勇者、驚愕する
「そんな……ありえない!あの力は…でも、!」
大慌てしながら一人言をぶつぶつと呟くユキ…っは!もしかしてこの展開は!!
「なぁ!もしかして歴代の伝説の勇者と同じ能力とか……」
「はぁ!?あんた馬鹿じゃないの!?その真逆よ!」
はぇ?真逆って?
「え?だって、バーンどーん!ってなったぜ?これはもう、そういうフラグだろう!!」
「正真正銘真性の馬鹿よあんた!今の力はっ!」
「へ?今の力は?」
「大魔王ルシファーと同じ力よ!!」
「………へ?」
「あああ、どうしよう!これは大変な事になったわ!」
ばたばたと騒いでいたユキが自分を落ち着かせるようにゆっくりと深呼吸をする。
え?てか、え?大魔王?
「えええええええええ!!!」
「きゅ、急になによ!」
「え?俺、大魔王!?え?え?」
「………あんた、反応おそいわね、……ま、今回はそこまで驚いてもしょうがないか、正直、私もまだ夢見心地だもの」
はぁ、と溜息をつくユキ。
あ、やべ、勇者目指してきたのに……前が霞んで、見えないやっ!
「ちょ!?あんた!?何泣いてんのよ!?」
「俺なんてどうせ、魔王になる前にとか言われて消されるんだ、お金持ちも、ハーレムも、名声も、栄誉もないままたださげすまれて死んでいくんだあああああああ!!!!」
「ちょ!?まだそう決まったわけじゃないでしょう!?」
なだめるように俺の背中をさするユキ……そうだ!俺は勇者なんだから!そういうプラス設定があっても……
「まあ、九割死罪だけど……」
「うわああああああああああん!!!!!!もう俺死んだあああああああああ」
死罪って!死罪って!!
「と、とにかく、ナビゲーター本部に問い合わせてみるから、少し待ちなさい」
そういい、おもむろにポッケトから携帯を取り出し、通話を始める
「はい、もしもし、スコット村の、はい、ユキです……はい、それが、少しまずいことがありまして、はい、はい、大魔王の力を持った勇者が……はい、………え!?そんな!私まだ無理ですよ!?今年でやっと1年目なんですから!え!?……はい、…はい、………分かりました!分かりましたよもう!!では!」
ぶちっ、と乱暴に電話を切るユキ……
「……なんだって?」
「あんたの死罪は見送り、とりあえず当面は心配無いと思うわ」
「マジで?」
「大マジよ」
「やったああああああああああああああ!!!!!!」
助かった!助かった!
「その変わり、一つ条件があるわ…」
ん?なんだか複雑そうな顔つきになるユキ
「なんだ?その条件って?」
「私が、貴方の監視役として、パーティーメンバーに加わることになったから。」
………俺のこの旅、一筋縄ではいかなそうだ