう」

 封印に使われていたのか。確かに、それなら封印されるほどに恐ろしいものだったという可能性はあるな。王が敵より先に集めろといったのはこのためなのか。疑問が残るところもあったがとりあえずは鍵の在処を知ることが先である。それが分からなければどうしようもない。

 「なるほど、鍵の在処については何か資料はないんですか?」

「残念ながら、しかし手掛かりになることはあります。お二人は〈星詠スターみの一族リスト〉というのをご存じか?」

 「いや、俺は聞いたことないな、ジェシカは?」

「私は、はい、聞いたことがあります。昔お城の図書室で記録を読んだことがあって、この大陸に昔からいる一族で、星詠みつまりは、星を詠むことで、様々な予言を言ったといわれていますよね」

 「さようでございます。さすがは、姫様ですな」

「で、〈その星詠みの一族〉っていうのが鍵にどう関わるんだよ」

 「〈星詠みの一族〉は歴史を知る古い一族、この世界の歴史がどこよりも濃く残る場所そこならば、何かの手掛かりが得られるはずです」

 「なるほどです!善は急げです。早速行きましょう」

「待て、お前、その一族がどこに住んでいるのか知っているのか?」

 「勿論、分かりません!」

ジェシカは、それが当然のことであるかのように言い放った。さすがのレイルも呆れるしかなかった。

 「おいおい、分からないでどうやって行くつもりだ」

「大丈夫ですよ。分からないことがあれば人に聞けばよいのです。ジーニアス様は〈星詠みの一族〉がどこに住んでいるのか知っているんですよね?」

 「いえ、申し訳ないのですが、私もそれについては知らないのです。何分その一族は周りのとの交流を一切に断絶したいわば未開の一族ですので」

 「そ、そんな・・・」

「言わんこっちゃない。でも、ジーニアスさんには分からなくても何かほかに方法があるみたいですね」

 「本当なのですか!」

「ええ、実は、この学園には一人だけ生徒の中に一族出身の者がいましてな」

 「ちょっと待ってください。どうして、この学園に生徒が?交流を一切に断絶しているとおっしゃっていたのに」

 確かに、さっきジーニアスさんはそういった。でも、そのことにも何か事情があるようだった。

 「勿論、なので初めて彼がこの学園を訪れた時には驚いたものですよ。今でこそ、学園に居て当然の存在になりましたがね」

 「つまり、その人を通せばもしかしたら一族と会うことができるかもしれないってことですね」

 「つまりは、そういうことです。あくまで、可能性の話ですが」

「その可能性がちょっとでもあるなら、それに賭けます」

 「では、彼を紹介しましょう。今はちょうど自分の研究室で寝ていることでしょうから」

「ありがとうございます。ジーニアスさん」

 「これも全ては姫様のため、そして何より、友のためです」

「ジーニアス様・・・」 

 「今は、感傷に浸っている場合ではないですな。しかし、お二人が止めようとしているその敵とは一体何者なのでしょうな」

 「それについて俺はよくわかりません。でも、ジェシカなら何か心あたりがあるんじゃないか?」

 「はい、彼らは父の率いる革命軍の中でも、かなりの力を持った者たち七英雄と呼ばれていました。そして、彼らの先頭に立っていた人物あれは、元近衛兵隊長のギルガメッシュオールドマンという男でした」

 「まさか、彼らが・・・国王に一番忠誠を誓っていた者たちがなぜ、やはりあの男が裏で何か企んでいると考えるのが一番のようですな」

 「はい、私もそうだと思っています。しかし、その目的が見えないんです。鍵を何に使うのか分かればいいのですが」

 「とにかくだ。鍵の用途は分からないがそれを使ってろくなことをしようとしているわけはないんだ。今は止めることを考えよう」

 「そうですね」

そんなことを話していると、部屋をノックする音が聞こえた。

 「誰か来たようですな。しばし、お待ちください。おや、君は、ちょうどよかった中に入りなさい」

 ジーニアスさんに促され入ってきたのはここの学生であろう少年であった。見た目からして俺と同い年くらいだろうか。

 「なんですか、学長僕はレポートを取りに来ただけですよ」

「まあ、いいから座りなさい。紹介しましょう。彼が〈星詠みの一族〉の少年、ラインハルト・エーゲル君です」

                            ・

 ラインハルトはこの時、自分が〈星詠みの一族〉であったことを後悔した。この学園に入ったころからそうであったが、彼は研究の為に、人と話すのは嫌いではなかったが、プライベートで人と関わる事を極端に嫌っていた。

