勇者、初戦闘
「おい、ユキ!どーなってるんだよ!?いつのまにかバイオ○ザートみたくなってるぞ!!」
「まあ、それは大変」
棒読みで返してくるユキ。
「何で他人事なんだよ!?第一お前は……」
でも、俺はこれ以上セリフをつづけることができなかった。
なぜなら、
『ゾンビは突然襲いかかって来た!』▼
派手な音楽とともに、戦闘開始。
「てか俺まだ戦闘準備やってないんすけど!」
そんな叫びを無視し、目の前にバトルコマンドは現れる。
『たたかう
ぼうぎょ
まほう
にげる 』
ここは無論、にげるを選択!
『にげられない!』▼
「なんだと!?」
唖然とする俺の耳に、ユキの声が聞こえて来る。
「言い忘れてましたが、これはイベント戦です」
「先に話せ!」
『ゾンビのこうげき!』▼
『勇者は3のダメージをうけた!』▼
ぐふっ……息がつまる。
しかたない、ここは倒すしか……!
俺はティルファングという剣を装備すると、駆け出した。
今思えば、それが全ての始まりだったように思う。
『勇者のこうげき!』▼
『ミス!ゾンビにダメージをあたえられない!』▼
なんだって!
「どーなってるんだよ!?」
「ここの世界のゾンビは剣攻撃が効きません」
「じゃあどうすれば!?」
そうこういっているうちに、
『ゾンビのこうげき!』▼
『勇者は3のダメージをうけた!』▼
……ダメりゃこりゃ。
「こうなったら!」
コマンドから、まほうを選択。
しかし。
『MPが足りない!』▼
忘れてた。まだ俺最大MP0じゃん!
目の前が真っ暗になったその時。
(勝ちたいか?)
「なんだ、今の声?」
「はい?」
ユキは不思議そうな様子で俺を見る。
コイツの台詞じゃないのか。
(ここで倒されたくはないだろう?)
また聞こえる!俺の脳内大丈夫か?
『ゾンビのこうげき!』▼
『勇者は3のダメージをうけた!』▼
(もう1しかHP残っていないぞ)
謎の声に指摘されているし。
でも、俺はふかふかのソファーで札束をつみき代わりにして遊ぶまで死ぬわけには……
死ぬわけにはいかないんダァーーーーーーー!!
(なら力を貸してやろう。しかし、後悔するなよ……)
瞬間、剣から壮絶な光がほとばしった。
『ゾンビはたおれた!』▼
『勇者は50のけいけんちをもらった!』▼
あれ……何かご都合的展開で倒しちゃったよ。
「アンタ……!?」
そんな俺を、ユキは呆然と見つめていた。