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Reality Cyber Space――《リアリティ・サイバー・スペース》――  作者: 月草
Stage1――Things brought by guild are...――
17/35

ⅩⅡモヤモヤ【Stray Sheep】

ちょっと別の人に視点が移ります。前話の【RAID TIME】後の話です。

―――5/6_21:50―――


「あ、メール来てる」

 実際には汗などかいてはいないのだが、『そういう感覚』だけはちゃんとあり、どうにもそのままでいるには不快だったためシャワーを浴びた。

 楓は下着姿のままシャワールームから出てきていた。

 ここは個室なので他に誰もいないとなればとくにどんな格好をしていても別に気にしない。

 『VRMMO』では全裸になるというプログラムそのものが禁じられているが一般的だ。

 第一の理由としては性的な問題だろう。

 『VR技術』は開発当初よりかなりの出来となった。プレイヤーは仮想空間の中でも自分の体を本当に動かしているような感覚を得られるまでに。

 たとえ『ゲーム』の中で偽者の体の全裸を見られるとあっても、やはり抵抗感は現実のままで、さらに感覚の共有ということによりプレイヤーによる卑猥な行為が起きないようにという対策も兼ねている。

 だからこの世界は異常なのである。

 そもそも『ゲーム』というものから外れていることが多すぎる。

 プレイヤーにとって『Reality Cyber Space』とは『ゲーム』が『現実』取り込まれたような世界に感じている。

 日常の中に非日常が紛れ込んだような。

 【STAND TIME】は日常。【RAID TIME】は非日常。

 背反するものが混同してしまっている。

「紀蘭……」

 文面を見ると最近の彼がどんな生活を送っているかが書いてあった。

 すぐに返信を送ろうと文章を書こうと文章入力画面へと切り替える。

 だが。

「……」

 なぜかなかなか手が動こうとしない。

 何を書こうか迷っているのか?

 書きたいことが多すぎて困っているのか?

「私……」

 やっと紀蘭に会えた。

 それはとても喜ばしいことだ。

 彼は約束を守ってちゃんとメールを送ってきた。

 いったいどこに問題がある。

 楓は首を振って深く考えるのをやめる。とりあえず何でもいいから今は返事を返そう。

「そうよ。私は『中途半端』なんて嫌いなのよ……。あーもう! なんかアイツのこと思い出しちゃったじゃない!」

 さっさと返事を打つことにする。


〔さっき【RAID TIME】が起こっていたから、返事遅れちゃったゴメン(>_<) 返事くれたんだね、ありがとう。できればもっと実際に会って話したかったよ? そっちも忙しいみたいだね。こっちも最近ちょっと忙しくなってギルドもピリピリしてる。私もあれから強くなったよ。それでもたぶん紀蘭と差がついちゃったと思うけど(私が下って意味でね)〕


 そこで手が止まる。

「送信、と」

 送信ボタンを押すと『送信中』の表示に切り替わり、数秒で画面は元に戻る。

 【デバイス】のホログラム画面を閉じて、ベッドにそのまま体を委ねる。

(なんなのよ……、この変な感じ……)

 胸がモヤモヤする。

 そのモヤモヤのせいで今まで離ればなれになっていた分のことをたくさん書くつもりだったのに、思ったより素っ気無い文面になってしまった。

(会わなかったうちに気持ちが薄れちゃったの?)

 他の誰に問いかけるわけでもなく、自分に問う。

 だが答えは返ってこない。

 答えがわからない。

 ただこのモヤモヤしたものが原因だろうくらいはなんとなくわかる。

(行っちゃう前にやっぱりはっきりしておくべきだったんじゃないの?)

 彼女のモットーだ。

 はっきりきっぱり。

 あの少年と同じだなんて死んでも嫌だ。

(今さらなにを言ってもしょうがないか……)

 ではなぜ私は彼のことをあきらめることができない?

 いや、できているのか?

 質問をいくつもぶつけてもやはり答えは返ってこない。

 こんなことをいつまでも続けたところで変化があるわけでもない。

 もう寝てしまおう、そう思った楓は布団にもぐりこんで丸くなった。

(今日はいろいろとありすぎたのよ……紀蘭に会ったこともそうだし。それに――――――助けられた……)

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