 「そういうことで、君にぜひとも、この二人の力になってもらいたいんだ」

「いえ、謹んでお断りします」

 「まったく、お前は相変わらずだな、私の話をちゃんと聞いていたのか?」

「はい、そのうえで断らせていただきます。この学園に入ったとき僕ははっきりと言いました。研究以外の事には関わるつもりはないと」

 「そうは言ってもだな。これは、お前にしか頼めんのだ。もちろん、タダでとはいわん。お前が研究したがっていた〈禁書キーワード〉の研究を許可しよう」

 〈禁書キーワード〉という言葉を聞いた途端、ハルトの表情が変わった。どうやら、それほどまでに研究したいことだったらしい。

 「それは、この学園に居る間ずっと研究をしてもいいといことですか?」

「・・・仕方ない。それでいいだろう」

 「分かりました。ただし、あくまで、僕は里に連れて行くだけです。それでよろしいですか?」

「それでもいいだが、なるべくこの二人に協力することも約束してもらえるか」

 「ええ、善処はしますよ」

「分かった。お二人も、それでよろしいか?」

 「大丈夫です。できれば、もう少し協力してもらいたいところですが、今はそれでいいでしょう」

 「ふん、僕が協力するだけありがたいと思うんだね」

「あなた!それが人に協力する者の態度ですか!人と人が支えあわなければならないという精神があなたにはないのですか!」

 「そんなこと言われても、嫌なものは嫌でね」

「なんと、無礼な!」

 「落ち着け、ジェシカ、ここで怒ってもしかたがないだろう。それに、頼んでいるのは俺たちのほうだぞ」

「ですが、レイル」

 「すまないな。ラインハルト君、彼女はちょっと感情的になりやすいところがあってね。悪気はないんだ」

 「別に、僕は構いませんよ。ただ少し面倒なだけで」

「面倒とはなんですか!」

 「だから、落ち着けって、君も、挑発するのはやめたほうがいい。いくら、関わりたくないとはいえ、依頼を了承したんだ、ある程度はそっちも礼儀を持ってもらわないと」

「確かに、それは一理ありますね。僕も、これ以上こじれて依頼が無くなるのもいやですし」

 「分かってもらたなら、助かるよ。改めて、挨拶をさせてくれ、俺の名前はレイルファントムちょっとの間だけよろしくな」

 「ラインハルト・エーゲル・・・それだけだ」

「よろしく、ほらジェシカもそういった礼儀を欠いたらこいつと一緒になっちまうぞ」

 「・・・」

「ジェシカ」

 「分かりましたよ。レイルは時より、意地悪です」

「そうか、俺は状況に適応してるだけさ」

 「なんか、納得がいきません。初めまして、フランジェシカ・アルバディーネと申します」

 「よろしく・・・」

「さあ、挨拶もすんだことですし、ハルト、ここから里まではどれくらいかかるんだ?」

「そうですね、大体二時間ほどあれば」

 「分かった。では、すぐに準備をし、お二人と一緒に行ってくれ」

「仕方ないですね。そうだ、一つお願いが」

 「まだなにかあるのか」

「いえ、研究資料だけまとめておいて頂けると助かるのですが」

 「分かったわかった、それは何とかしておこう。まったく、お前は」

「じゃあ、行こうか」

 「ええ」

「・・・疲れるな」

  こうして、奇妙な組み合わせの三人によるちょっとした旅が始まる。

                      ・

「学園を出る前に、一度研究室に寄っていきます。準備がありますので、なので二人はここの中庭にいてください」 

 ハルトは、部屋を出ても調子を変えることがなかった。ジーニアスさんの前じゃなければもう少し素の彼が見れると思ったのだが。

 「分かった」

「・・・すぐに戻るようにします」

 そういって、ハルトは建物の中に入ってく。今、俺たちがいるのが学園の真ん中にある庭園であった。

 「綺麗な、所ですね」

「ああ、でもああいう花とかも彼らからしたら研究材料にしかすぎないんだろうよ」

 「なんだか、寂しいですね」

「そうでもないさ。そのおかげで笑顔になる人もいるんだからな」

 「そうなんですか?」

「ああ、こういう花はな、薬の原材料に使われたりするんだ。この研究がなければ、助からない命はたくさんあったかもしれないな」

 「そうなんですか・・・では、あのラインハルトさんもそういうことをしているのでしょうか」

 「さあな、俺が知る限りではこの学園には二タイプの人間がいる、ひとつは、日魔術的な研究者たち、もひとつは魔術を文明の為に活かしている魔術者たちだ」

 「じゃあ、彼は人よりも、文明が大事だと思っているのでしょうか。私は、文明というものが嫌いです。文明は人に滅びの知恵を与えるものです」

 「おいおい、物騒なこと言うな。それも、城にいることに本で読んだりしたのか?」

「いえ、これは父の受け売りです。父も国を発展させるのは文明ではなく、人と自然だとおっしゃっていましたから」

 「なるほどな、俺も一理あるかしれないな。でも、だからと言って、文明の全てが悪いわけじゃない。人間が、今こうやっていろんな考えを持って行動できるのもひとえに文明のおかげかもしれないんだしな」

 「なんか、レイルって彼の肩をもつのですね」

「そうか、そういうお前はあいつにきつくないか?」

 「それはそうですよ!だって、あんなに礼儀の無い方は見たことがないですから!」

「それは、あれだあいつが不器用なだけなんだよ」

 「不器用?」

「そう、人は誰しも不器用なもんだ。お前だってそうさ。もちろん俺も、きっとそれを人に見せるのが下手か下手じゃないかの違いだけさ」

 「そういうものでしょうか・・・」

「今は分からなくても、いずれこの世界を回っていろんな人を見ればわかってくるよ」

 「レイルがそう言うのであれば、信じさせてもらいますよ」

「ああ、期待しててくれよ」

 そんな話をしていると一人の少年が話しかけてきた。

「あの、君たちってこの学園の生徒?」

 「え、いや、違うけど・・・」

「やっぱり!学園で見たことのない人たちだなと思って、あ、挨拶しないとですよね。僕の名前は、グリム・ハーメルン、この学園で魔術と生命の研究をしています」

 そこに立っていたのは、見るからに優男の少年だった。不思議な雰囲気を持っていて、それでいてどこか底知れぬ情熱を秘めているようにも見えた。案外こういう奴は研究に没頭すると人が変わるタイプの人間なんだろうな。

