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Reality Cyber Space――《リアリティ・サイバー・スペース》――  作者: 月草
Stage2――They are sleeping under "here".――
24/35

Ⅰツギヘ【Checkpoint】

新章突入。


五月三一日午後五時、東京を四体の怪物が襲った。






―――6/1_05:10―――


「とりあえず先月と比較すれば被害は小さいとは思う」


 望月十伍は経験談でそう語る。だが表情はいつになく険しい。

 現在、ギルド『不断の輪』は『おっさん』の愛称こと竹之内武蔵の一室にて会議が行われている。内容は昨日の出来事のである。


「でもよ、これは……」


 『Reality Cyber Space』における公式共有掲示板に貼られた画像を見ながら、池永晃輝が言う。彼の取り柄であるいつもの勢いはない。

千世は目を背けたい気持ちを抑えながらなんとか事実を受け入れようとしているのがわかる。

 他のメンバーも手元の【デバイス】の表示に目を向け顔を上げるものはいない。指で画面をスライドさせながら文字や画像を目で追っている。

 【RAID TIME】を遥かに超える敵の襲撃―――【TIME OF CATASTROPHE】という名がつけられたイベント。

 【RAID TIME】との異なる点は、時間が三十分間から三時間に延長されたこと、自動車などだけではなく建造物までも破壊されるということ、そして最大の点は巨大な怪物ボスが出現すること。


「時間帯としてまだ明るかったのと、やっぱり二回目というのが大きな理由だろうな」


 第一回目のこの『Reality Cyber Space』における大イベントは四月三〇日に渋谷区で発生した。第一回が発生したのは日が落ちてからのことだったので、状況への対処が遅れてしまったのだ。また現地の状況を撮影し掲示板に画像を上げるなどという余裕はなく、自分の命を最優先にすべきだった。

 しかし今回、新宿、江東、品川、荒川、計四区で同時発生したという点を除けば前回とは変わらない。少々の余裕があったのか、掲示板には現地の状況を映した画像が何枚かある。もちろん中にはそれを引き起こした怪物の正体も。


「こいつら相当のオオモノやんか……、私の最大火力でも立ち向かえるかわからんで……」


 重火器専門の椎名凛夏は指を咥えつつ目を細める。


「立ち向かった馬鹿どももいるようだな」

「まあちゃんとダメージは食らわせることは可能だからな。倒せるかどうかはわからないが」

「勇気があるわね」

「ゲーマーとしての血が騒いだんでしょ」


 確かに、と楓の意見に心の中で十伍は同意する。彼が渋谷区にいた時、まさしくそれだったのだと思った。以前に所属していたギルドは立ち向かおうとした。

 ここはあくまでもゲームの中だ。

 けれどもその考えが悲劇を生む。

得られたものは悲しみ、失ったものは仲間。


「ん? 楓、どうかしたか?」

「いいえ、なんでもないわ」


 楓の視線が向けられているような気がして十伍は顔を上げたが気のせいだったらしい。 

 紗綾がボスモンスターの情報を見つけたようで、彼女が他の皆にページの場所を教える。

 どれも画像とともに載っていてまとめられていた。


「どれも巨大ロボット?」

「珍しいわね……、ここじゃ生物を模したモンスターだけだと思っていたのに」

「ああ、これを見る限りボスモンスターは全て機械仕掛けだな」


 各四区に現れたボスモンスターはこうだ。

 新宿――『δデルタ―DIMENSION』はオレンジの陽光を反射する黒色の立方体。

 江東――『ηエータ―HEATER』は業火を噴射する巨大砲台の平面集合体。

 品川――『ιイオタ―INFORMANT』は小型の浮遊物体の集合体。

 荒川――『σシグマ―SIMULATOR』は表面に文字列が並ぶピラミッド型。


「俺が見たのもこんな感じだった」

「しっかし、こいつらが月末に現れる予想は当たりよったな」

「まあ、この一週間はガセだの対策しとくべきだの色々と掲示板も荒れてたけど、これで確実と見ても良さそうだな」

「こんなデカブツ倒せれたら一発で【RPリターンポイント】が上限まで溜まるんじゃね?」

「だろうな。そうでなかったら『Reality Cyber Space』はとんだムリゲーだ」

「本当にゲームなのかも疑問だしね」

「そういえば楓ちゃん、紀蘭君と連絡は取れたの?」

「送ったけど返ってこないわ」

「あいつならどっかで生きてるだろ、一度経験しているわけだしな」

「とりあえずこのボスモンスターからさえ逃げれば、他は通常の【RAID TIME】で出現するモンスターだから、真っ先に逃げることを考えれば生き残ることは難しくないと思う。ただ近くで本体ボスが出現した場合は最悪だが」

「つーか月末までは俺たちも安全ってわけだよな」

「バカね、晃輝。月末しか倒す機会が無いのよ?」

「ふーん、楓は随分プラス思考やな」

「千世は、正直恐いよ……」

「私も千世ちゃんと同じよ」


 紗綾が千世の頭にそっと手を置いて撫でると、千世は表情を柔らかくする。

 場がやや明るみを取り戻してきたので武蔵が前に出て閉めに入る。


「ともあれ今回は街が破壊されたといえど、プレイヤーの被害は小さかったようだ。十伍の話では復旧には数週間かかるようだが、いざとなれば俺たちもここを捨てて逃げればいい。一番大事なことは皆が無事に帰ること」


 全員が同時に頷く。


「と、結局リーダーの俺が言えることはこんなことだげですまん! よし! これにて解散!」


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