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Reality Cyber Space――《リアリティ・サイバー・スペース》――  作者: 月草
Stage1――Things brought by guild are...――
7/35

Ⅱオオモノ【King Class】

―――5/4_16:55―――


〔【RAID TIME】終了まであと 04:57〕


「ちょっと! なんで邪魔すんのよ! 新入りのクセに生意気よ、アナタ」

「だから武蔵さんたちがくるまで待ってくれよ。というか、一人で倒せるはずがないだろ?」

 現在、十伍はモンスターを倒すことより楓を止めることに必死だった。

 楓はようやく見つけた『K級キングクラス』の【魔性の大蛇(Venom)】を早く倒したいと彼に抗議している。

「時間見なさいよ! あと五分も無いじゃない! これであの獲物を逃したらアナタただじゃおかないわよ! だからそこまで邪魔するなら切る!」

 彼女の自慢の片手剣【武器ウェポン】の【花鳥風月かちょうふうげつ】が夕日の光を浴びてオレンジ色に輝く。

 『Reality Cyber Space』ではギルド内でのダメージは発生しない。

 彼女のやっていることはただの見せかけの脅しにしかならない。

 十伍はもう呆れ顔だ。

 このままだと本当に『K級キングクラス』へ一人で立ち向かって行ってしまう。

 だが十伍と楓の二人がかりでも『K級キングクラス』は倒せない。

 現在、『不断の輪』のメンバーの平均レベルは『30』。

 『K級キングクラス』は現在で『Lv.50』が平均的。

 『Reality Cyber Space』は最初から行動範囲フィールドが限られている。そのため強いモンスターだけが現れる特定エリアなどがない。

 東京二十三区を舞台としている『Reality Cyber Space』では、千代田区を中心として、外側に向かってやや出現するモンスターのレベルが下がっていく傾向はある。