 「よろしく、俺の名前は・・・」

「もしかて、君の名前はレイルファントムじゃないですか?」

 「どうして・・・俺の名前を知っている?」

「そりゃあ知っていますよ。有名ですもの、僕も小さいながらギルドを組んでいましてね。ギルドの間では有名人ですよ〈朱眼の死神〉の名前は」

 「〈朱眼の死神〉か、その異名はもう捨てたよ。今は、何者でもないただのレイルファントムに過ぎないからな」

 「そんな謙遜を、その眼はまだ朱色の光を失っていない。期待していますよ、貴方はきっと近い将来この世界に無くてはならない存在になると僕は思っていますから」

 「そんな、大げさな」

「いえ、そんな大げさなわけはないですよだって・・・」

 「おい、グリム何をしている」

「おや、ハルト君じゃないか、君もこの人たちに用があるのかい?」

 「ああ、そうだとも。俺の客だ。貴様には関係ない」

「怖いなぁ、親友じゃないか」

 「何が、親友だ。異常者め」

「おいおい、ハルト君同じ学生同士だろ仲良くしないと」

 「貴方には、関係ありません。それよりも、準備が出来ました。時間の無駄はしたくありません」

 「分かったよ。悪いね、グリム君ちょっと用事があってね」

「いえ、僕は構いませんよ。いずれまた会うことが出来たらその時はもっと話をしましょう」

 「そうだな、それじゃあ」

「はい」

 そう言い残して、俺たち三人は学園を後にした。学園の外に出た時、ようやくシェリルの様子が変だということに気が付いた。

 「どうした、ジェシカ?具合でも悪いのか」

「いえ・・・そういうわけではないのです。ただ・・・」

 「ただ、なんだよ?」

 「あの、グリムという人が何だかとっても怖い人だと思いまして、寒気が止まらないのです、嫌な感じです」

 「そうか?俺はそんな感じには思えなかったが」

「君の目は、節穴か。彼女の言う通りだ。奴は恐ろしい」

 「さっきも、きつく当たっていたが何があるんだ君と彼の間には」

「別に・・・ただ彼の考えと僕の考えが合わないだけです。また無駄話ですよ」

 「分かっているよ。ジェシカとにかく今は行くぞ」

「はい・・・」

 二人そろって、変な奴らだ。あんなに、いい奴そうだったのに。そういえば、グリムは最後になんと言おうとしていたのだろうか。まあ、いいか、そうたいしたことでもないだろう。

 今は、〈星詠スターみの一族リスト〉の里に行くことが優先だからな。

                        ・

学園の一番、奥の奥、そこに彼の研究室は存在した。

 薄暗い部屋の中には、山のように重なった研究資料と、ホルマリン漬けにされた、〈人間〉とおぼしきものたちが入った巨大なカプセルが並んでいた。

 「彼は、実に面白い。さすがは、ロキのお気に入りだった蛇だね」

「随分と、ご機嫌ですね。グリム様」

 「おや、君か。狐君、こんな時間にここに来るなんて珍しいね」

「ちょっと人探しをしていましてね。そのついでに、寄ってみたんですね」

 「本当に、気まぐれだね」

「まあ、それでグリム様はお会いになったのですか?彼に」

 「ああ、そうだよ。実によかった。やはり、彼が〈セカンドツーデイズ理論〉の要になることは間違いないね。彼こそ、僕の理想だよ」

 「それは、それは・・・教団の未来は明るいですな」

「そうだね、所で君はこの後、どこに行くんだい?」

 「この後ですか?そうですね。もう少しこの大陸を探してから、次は煉獄大陸にいきますよ」

 「それは、ちょうどいい。実はいまそこに双子を送り込んでいてね。いつも通り、気まぐれな二人だから連絡がないんだよ。そこで、もしも会ったら連絡をよこすように言っておいてくれよ」

