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今回少し短いです。

登場人物が作者に毒され頭おかしいです。ヘタレが書けない病にかかりました。


まるでビデオの停止ボタンを押したみたいに、青年は固まってしまっている。


「…どうかなさったんですか?」


陶器に嵌め込まれた黒真珠みたいにぴくりとも動かない目を見ながら、目線を合わせようと腰を下ろすことにした。


打たれ弱いなこの人…同じロリコンでもシークゼンとは雲泥の差である。


というか、どこに固まる要素あったよ?


初対面の人間にいきなり求婚してOKされるとでも思ってんのか…ああ、この顔じゃ思っててもおかしくないか。


そこまで考えて、目の前の青年がまだ会ったこともないロリータにセリアの花を渡す「思い込み電波系ロリコン」なことを思い出した。


あ、あぶなっ。あんまり固まるもんだから、危険人物だって忘れてた!


見た目に騙されて近づいたら危ないよね。


電波系ロリコンより先に正気を取り戻すのに成功したあたしはジリジリ後退して距離を取ることにした。


ぶわあっ!!!


後退ろうとした途端、そんな擬音が聞こえるくらいの勢いで青年の目から涙が溢れてきた。


こっわ、こっわーーー!!!


表情筋を微動だにさせずに、泣き始めた…だと?!


え、どうなってんの。どうやってんの???


涙腺にホースでも繋がれてんじゃね?って思えるくらい次々と涙が溢れていく。


最初は種族の問題で青白かった顔に泣きすぎで朱がさしてきても、泣きすぎて鼻が真っ赤になっても動かねぇこと動かねぇこと。


こいつ、せめて鼻かむとかしないの???本気なの???


あたしは、青年の涙でまた動きが止まってたことに気が付いて慎重に動くことにした。


電波系ロリコンはシークゼンという突発的求婚とディープキスをかましてくる肉食系ロリコンよりも質が悪いと今さらながらに悟った。


くっ、肉食系ロリコン(シークゼン)の更正に成功して自惚れてたっ…!


あたしにゃ、電波系ロリコンの矯正は早かった…撤退、撤退しなければ。


繰り返す、全あたしよ、撤退だ!これは敵前逃亡ではない、戦略的撤退だ!


だいぶどころでなく混乱しつつ、アデーラさんのところに逃げ込む決意を固めた。


…確か、猛獣と変態から逃げる時は顔を背けず、向き合ったまま、ゆっくりと後退してフェードアウトすればよかったはず。


せっかくの至高の芸術品みたいな花の(かんばせ)を無言かつ無表情で涙と鼻水まみれにしてる残念すぎる電波系ロリコンから距離を取るべく、あたしは重心をゆっくり動かした。


「っ、ロリぃいいいぃいいぃ!!!」


▽いきなり でんぱけいろりこん は きせい を あげて おそいかかってきた !


ひええええぇええ!!!


信じらんないほどの涙声で名前をいきなり叫ばれた挙げ句、目にも止まらぬスピードで抱きつかれた。


クラウチングスタートの要領というか、身を潜めてた虎が獲物に飛びかかる時の動きというか。


あたしは抱きつかれた衝撃で勢いよく後ろに倒れた。


痛みを想定してぎゅっと目を閉じたものの、電波系ロリコンが上手く衝撃を殺してくれたらしくどこも痛くなかった。


あれ?


こいつ、意外と余裕あんじゃね?


身も世もない有り様で泣いてるわりに衝撃遮るとか、さりげに余裕あんよね???


とか思っていると、あんましくびれのないあたしの腹部に顔を押しあてて号泣していた。


「ふっ…くっ、ろ、ロリっ、なん…っでっぐ、ぅうぅああああ!!!」


シークゼンそっくりな最初の綺麗なテノールはどこへやら、しゃくりあげるのをこらえる情けない嗚咽をあげながらイヤイヤをするみたいに顔を押し付けてひたすらに泣いている。


でも何故か、逃げないようにするために腰と背中に回された手はがっちりホールドしているくせに、苦しくはない。


…ねえ、やっぱ、余裕あるよね???


計算なの、電波系ロリコンに見せかけて腹黒系ロリコンだったの???


なんだかんだでくすぐられた形になったお腹が物凄くくすぐったい。


やっばいよ、これ笑わせてうやむやにしようとしてるよ!というあたしの危惧を他所に電波系ロリコンはすすりあげながら必死に喋る。


「ロリぃ、ロリっぐぇう、なんでっ、…どうして、貴女はっ…希望があると、いつも…っぐ。ほんとうに、駄目なら、っぇく、いっそ、切り捨でっ…うぅ」


美貌をぐしゃぐしゃにして、真っ赤になった目ですがるように見てくる電波系ロリコン。


一体何が彼をかきたてるのか。


こんな子どもみたいに泣くなんて、あたしにはもうできない。


見た目がロリータなことを除けば特に綺麗でもない初対面のあたしにどうしてこんなに執着できるんだろう。



わからない。


わからないよ。


だから、そんなつらいかおしないで。


あなたがなくと、あのひとがないてるみたいで、くるしいから。



いつもなら、てめぇを拾った覚えも希望をくれてやった覚えもねぇぞ。って思えるのに、いや実際、半分はそう思ってるのに何も言えなくなる。


痛々しすぎて、呆れるのを通りすぎて普通に心配になってた。


これ、精神病とかなんじゃね?