 だが桁違いな差があるわけでもない。

 そこでプレイヤーがモンスターを倒すことでレベルが上がっていくのと同時に、モンスターは月日が経つにつれてレベルが上がっていくシステムになっていた。

 これがこの『Reality Cyber Space』の卑劣なシステムの一つであった。

 プレイヤーは皆、他の『VRMMO』をしていたのに、強制的に連れてこられた者達。彼らは【RP】を最大値まで蓄積しないと脱出できない。

 ここでモンスターと戦わないという選択肢を取れば、プレイヤーのレベルは上がることがなく、逆にモンスターのレベルは上がっていく。

 さらに一区まるごと戦場と化す【RAID TIME】を回避することはできない。

 結果としてプレイヤーに訪れるのは――――――リタイア。

 プレイヤーは日々戦いを強いられている。

「おーい、来たぞー!」

「みんな遅いわよ! 早くしないと!」


〔【RAID TIME】終了まであと 4:13〕


「俺と楓と晃輝で一気に攻める。紗綾は【PSIサイ】で防御対策。凛夏、千世、十伍は邪魔な『J級ジャッククラス』の殲滅」

 武蔵が指揮をとり、命令を飛ばす。

他の六人は頷いて、それぞれの役割の為に動き出す。

 一瞬だけ武蔵は十伍のほうに目をやった。

 十伍もそれが何を意味するのかわかったように小さく頷く。他のメンバーにはわからないように。

「行くぞ!」

 まず前衛三人が全速力で『K級キングクラス』の【魔性の大蛇(Venom)】へと立ち向かう。

 時間がない。

 【RAID TIME】が終了すれば街にいるモンスターは一斉に姿を消してしまう。

 だからせっかく見つけた『K級キングクラス』を逃してしまう可能性があるのだ。

 残り時間は四分。

 全員【SP】の消費は考えずに【PSIサイ】を使って怒涛の攻めを開始する。

 三人が向かう先にいる【魔性の大蛇(Venom)】は体長十メートルもあろうかという、もうドラゴンと言ってもいいようなモンスター。

 毒を持っている生物が不気味な色合いをしているようにこのモンスターも黒や紫、赤などの縞模様に斑点がぎっしりと体中にある。

 このモンスターが、ビルなどが建ち並ぶ都会で首を伸ばしている光景は、見ると虫唾が走るほど。

だがそんなことを気にしている彼らではない。

まず最も高い攻撃力をもつ、武蔵の豪快な攻撃。

彼の巨大なハンマー【巨人の鉄槌(Demolition)】がスキル【大地の怒り(Eruption)】の力を得て、攻撃力を格段に上げる。

 それを【魔性の大蛇(Venom)】の尻尾に叩きつける。

 まだ終わらない。

 次は両手剣を持つ晃輝の攻撃。

 彼の持つ【PSIサイ】は【炎の裁断(Strike)】。武蔵と同様、一撃に渾身の力を込めた攻撃スキル。

 【魔性の大蛇(Venom)】の胴体を切り裂こうとするのだが、その太い胴体には差し込める程度で切断にまでは至らない。


 とても蛇が出すとは思えない咆哮を放つ。もはや怪獣の域である。


 攻撃をただ食らって大人しくしているはずもない。

 ダメージを受けて叫び声を出す【魔性の大蛇(Venom)】の『敵対心ヘイト』の矛先は晃輝に向けられた。

 激しく体をくねらし、数メートル上へと持ち上げられた【魔性の大蛇(Venom)】の頭が、晃輝の上部から丸呑みにしようとする。

「やば……!」

 晃輝の周囲に大きな影ができる。

「【花吹雪(Splendor)】!」

 そこへ楓が炎をまとった【花鳥風月かちょうふうげつ】で連続切りをお見舞いする。

 【魔性の大蛇(Venom)】の頭はそれによって晃輝の頭上から離れる。

「サンキュー。楓」

「足手まといにならないでよ……。――――――ッ!」

 慌てて楓がその場を離れる。

 晃輝もその楓の行動を見てすぐに察知した。

 【魔性の大蛇(Venom)】が無差別な反撃に出だしたのだ。

 長い体を活かして大暴れをしだす。

 尾の方にいた武蔵がその反撃を【巨人の鉄槌(Demolition)】でガードしようとした。

「ぐっ……!」

 彼はこのギルド内一の大男なのだが、そんな彼でも攻撃の反動に耐え切れずに、後ろに押される。

「おっさん! 大丈夫か?!」

「晃輝! 次の攻撃が来るわ!」

 【魔性の大蛇(Venom)】は大暴れをして周囲にいた敵を追い払うと、今度は引き下がった晃輝の方へと毒を吐き出した。

 『敵対心ヘイト』はまだ彼に向けられていた。

 回避を試みるが彼の左手に毒の飛沫がかかった。

「ッ!」

 紗綾の補助スキル【母の温もり(Compose)】の効果を貫通して、ダメージと『痛み』を晃輝に与える。

「晃貴君は早くこっちに!」

 【魔性の大蛇(Venom)】の攻撃を受けないところで待機している紗綾が、晃輝を急いで呼ぶ。

 毒系統の技はプレイヤーに継続的なダメージを与え続ける。

 だから一刻も早く回復スキルで治療を受けなくてはならない。

「ちくしょう……」

 晃輝は気に食わない様子だが戦線離脱をする。

「あと何分よ?」

 楓は【デバイス】に表示されている時間を見る。


〔【RAID TIME】終了まであと 02:15〕


 残り時間が少ない。

 まだ【HP】が尽きるという心配はないが、このままだと【魔性の大蛇(Venom)】に逃げられる。

 後衛の三人は楓たちが心おきなく戦えるように、うじゃうじゃといる雑魚の相手で手一杯だ。

「楓! 俺が【PSIサイ】全開でダメージを与える! だから注意をそっちに引き付けてもいいか?!」

 武蔵が叫ぶ。

 彼の武器は巨大なため移動速度が落ちてしまう。対して楓は片手剣なので身軽に動くことができる。

 【魔性の大蛇(Venom)】の攻撃を避け続けるには楓のほうが適任だった。

「わかった! 止めはおっさんに任せるッ!」

 楓は【魔性の大蛇(Venom)】に、自分へ攻撃の矛先を向けさせるために挑発をかける。

 相手もそれにうまく釣られた。

 彼女は【魔性の大蛇(Venom)】から見れば素早い虫のように見えているのだろう。

 小さな獲物に夢中になっているところへ武蔵が強烈な一撃を叩き込む。

 これによって『ヘイト』は武蔵に向けられるが、すかさず楓が攻撃を加えることで彼には攻撃をさせない。

「ふふっ。さあ、私を見なさいッ! この蛇が! あ、やっぱ嫌! やめて! そんな気持ち悪い目を向けないでぇえ!」

 楓の背筋に寒気が走る。

「よっしゃ! 俺も復活! 待ってろ、楓! 俺が行くぜ!」

 紗綾の治療によって回復した晃輝が復帰する。

 これでまた三人で攻撃を与えることができるようになった。

「なによ! 足手まといになったくせにっ!」

「こ、今度こそは大丈夫だって!」

 そこへ相手にされない【魔性の大蛇(Venom)】が毒液を吐き出した。

 今度は晃輝もしっかりと避ける。

「おいっ! 二人とも油断するな!」

 武蔵が【巨人の鉄槌(Demolition)】で大ダメージを与え続ける。

 同じく攻撃力に特化した晃輝もダメージを与える側に加わる。

 【魔性の大蛇(Venom)】の【HP】は残り半分。

 

〔【RAID TIME】終了まであと 01:26〕


 武蔵が叩く。

 晃輝が切りつける。

 楓が挑発する。

 そのサイクルで【魔性の大蛇(Venom)】の【HP】は順調に減っていく。

「よっしゃ! このままぶっちぎるぜぇえええ!」

「おう!」

「さっさと片付けるわよ!」

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