 「承知しましたよ」

そう言い残すと、狐と呼ばれた男は暗闇に消えどこかに行ってしまった。

 「本当に楽しみだよ。理想の世界にあと少しで手が届くのだから」

                         ・

学園を出てから、二時間、けもの道をただひたすらに歩き続け、途中山で遭遇した〈霊獣ビースト〉たちを倒しながらやっとの思いで里についた。

 「やっと・・・・やっと、着きました・・・」

「半端ない、道のりだった・・・」

 「何、これくらいで根をあげているんですか、どうでもいいですけど、先が思いやられますね」

 「心配どーも」

「心配はしてませんよ。貴方たちの心配はね」

 「こんな時でも・・・悪口をいうとは・・・」

「そういうあなたは、面白い戦闘をするんですね、良い研究材料になりそうですね」

 確かに、ハルトの言う通り、ジェシカの使う〈ベクトルアーツ〉という武器は非常に面白い武器だった。

 分かりやすく言うと、弓の武器なのだが、矢に特徴があった。矢は魔力を練ることによって編み出すのだが、その魔力の練り方でいろんな方向性を持つのだ。

 時に攻撃的に、攻撃的かと思ったら防御に働いたりなど柔軟性の高い武器だった。

 「私はお断りですよ・・・」

「僕もだよ。こんな扱いずらい研究材料はなさそうだ」

 「本当に貴方って人は・・・」

「おいおい、ここまで来て喧嘩している場合じゃないだろう。中に入ろう」

 「そうですね。時間の無駄でした」

後ろでジェシカはぶつぶつと言っていたがあえて気にしないことにした。里の前に着くとそこには大きな木の門があり、何者も寄せ付けることのない雰囲気を持っていた。

 「少し待っていてください。話をしてきます」

そういうと、ハルトは一人で門番に話をしにいった。

 「大丈夫ですかね。今まで里の中に人を入れたことのないような人たちが入れてくださるのでしょうか」

 「入れてくれないと困るだろ。今は信じるしかないさ」

ここまで来たのに、何もせず追い返されるわけにはいかない。

 「レイル、あれは誰ですかね?」

「あれは・・・」

 話がうまく通ったのか、分からなかったが門が少し開き中から現れたのはどうやら長老と思われる人物だった。

 そんなことを思っているとハルトが戻ってきた。

「よく分からない状況ですが、お二人長老から話があるそうです」

 「分かった、すぐ行く」

いったい何の話だろうか。とにかく、行くしかないな。

 「初めまして、レイルファントムと言います」

「フランジェシカアルバディーネです。お初目にかかります」

 「おお、よく来なさったな。お二人が来られるのまっておりましたよ」

「待っていた?と言いますと・・・」

 「ふむ、先日〈星のお告げ〉がありましてな。未来の道しるべとなる者この里に現れん、その時龍は目覚め、鍵は紡がれるであろうと」

 「鍵って、レイルもしかして!」

「ああ、おそらくそうだろう。長老様、クルアトキーという鍵の事について何か知りませんか。俺たちはその鍵を探しにここまで来たんです」

 「まあ待ちなされ、立ち話もなんじゃから詳しい話はわしの家で聞きましょう。それに、ここまで来るのに疲れたでしょう」

 「あの・・・でも、長老様・・・私たちは里に入ってもいいのでしょうか?」