成人男子というか、男性に限らずこの年齢の人ってもっと…こう、さ。


「ふぐぅ、ひっ、ろり、おねがっ…ぇ、ろり、ろっ、ろり、ろりぃぐふっ、ぅええええ」


もう何言ってるかわっかんないし。


「だ、大丈夫?」


主に精神的に。


このままじゃらちがあかない。


とりあえず電波系ロリコンを落ち着かせなければ、逆にあたしが悪いみたいだ。幼稚園生泣かせた中学生みたいな。


「ぐ…すっ…うぅ」


…はい、会話が成立しません。


駄目だよ、やっぱりこの電波系ロリコンはもう駄目だったんだ。


しかたない…シークゼンの力を借りよう。


「ねえ、そんなに泣いたら干からびちゃうよ?」


一計を案じたあたしは、電波系ロリコンに優しく微笑みながら声をかけた。


「ひぐっ?!」


干からびちゃうよ、でビクッゥと腹に顔を埋めてた電波系ロリコンが反応した。


正直ドン引きするくらい怯えてるけど、丁度いい。


てか、魚人って干からびるって言葉が怖いのかな。だとしたら、砂漠で耐えきったシークゼンはロリコンを差し引いても凄いのなぁ。


「干からびるの、嫌だよね?」


幼稚園の先生気分で諭すようにゆっくり優しく言う。電波系ロリコンは首が折れるんじゃないかってほどガクガク頷いてる。


「じゃあ、これから、ハーブティーいれてあげるから一緒に飲もうよ」


やっぱりガクガク頷く電波系ロリコンに内心でガッツポーズをする。


よっしゃ!


これで、睡眠薬が盛れる!!!


ありがとうね、シークゼン。護身用に貰ってた塗り薬にも飲み薬にもなるあの魔法かかった睡眠薬、役に立ったよ!!!


ぶっちゃけ外に一人で出ないし、アデーラさんに勝てる猛者なんかいないしお金の無駄とか思っててごめんなさい。


おんなじロリコンはロリコンでも、シークゼンはできる方のロリコンでした。


あたしはなかなか離れようとしない電波系ロリコンを必死に宥めすかし、用量療法を正しく守った睡眠薬入りハーブティーをいれる。


移動させるのが面倒だからそのまま寝れる無駄に大きいソファーに座らせて、油断させる為にその横に座る。


よっぽど干からびるのが怖いらしい彼はまだ熱々のハーブティーを可及的速やかな感じに飲んでた。


ただし、あたしを抱き抱えながらだけど。


変に見えないようにハーブティーを飲みながら青年を観察していると、ゆっくりと船を漕ぎ始めた。


流石、シークゼンの用意した一級品の魔法薬。


ほんとに防犯対策になる効き目だ。


「う…」


だけど、なかなか電波系ロリコンは眠らない。


「どうしたの?眠いなら寝ていいんだよ」


むしろさっさと寝てください。


「…ぃえ、ね…たら……くなる…」


眠そうにもごもご言って睡魔と争ってる。


この薬さ、人には初めて使ったけど…効き目の早さのわりに効果弱いのかな。


なかなか寝ないのにイライラしてきたあたしは子守唄を歌うときみたいにリズムをつけて背中をさすってやった。


それでも歯をくいしばって目を開けてた電波系ロリコンは限界がやってきたのか、焦点が合わない目でこっちをそれはそれは寂しそうに見てきた。


…はあ、仕方ないなぁ。


「大丈夫だよ、ずっと一緒だから」


嘘も方便ってね!


寂しさを軽減させる声をかけたら、さっきまでの根性は何処にいった?!というくらいサクッと寝てしまった。


しかも、なんか表情が柔らかい。


「…おーい」


完全に寝ているかの確認をするために、頬をぺちぺち叩いてやる。それにむずかる様子はあれど、起きる気配は微塵もないのを確認して、ソファーからおりる。


さて、今のうちにアデーラさんの所に行かなければ!


アデーラさんに頼んで、シークゼンにこの電波系ロリコンをどうにかしてもらおう。


誰が前中後で終ると言いました?(使い回し)


…簡潔にとか言っておいて、前中後で終わらなかったのでエピローグかなんかであと一、二話くらい書きます。申し訳ありません。

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