「ん、ああそうじゃな。本来ならどんな理由であれ、里に入れることは出来ん、それに今はちょうど〈龍流祭〉の開催時期ゆえ里の者も気が張っているゆえになおさら駄目だと言いたいところではありますが、そのルールと同じくらいに里では星のお告げを重視してきました。 お告げがそう告げるのであればそれに従うこともわしらには大事なことなのですじゃ」

 「なるべく、迷惑はかけないつもりです。鍵が手に入ればすぐに里を離れることを約束します」

 「ふむ、まあ先の事を考えても仕方がない。すぐに手に入るかどうかも分からない状況じゃろうて。さあ、来なさい、ラインハルトお主も来るのじゃ」

 「僕は結構、役目は果たしましたから、帰らせていただきますよ」

「ああ、そう言えばそういう約束だったな、ありがとう助かったよ」

 「べ、別に・・・たいしたことは・・・」

「いや、それはだめじゃ。お主もここに残るのじゃ。お告げには三人の影が見えた、おそらくお主も何か変わっているのじゃろう」

 「面倒な・・・しかたありません、分かりましたよ」

 「うむ、初めからそういえばいいものを・・・お待たせしましたな。行きましょう」

「はい、ではお邪魔いたします」

 「き、緊張します・・・」

俺とシェリル、そしてラインハルトの三人で里への一歩を踏んだ。里の中に入ると立派な木造の家が何件も並び、人々が平和に暮らしている様が目に入り込んだ。

 「ところで、ハルト君はどうしてついてきたんだい?」

「君付けはやめてください。なんか嫌です。別に、僕も一応は里の人間ですから、お告げは絶対です」

 「思った通り、お前って素直な奴なんだな」

「別に・・・」

 「レイル、あんまりこういう性格の人、甘やかさないほうがいいですよ。それに、どこが素直なのですか、どこが」

 「君も、僕を見習って素直になったらどうだい」

「それはどういう意味ですか!」

 「どうって、言葉のままの意味だよ」

「おいおい、なんでそうすぐ喧嘩になるんだよ」

 「分かりきっているでしょう。頭の固い頑固者と僕は気が合わないんですよ」

「あら、奇遇ですね。私も貴方みたいな捻くれ頭の人とは気が合わないと思います!」

 「駄目だ・・・・こりゃあ」

結局、長老の家につくまで二人は睨み合いをつづけたのであった。

 「さあ、着きましたよ」

「大きいですね」

 「まあ、立派なお家なのですね!」

「ふぉふぉ、照れますな」

 さすが、長老の家ということだけあって、どの家よりも多く立派だった。中に入るともっとそれがよく分かった。

 一つ、一つが芸術作品のように丁寧に作られた家具が並んでいるのだ。まさに圧巻であった。

 「気を楽にして、そこらへんに座ってくだされ。さて、どこから話しましょうかのう」

「まず、現在何が起ころうとしているのか。それを説明させてください」

 「わかった」

そして、俺は何度目になるのだろうか。ここに来るまでの話をした。思えばここに来るまでに短い間だったけどいろんなことがあった。

 ギルドに居た時でさえ、こんなに慌ただしいことはなかったかもしれない。そういえば、グランと、シェリルは大丈夫なのだろうか。なんとか、無事でいてくれるといいのだが、世界を巡っていればいずれどこかで会える気もするが。

 「大体、こんな感じです。おそらくですが、敵は王の死を国民に隠すつもりでいると思います。どこまで隠しきれるのかは分かりませんが。それと、鍵でいったい何をするつもりなのか、分からないことも多いですが今は考えるよりも行動する方が大事だと思うので」

 「ふむ、若者らしい考えじゃな。行動もまた考えの一つ、鍵を探し続ければいずれ真実が見えてきましょう。大体の事情は把握しましたですじゃ」

 「長老様、クルアトキーの事について何かご存じなことはありませんか?」

「残念じゃが、鍵のことについては分からぬ。記録として、この里にそういうものがあったということもないはずですしのう」

 「そうですか・・・」

「しかし・・・お告げ通りであれば、もしかすると、〈龍流祭〉が何か関係しているかもしれませぬぞ」

 「あの、その〈龍流祭(ドラゴニックフェスタ〉というのはいったい何のことなのでしょうか?私、少し気になっていたんですよね」

 「ああ、俺もだ。長老、さっきのお告げもう一度聞かせてもらえませんか」

「 未来の道しるべとなる者この里に現れん、その時龍は目覚め、鍵は紡がれるであろうとこれですな」

 「未来の道しるべになる者というのがおそらく俺たちの事だとして、龍の目覚めは祭りに関係しているのか・・・」

 「まずは、〈龍流祭〉のことについて簡単にお話ししましょう。この里には昔、雨が何日も止まぬことがありました、雨は大きな濁流となりこの里を飲み込もうとしたのですじゃ、当時の里の者はこれを神の怒りと思い、それを鎮めるために、巫女を立て、その巫女の命でこの里を守ろうとしました、儀式を終えると不思議なことが起きたそうです。巫女は何かに導かれるように天に昇り、そして龍に姿を変え、天候を一瞬にして変えどこかに消えてしまった。それ以来、この里では一年に一度その日になると、村で祭りを催し、龍になった巫女に感謝を伝えているのですじゃ」

 「そんなことが、あまりにも壮大すぎて信じられない話ですが、今日までその祭りが続いているということは本当にあったんですよね」

 「世界には私たちの知らないことがまだまだたくさんありますね。勉強になります」

「ふぉふぉ、そこで今年はお二人も祭りに出ては如何でしょうか?もしかしたら、お二人が祭りに参加することで何か起きるかもしれないですしな」 

 「あの、巫女ってもうやる人は決まっているのでしょうか?」

「当然だろうね」

 「貴方には聞いてないです」

「申し訳ないが、ラインハルトの言う通りですじゃ。もう、決まっておりましての」

 「そうなんですか・・・」

「しかし、先日から少し厄介なことになっておりましての、もしお嬢さんがやってもいいと言うのならやっていただけませんかな」

 「本当ですか!」

「長老、いったいどういうおつもりですか。ただでさえ、よそ者をこの里に入れるだけでも異例だというのに」

 「長老、厄介な事と言うのは何か訳ありなんですね?」

「さよう、実はのう・・・ん?」

 話をしていると、部屋に突然一人の少女が入ってきた。その少女は部屋に入るとこれまた突然、ハルトに抱き付いたのだ。

 「うわぁ!」

「なんだ!」

 「破廉恥です・・・」

「これ、ミカエラいきなりで驚いたぞ」

 ミカエラと呼ばれた少女は、抱き付いて離れようとしなかった。

「ミカエラ?君、ミカエラ・スーミなのか?」

 そう聞かれると、少女は何も言わず、こくりと頷いた。

「なんか様子が変だな」

 俺はとっさに、そう思ってしまった。なんだろう、なぜさっきから何もしゃべらないんだろう。

 「気づかれましたか、実はその少女が今回の巫女だった者ですじゃ」

「だった者?」

 「うむ、実は、先日から起きている問題と言うのが、ミカエラの声が突然でなくなってしまったことでしての」

 その場にいた、長老以外の三人の表情が変わった。

「そんな・・・」

「本当なのか、ミカエラ?」

 少女は、うつむいて悲しそうな顔をした後に、また何も言わないでこくり、と頷くだけだった。

                   第五話終

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